『トワイライト・ウォリアーズ』アクション監督・谷垣健治インタビュー。「俺はこういう空間でずっとやりたかったんだ!」

『トワイライト・ウォリアーズ』撮影中の谷垣健治(写真左)

『トワイライト・ウォリアーズ』アクション監督・谷垣健治インタビュー。「俺はこういう空間でずっとやりたかったんだ!」

1月17日(金) 9:00

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まだ2025年もはじまったばかりなのに、早くも“今年ベスト級”の呼び声も高い映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』が公開されている。

伝説の無法地帯“九龍城砦”を舞台に男たちの壮絶なバトルが繰り広げられる傑作で、冒頭からクライマックスまで多彩なアイデアを盛り込んだアクションが次々に登場する。アクション監督を務めたのは、日本が世界に誇る才人、谷垣健治。ベニー・チャン監督作『レイジング・ファイア』や、大友啓史監督『るろうに剣心』シリーズなど、数多くの作品でアクションを担当してきた谷垣は本作について「撮影前から面白くなる予感がありましたし、何より僕自身が燃えましたよね」と笑顔を見せる。

本作の舞台はかつて香港に実在していた九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)。建て増しに次ぐ建て増しで、超複雑な迷路のような構造になった建物で、そこでは黒社会が暗躍し、無法地帯になっている一方、来歴不明の人々が流れつき、すべてが渾然一体となったコミュニティを形成している。

主人公のチャンはある事情から香港へ密入国し、黒社会から追われて逃げ込むように九龍城砦にやってくる。そこでチャンはさまざま強烈すぎる者たちと出会い、仲間と自身の居場所を見つけていく。しかし、黒社会の抗争は激化し、チャンは“ある理由”から、この壮絶な争いに巻き込まれることになる。

原作になったのは小説及びコミックで映画化までに長い時間がかかったようだ。

「ここに行き着くまでに8年かかってるそうなんですよ。その過程で状況が一気に動き出した瞬間があって、それが2021年でした。その段階で脚本ぽいものもありましたけど、それはあくまで叩き台であって、実際に出演する俳優が決まったのがデカかったと思います。ソイ・チェン監督の意向もあってキャストが決まり、キャストが変更になりながら、衣装合わせがあって、またそこで動きがあったり……そうやって少しずつキャラクターができていったんです」

ベースになっているのはコミックの明快なキャラクター。そこに映画的な肉づけが時間をかけて行われ、それをルイス・クー、サモ・ハン、リッチー・レン、レイモンド・ラムら香港映画界のレジェンド俳優たちが演じるのだ。面白くないわけがない。

さらに本作の最大の見せ場は、舞台の九龍城砦。あらゆる建築物がコラージュされたような迷路のような空間を本作では莫大な予算を投じて作り上げた。この世界を観るだけでも本作はスクリーンの前に座る価値がある。

「このセットが本当に素晴らしかったです。もうかつてのカンフー映画の時代じゃないですから、野原で延々と戦っても面白くないわけですよ。僕らのやっているアクションは狭い空間でこそ生きるというか、まわりにあるモノを使ったり、狭い空間を走り抜けたりすることで映画的な面白さを表現していく傾向はあります。

その点、このセットはイレギュラーな空間が本当に多くて、たとえばある場面では3つの違うビルをブチ抜いてひとつの空間になったりしているんです。まずこの空間自体が面白い。空間が狭いので人が少し登場するだけで密度はあがるし、モノもたくさんありますから、少し動くだけで複雑な構造に見えてくる。駐車場に置いてある自動車は人間の手で動かしたりできないですけど、狭い空間にあるベッドであれば、ベッドの上も下の空間も使えるし、戦う過程でベッドをひっくり返すこともできる。さっきまでそこにあったものがアクションの過程で動いたり、形を変えることができるんです」

谷垣が語る通り、本作のアクションの見どころのひとつは、バトルやアクションが起こるたびに俳優が動き、モノが動き、破壊され、さらに九龍城砦が変化していくことだ。登場した瞬間から複雑で魅力的な空間が、バトルを経ることでさらに変化・破壊・移動してバージョンアップしていく。

