年明け最初のパリでのイベントは「パリ横断」。およそ700台のヴィンテージカー、バイク、モペッド、自転車、バス、トラクターが参加する。年明けの1月と8月、年に二回開催されるイベントだ。octane.jpでも何度かお伝えしているので、知っている人も多いだろう。この冬の部は、スタート地点のヴァンセンヌ城を出発し、指定されたコースを回って再びヴァンセンヌ城に戻るというものだ。
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今回同乗させてもらったのは、先日紹介したファセル・ヴェガ。オーナーのローランさんはFIVAの副会長で、パリ横断の初期から関わる人物。正しいパリ横断を伝えたいということで、この名車で年明けのパリを横断するのは最高の楽しみだ。
ローランさんから待ち合わせの連絡が来た。最初のグループでスタートするため、朝7時にヴァンセンヌ城集合とのこと。5時前に起きて準備し、7時前にはヴァンセンヌ城に到着した。スタッフたちはスタート地点の設営を始めたばかりで、気温は0度。寒くて暗い中、雨か雪か分からないものがパラパラと降り始めた。しばらくするとファセル・ヴェガが到着し、受付を済ませてスタート。
これまで、初めてパリ横断に参加するオーナーと乗ることが多く、要領を掴む前に渋滞に巻き込まれたり、モンマルトルでは規制時間に入ってしまい侵入できなかったりといったトラブルが頻発した。しかしベテランのローランさんは、ガラガラの道を快調に進む。他の参加車両がまだスタートしていないため、ほぼ独走状態だった。
渋滞を嫌うローランさんは、意気揚々とモンマルトルを目指す。このモンマルトルでは、友人たちとシャブリ(白ワイン)で乾杯するのが伝統で、正しいパリ横断の楽しみ方だという。まだ早朝のモンマルトルは観光客もまばらで、前夜から飲んで騒いでいた若者たちがその余韻に浸っている静かな雰囲気だった。一番乗りのローランさんは、仲間たちが到着するまでカフェで暖を取ることにした。
次々と参加車両がモンマルトルに集まり始めた頃、雨は一瞬だけ雪に変わり、雲の切れ間から朝焼けが見えた。あっという間に旧車の渋滞が発生し、モンマルトル共和国の鼓笛隊が到着車両を出迎えた。
ローランさんの仲間たちも徐々に到着し、ファセルⅢのそばで集合。途中、丘を登り切ったところで修理が必要になった車両もあったが、大きなトラブルにはならずに済んだ。そしてついに主役ともいえるミッシェルさんが登場。このイベントの発案者であり、現在は活動を引退しているものの、愛車ポルシェ944で登場した。モンマルトルの丘で続けられてきたシャブリの乾杯の準備を開始。さらに別の仲間が自家製のフォアグラを振る舞い、乾杯と会話が繰り広げられた。
その後、コンコルド広場での集合を約束し、モンマルトルを後にする。すでに丘を下る道は大渋滞だった。コンコルド広場に到着すると、すでに多くの車両が集まり、各所で乾杯が行われていた。広場は旧車で埋め尽くされ、賑やかな宴が繰り広げられていた。
最後はヴァンセンヌに戻り、競馬場内のガラス張りのサロンで昼食を楽しむ。ここでの食事中、話題は新しい車の購入から、パリ市内の車両制限、電気自動車や代替燃料にまで及ぶ。結論として「旧車がやはり最高」という意見に落ち着き、次の再会はレトロモビルで、と挨拶を交わして解散となった。
パリ横断は、それぞれの楽しみ方で参加すれば良いものだが、今回は創設当時の楽しみ方に触れることができた。次回は夏。このイベントを国際的なものにしたいというヴァンセンヌ旧車会の意向で、ヨーロッパ各地からの参加を呼びかけている。日本代表として走らないかとの依頼を受け、次は自分で運転して参加する予定だ。パリの車締め出しの流れに光を当てるイベント「パリ横断」の重要性を、改めて感じた。
写真・文:櫻井朋成Photography and Words: Tomonari SAKURAI
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