『セブン』から『ロングレッグス』へ…“サイコホラー”が再びトレンドを巻き起こす!

『セブン』から30年…『ロングレッグス』に熱視線!/[c]MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.

『セブン』から『ロングレッグス』へ…“サイコホラー”が再びトレンドを巻き起こす!

1月21日(火) 13:30

来る3月14日(金)に公開される『ロングレッグス』は、2024年の夏に本国アメリカで大反響を呼んだサイコホラーだ。A24に続く新興の独立系映画会社として脚光を浴びているNEONが北米配給を手がけ、過去10年における独立系ホラーの全米興収最高記録を更新するなど、破格の大ヒットを飛ばした。
【写真を見る】圧倒的なヴィジュアルと映画史に残るエンディング…『セブン』がIMAXで帰還

物語の舞台は1990年代半ばのオレゴン州。FBIの若き女性捜査官リー・ハーカー(マイカ・モンロー)が、ある未解決事件の捜査チームに抜擢される。ごく平凡な家族の父親が妻子を惨殺したのち、自らも命を絶つという不可解な殺人事件が過去30年間で10回も発生しているのだ。現場には“ロングレッグス”という人物の署名付きの暗号メッセージが残されていたが、現場には外部からの侵入者の痕跡が一切ない。はたしてハーカーが追う正体不明の連続殺人鬼ロングレッグスとは何者なのか…。

FBIの若き捜査官が、不可解な殺人事件の謎に挑む

サイコホラー、サイコスリラーはサイコロジカル・ホラー/スリラーの省略形で、登場人物の心理的な混乱、不安に焦点を当てた恐怖映画のサブジャンルを指す。また、精神病質者(サイコパス)が引き起こす犯罪を題材にした作品もこのジャンルに含まれ、1990年代にサイコスリラー・ブームを巻き起こしたジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』(91)、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』(95)がその代表作である。

■サイコスリラーの要素を“全部乗せ”しながらオリジナリティを獲得した『ロングレッグス』

『ロングレッグス』には、1990年代以降に話題を呼んだサイコスリラーの趣向がふんだんに凝らされている。新米捜査官のハーカーが難事件に身を投じていく導入部は、『羊たちの沈黙』の主人公クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)を彷彿とさせる。神出鬼没の殺人鬼が独自の法則に従って犯行を繰り返す設定は、『セブン』のジョン・ドゥ(ケヴィン・スペイシー)のよう。さらに、ロングレッグスが直接手を下さずに殺人を重ねていく手口の不可解さは黒沢清監督の『CURE』(97)を思わせるし、奇怪な暗号文というモチーフはフィンチャー監督の『ゾディアック』(06)を想起させる。

『ロングレッグス』の物凄さは、上に記した代表的なサイコスリラーの要素を“全部乗せ”しながらも、圧倒的なオリジナリティを獲得していることにある。最大の見どころは、ニコラス・ケイジ扮するロングレッグスの特異なキャラクターだ。ケイジは作品ごとにヘアスタイルや服装をがらっと変える怪優として名高いが、彼にとってキャリア初のシリアルキラー役となるロングレッグスの容貌、挙動は何もかも常軌を逸している。ロングレッグス=ケイジの登場シーンすべてが、強烈なジャンプスケア描写と言っても過言ではないほどの絶大なインパクトだ。にもかかわらず、NEONは全米公開前にロングレッグスをあえて“見せない”宣伝戦略を実施し、観客の好奇心をあおってサプライズ効果を高めることに成功した。日本の配給会社、松竹による特報予告でもロングレッグスの風貌をうかがい知ることはできない。

正体不明の殺人鬼“ロングレッグス”の正体とは…?

しかもロングレッグスは悪魔崇拝者だ。この点が極めて重要で、『羊たちの沈黙』『セブン』風の“王道サイコスリラー”として滑りだす本作は、中盤以降にこの世ならぬ驚きに満ちた“ホラー”へと変容していく。オカルト的なシンボルや精巧な等身大の少女人形などのアイテムもちりばめられた映像世界は、得体の知れない謎と狂気が渦巻き、想像を絶するクライマックスへと突き進んでいくのだ。

■映画史上に残るバッドエンディング…サイコスリラーの金字塔『セブン』
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そんな『ロングレッグス』の公開に先立って、『セブン』のIMAX初上映(1月31日公開)が決定した。デビュー作『エイリアン3』(92)が失敗作と見なされ、挫折感に打ちひしがれたデヴィッド・フィンチャー監督が、興行と批評の両面で画期的な成功を収め、世界中にその才能を知らしめた長編第2作。キリスト教の7つの大罪(=憤怒、嫉妬、高慢、肉欲、怠惰、強欲、大食)になぞらえた連続殺人事件の行方と、その真相究明に挑むブラッド・ピット、モーガン・フリーマンの刑事コンビの苦闘を描いたサイコスリラーの金字塔が、フィンチャー自身が監修した4K版でスクリーンによみがえる。
若手刑事ミルズを演じたピットは、本作でさらなるスターダムに上り詰めた


姿なき犯人が7日間のうちに、次々と残忍な“処刑”を遂行していく事件のただならぬ猟奇性。全編にわたって雨が降りしきる大都会の荒廃を捉えた陰影豊かなヴィジュアル。血気盛んな若手刑事ミルズと思慮深いベテランのサマセットに扮したピット、フリーマンの演技。そして映画史上まれに見る戦慄のバッドエンディングは、初公開から30年が経ったいまも、新たな世代の観客の脳裏に強烈なトラウマを植えつけるに違いない。

第68回アカデミー賞助演男優賞を受賞したスペイシーが、犯人のジョン・ドゥを怪演

犯人のジョン・ドゥを演じたケヴィン・スペイシーは、同年製作のブライアン・シンガー監督『ユージュアル・サスペクツ』(95)で第68回アカデミー賞助演男優賞を受賞。『セブン』が公開されるまでスペイシーの出演情報は伏せられていたため、ジョン・ドゥが予測不能のタイミングで姿を現す終盤の展開は、当時の観客のド肝を抜いた。この意表を突いた演出は『ロングレッグス』におけるニコラス・ケイジの登場の仕方に通じるものがある。加えてロングレッグスとジョン・ドゥは、どちらもカリスマ的な悪魔性をまとった悪役であり、捜査官である主人公の人生そのものを破滅へと誘うという共通点もある。

『セブン』は1月31日(金)から期間限定でIMAX(R)初上映!(※一部劇場を除く)

おそらく『ロングレッグス』は日本でも封切り後にたちまちSNSを介してセンセーションを巻き起こし、サイコホラー/スリラーの革新的な作品として『セブン』のように長く語り継がれるだろう。ちなみに『ロングレッグス』のオズグッド・パーキンス監督は、このジャンルの歴史的名作であるアルフレッド・ヒッチコック監督作品『サイコ』(60)の主演俳優アンソニー・パーキンスの息子でもある。そんな血筋を受け継ぐ鬼才のこのうえなく斬新な作風にも注目してほしい。

文/高橋諭治


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