本村 凌二「2024年 この3冊」

本村 凌二「2024年 この3冊」

本村 凌二「2024年 この3冊」

1月27日(月) 21:00

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◆2024年「この3冊」
◇<1>『パンテオン 新たな古代ローマ宗教史』イェルク・リュプケ著(東京大学出版会)
◇<2>『ジョルジュ・サンドセレクション 別巻』持田明子、大野一道編(藤原書店)
◇<3>『ヨーロッパ史 拡大と統合の力学』大月康弘著(岩波書店)

<1>注目は「生きられた宗教」というテーマ。エリートや皇帝ではなく、ローマ市民・庶民が生活経験する宗教とはどうであったのか。その宗教実践と経験は色彩に富んでおり、新しい宗教史の試みになる。重厚な大作であるが、読書後の充実感がある。

<2>19世紀フランスの作家。おびただしい書簡のために、その交友関係は華々しいばかりだ。なによりも愛の交流であり、「束縛されない愛」が大切であった。ドストエフスキーに愛読され、プルースト文学の始まりにもなったという。

<3>狭義のヨーロッパは西欧として理解されるが、著者は東欧にあったビザンツ社会の研究者。西欧近代社会への新たな視角があざやかになる。福田徳三、三浦新七、上原専禄、増田四郎にさかのぼる一橋学派のマクロ史学の伝統が目に浮かぶ。

パンテオン: 新たな古代ローマ宗教史 『パンテオン: 新たな古代ローマ宗教史』(東京大学出版会)著者:イェルク・リュプケ Amazon | honto | その他の書店
ジョルジュ・サンドセレクション 別巻 サンド・ハンドブック 『ジョルジュ・サンドセレクション 別巻 サンド・ハンドブック』(藤原書店)著者:持田 明子,大野 一道 Amazon | honto | その他の書店
ヨーロッパ史 拡大と統合の力学 『ヨーロッパ史 拡大と統合の力学』(岩波書店)著者:大月 康弘 Amazon | honto | その他の書店

【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、2014年4月~2018年3月まで早稲田大学国際教養学部特任教授。専門は古代ローマ史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

【初出メディア】
毎日新聞 2024年12月21日
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