『Octane』UKスタッフによる試乗記をお届け。サイモン・デ・バートンがモーガン・プラスフォーでクラシックカーラリーに参加した。クラシックな見た目だが歴としたモダンカーなプラスフォー、ラリーでの使い勝手は果たして…?
【画像】「何年式ですか?60年代後半?」「いいえ、新車です」注目度バッチリのモーガン・プラスフォー(写真5点)
スコットランドの老舗アウトフィッター「キャンベルズ・オブ・ビューリー」とスタイルの権威でありインフルエンサー、さらにWilliamBrownProject.comの創設者でもあるマット・フラネックが主催する「サルトリアル(仕立屋)」なクラシックカーラリーへの招待を頂いた。答えは即座に「イエス」だ。
このイベントは、アメリカ、ヨーロッパ、英国から集まった十数名の仕立ての名手たちに、コンテンツ制作の機会を提供することを目的としている。舞台は絶景のアップルクロス半島を望むスコットランドの「トリドン・ホテル」。ビューリーから80km西に位置するこの地は、まさにスコットランドの「真の荒野」と呼ぶにふさわしい。
フラネックは、私が洒落た身なりを好むタイプではないことをよく理解している。しかし、観光客が去り、まだ天候に恵まれる季節に、スコットランド高地の壮大な道路を堪能できる機会を喜ぶだろうことも彼にはわかっていたのだ。
そのために最適な車は?
自宅のあるデボン州南部から往復約2250kmの旅となるため、速くて燃費が良く、快適であり、故障の心配がない信頼性抜群の車でなければならなかった。そこで、家族のアウディを駆って朝早くマルバーンへ向かい、鮮やかな「フライイエロー」のモーガン・プラスフォーに乗り換えてスコットランドへと旅立つことに決めた。新車でありながらクラシックな佇まいを持つこの車は、まさに自信を与えてくれる存在だ。
2020年の大規模改良でアルミモノコックシャシーとBMWエンジンを採用し、旧式のラダーフレームとフォード製エンジンに別れを告げたプラスフォー。その最新モデルが登場したのは2024年の4月で、フロントフェンダーの形状や専用デザインのライト、ベンチレーテッドディスクブレーキなど細かな改良が施されている。また、今回の試乗車には、オプションの「ダイナミックハンドリングパック」(1995ポンド/約37万円)や「ゼンハイザー製プレミアムサウンドシステム」(3120ポンド/約58万円)も装備されていた。基本価格は6万3730ポンド(約1180万円)からで、この車は8万5459ポンド(約1580万円)だ。
試乗したプラスフォーには、BMW Z4から流用された255bhpの2.0リッターターボエンジンと、6速マニュアルトランスミッションが組み合わされている。このクラシックなルックスのプラスフォーは、0-60mph(約96km/h)加速5.1秒、最高速度149mph(約240km/h)、燃費50mpg(約21.3km/L)という驚きの性能を誇る。さらに、コクピットやドア、リアエンドに手作業で組み込まれるアッシュフレーム、最低限のテクノロジー(タッチスクリーンはなく、USBポートとBluetoothのみ)など、モーガンの職人技が感じられる仕上がりだ。重量も1トン強しかない。
荷物スペースは最小限——シート後方の細長いプラットフォームのみ——で、乗り降りには少し柔軟性が必要だが、座席に落ち着き、愛犬ズールーを隣に乗せた瞬間、不快感よりもむしろ包み込まれるような安心感を覚えた。このプラスフォーは高速道路を軽々と走り抜け、約800km離れたパースに到着。そこで夜を過ごすことにした宿泊先は「グランピングポッド」(Whitemoss-Lodge.com)。偶然にも、オーナーがプラスシックスとエアロ8を所有していたのは驚きだった。
翌朝、景色が美しいもののスピードカメラ(オービス)が多いA9を約210km走り、正午にキャンベルズへ到着。ここからがモーガン乗り特有の質疑応答タイムの始まりだ。
「レストアしたばかりですか?」
「いいえ、新車です」
「何年式ですか?60年代後半?」
「いいえ、新車です」
「こんな古い車でその距離は大変だったでしょう?」
「実は新車なんです。道中は本当に快適でした」
その鮮やかなペイントワークにもかかわらず、プラスフォーはラリー参加車両の中に違和感なく溶け込んでいた。ちなみに他の参加車両は、キャンベルズオーナーの見事なMGC、義父のEタイプクーペ、マッスルなノッチバックマスタング、そして美しいサウンドのTR6dだ。
ドライバーたちは全員、テーラーや生地サプライヤー、メンズスタイルのインフルエンサーたちで、典型的な車好きではなかったが、プラスフォーが彼らにクラシックカーへの興味をかき立てていたのは間違いない。
「でも、こんな車が手に入るなら、誰がわざわざ古い車を買うの?」
そんな声があがるほど、新しいモーガン・プラスフォーは印象的だった。
Words: Simon de BurtonPhotography: Jamie Ferguson
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