「九龍城砦が舞台だと、次に何が起こってもおかしくはない。ある部屋から隣の部屋の鉄パイプに飛び移ることもできるし、その鉄パイプを手にとって戦うこともできる。だから撮影前から面白くなる予感がありましたし、何より僕自身が燃えましたよね。俺はこういう空間でずっとやりたかったんだ!って(笑)。

実際にセットに行くと電線が増えていたり、知らない間に水道メーターが増えていたりするんですけど(笑)、それをどかすのではなく、利用してアクションを組み立てていく。身近なものを利用するとお客さんが感覚を共有しやすいですから。宇宙船の内部は見たことないけど、水道メーターは実際に見たことありますよね?銃で撃たれた時の感触はイメージできないですけど、鉄パイプで殴られた時の感覚は何となく想像がつく。そうやって、アクションも“お客さんがわかるもの”にしたいんです。

すごい技だけになってしまうと、お客さんも『ああ、すごいね』で終わってしまいますけど、小指をぶつけた時の痛みならわかりますよね?僕はアクションをそういうものにしたい。その点では今回のセットはすべて生活に密着したものでできているので、そこは面白かったです」

「これだけ時間をかけてつくったんだから、お客さんには喜んでもらいたい!」

本作のアクションはとにかく圧巻だ。キャラクターの対決はもちろん、部屋から部屋への跳躍や、狭い路地でのチェイスシーン、観客の意表をつく展開、強烈なスピードのバトルが休む間もなく続く。そして驚くべきことに、すべてのアクションが観客にちゃんと伝わるものになっている。どのキャラクターが、どの位置にいて、どのように攻撃しているのか手にとるようにわかる。こんなすごい速度で過ぎていくのに!

「僕がいつも考えているのは“速いけど、何が起こっているのかわかる”アクションです。ダメな映画のアクションだと、どこで何が起こっているのかよくわからないわけですよ。『ボーン・アイデンティティー』の一連のシリーズが新鮮だったのは、何が起こっているのかわからないアクションというのを”計算して”作り上げたこと。でも、その真似をした人たちが計算もちゃんとしないで、ただカメラを揺らしているだけのアクションをやり始めた。そういうのはやっぱり見ててストレスですね。

それがここ最近、『ジョン・ウィック』あたりからまた“お客さんはアクションで何が起こっているのかちゃんとわかりたいんだ”という流れになってきた。まあ、当たり前のことですけど。その中でどう刺激や驚きを生み出していくのか?どの速度で、どのように伝えるのか?そこはいつもせめぎ合いです」

ポイントは、アクションを創作/設計し、訓練し準備し撮影する過程がすべて“観客に伝える”ために行われていることだ。

「僕たちの仕事は究極のサービス業だと思っていますから、撮影現場でも『これだと観客には伝わらないよね』とか『これやったらビックリするよね』とかはみんな考えていることです。どうすれば観客に伝わるか、喜んでくれるか。この映画では特に『これだけ時間をかけてつくったんだから、お客さんには喜んでもらいたい!』と思ってましたね。「お前らバカか!」と呆れられたい(笑)。香港の映画人はその点はいつもすごく意識しています」

本作を観ていて燃えるのは、すべてのバトルが超絶技巧でハイテンションでありながら、ちゃんと内容が観る側に伝わる内容になっていること。すべての技が伝わる、そこに観客の気持ちが入り込む余地がある。結果、作品への没入感がハンパないのだ。谷垣は「実際に撮影している時は今日お話したことを考えているというよりは、その時々で目の前に与えられた空間で手を変え、品を変え必死にやってるだけなんですけどね。毎日危機一髪です」と笑うが、本作のアクションは映画史に残る屈指の“観客の心に火をつける”活劇になった。

「香港ではこの映画をみんなで盛り上げようというムーブメントがありました。日本でもこの映画をみなさんの力で育てていただきたいですし、どんどん盛り上げてもらえればと思っています」

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
公開中

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