“喜劇の神様”斎藤寅次郎が国民的キャラクターに与えた影響戦前戦後に活躍した名監督の残した輝く軌跡

「子宝騒動」/(C)1935松竹株式会社

“喜劇の神様”斎藤寅次郎が国民的キャラクターに与えた影響戦前戦後に活躍した名監督の残した輝く軌跡

1月30日(木) 9:00

「子宝騒動」
【写真】幼い美空ひばりが出演する「ラッキー百万円娘」

いつの世も笑いは生活のうるおいとして欠かせないものだが、提供する媒体はさまざまに移り変わってきた。いまやコントや漫才といった芸人がネタを披露する舞台が主流ではあるものの、同時にコメディを取り扱った映像作品もその1つ。“喜劇の神様”とも称される映画監督・斎藤寅次郎は、そうしたコメディ映画の先駆けとして生涯200本以上の喜劇映画を世に生み出してきた。2025年は彼の生誕120周年というメモリアルな節目。独特な魅力と個性的な発想で人々を楽しませてきた斎藤の歩んできた軌跡を、令和のいま深堀りしていく。

■“昭和”が色濃く反映された喜劇映画

代表作として知られるのは昭和10年(1935年)に発表された「この子捨てざれば」。昭和初期、無声映画時代の作品ながら、息もつかせぬほどのテンポでギャグが飛び出すというそれまでの日本映画にない作風で驚かれた。喜劇作品としては異例のキネマ旬報にランクインを果たしたことでも知られている。

だが「この子捨てざれば」「子宝騒動」といった作品に色濃く表れているとおり、斎藤作品はただのコメディ映画ではない。もちろんベースにあるのは明確なコメディなのだが、その向こう側に人情や時代背景を取り入れた社会風刺が散りばめられているのだ。

たとえば同じく昭和10年に公開された「子宝騒動」は、「子だくさんの貧乏人である父が、産気づいた妻のためにお金を求めて悪戦苦闘する」というストーリー。電気もガスも水道も止められるほどの生活苦でも苦しそうではない一家だが、さすがに“6人分の取り上げ料”を払っていない状態では産婆さんを呼ぶことはできない。

すでに陣痛が来ている妻に「金が貯まるまで我慢してくれ」と頼む、金を求めて盗みを働こうとする度に大失敗…といったギャグが止めどなく出てくる一方で、根底にあるのは妻のために奔走する一家の父の愛情。驚きのオチを振り返ってみても、そこには家族愛という一本柱が通っているのがわかる。

人間の普遍的なテーマを大事にする斎藤。これは生き別れの母娘を描いた物語「明け行く空」などにも見ることができる斎藤作品の特徴だ。ドタバタはドタバタで楽しめつつ、どこか登場人物に共感してしまう要因は根幹のストーリー設定にある。こうした斎藤の手法は、後世にさまざまな方面に大きな影響を残す。
「明け行く空」


■“寅さん”に影響を与えた「ドタバタの寅さん」

斎藤作品は昭和初期から中期の時代背景や価値観を巧みに取り入れた、昭和という時代を色濃く反映した作品が多い。家族愛や友情、隣人との絆といった人情味のあるメッセージが込められている。笑いを通じて、人間関係や社会のあり方を考えさせられるのだ。

生涯で200本にも及ぶ作品を発表した斎藤。活動時期は第二次世界大戦の前から戦後にまでわたり、激動の時代に相応しいさまざまな価値観の変化と“変わらない人情”を大事にしていることが伝わってくる。

人気とともに監督自身の信念が響いたのか、斎藤作品には多くの有名人が出演するのも特徴の1つ。エノケン(榎本健一)や古川ロッパ、エンタツ・アチャコといった人気コメディアンはもちろん、鶴田浩二や美空ひばりといったそうそうたる俳優たちも顔を並べる。特に美空ひばりは斎藤作品が映画デビュー作となった縁もあり、「ラッキー百万円娘」といった作品にも登場。

そうした意味で忘れてはいけないのが、斎藤寅次郎の名前が国民的キャラクターに影響を与えたという点だろう。それが渥美清の代表作「男はつらいよ」シリーズの主人公・フーテンの寅こと車寅次郎だ。

同作の第一作目が公開されたのは1969年。山田洋次監督が主人公の名前を決める際は、松竹の城戸四郎会長に相談したなかで決まったと言われている。城戸会長は斎藤を若手の頃から知っており、まさにそこにあやかったというわけだ。国民的人情喜劇にも影響を与えたというと、当時映画界にいた人間にとって彼がどれだけの存在感を放っていたのかが伝わってくるというもの。

しかし誰もが尊崇してやまない人間性にあふれた大人物かというと、それだけでもないのが斎藤の面白いところ。非常に機動的な人間としても知られている斎藤は映画「西部戦線異状なし」の話を聞きつけて「全部精神異常あり」を発表したと思えば、「キング・コング」を受けて本家より先に「和製キング・コング」を公開したといった驚きの逸話を残す。

タイトルを見るだけで驚くようなおふざけぶりは、彼の根底にある「面白いと思ってもらえることをやろう」という性根を強く印象づける。斎藤を表す“喜劇の神様”の呼び名は監督としての技量だけではなく、心の芯からコメディを愛する彼の精神性を愛しての言葉なのかもしれない。

年代が年代だけに初期タイトルは映像が残っていないものも多い斎藤作品。そのなかで衛星劇場は2月から「斎藤寅次郎監督生誕120年」と題し、現存する斎藤の名作映画を特集する。

2月17日(月)夜8時15分ほかからテレビ初放送となる「子宝騒動<活弁トーキー版> 」、同じくテレビ初となる「腰抜け狂騷曲」は2月3日(月)朝8時30分ほかから放送。2月6日(木)昼12時ほかからは鶴田浩二主演の「唄くらべ青春三銃士」など、斎藤の貴重な作品群をピックアップ。いまや日本を接見する笑いの“礎”であるレアな昭和の名作たちを見る良い機会になりそうだ。



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