高木豊の「セ・リーグ助っ人通信簿」2024年シーズン4段階で最高評価・低評価だったのは?

photo by web Sportiva

高木豊の「セ・リーグ助っ人通信簿」2024年シーズン4段階で最高評価・低評価だったのは?

1月14日(火) 1:25

提供:
高木豊「2024年の助っ人通信簿」

セ・リーグ編

プロ野球においてチーム浮沈のカギを握る助っ人外国人。2025年シーズンに向けて補強も進んでいるが、その前に昨季の外国人選手たちの活躍や、オフの動きを振り返っておきたい。

かつて大洋(現DeNA)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏に、まずはセ・リーグ各球団の主な助っ人たちの貢献度を【◎、〇、△、×】の4段階で評価してもらった。

(※)一軍での出場がない選手、出場試合数が少ない選手に対するコメントは省略(成績のみ掲載)しているが、評価の対象。育成選手は評価の対象外。中日のダヤン・ビシエドは日本人枠の扱いだが、評価の対象とした。

2024年のセ・リーグ首位打者、DeNAのオースティンphoto by Sankei Visual

2024年のセ・リーグ首位打者、DeNAのオースティンphoto by Sankei Visual





◆巨人【野手〇/投手〇】

4年ぶりのリーグ優勝を達成した巨人は、投打で助っ人たちが及第点の活躍を見せた。5月に加入したエリエ・ヘルナンデスは、左手首骨折で離脱するまで打線を牽引。また、アルバルト・バルドナードとカイル・ケラーは50試合以上に登板するなどブルペン陣を支えた。

「エルナンデスはチームの流れを変えましたよね。骨折して離脱してしまうまでは打線で機能していましたし、相手からすると怖い存在だったと思います。彼があのタイミングで入ってこなかったら巨人の優勝はなかったかもしれません。

ココ・モンテス(退団→タンパベイ・レイズとマイナー契約)は、個人的な働きは△の評価です。本業の内野手ではなく外野に回されたのは不運でしたが、少々パワー不足かなと。ヘルナンデスと似たタイプのバッターなので、どうしても比較されますし、少しつらかったですね。

フォスター・グリフィンは途中からローテーションを守りましたし、ゲームを作りました。崩れる時もありましたが、それほど悪いイメージはありませんし、もう少し勝っていてもおかしくない投球内容でした。ただ、点が取れなかったのでピッチャー陣は苦しかったと思います。



ケラーは8回など大事な場面でいい働きをしていましたし、シーズン終盤は彼がいなかったらどうなっていたか、というくらい貢献しました。バルドナードもいないと困る存在でしたが、フォアボールを出して乱れるケースがあるので、もう少し安定感がほしかったなと。シーズン終盤は息切れしていましたが、60試合近く投げていましたから、よく投げたと言っていいと思います。

【主な助っ人外国人の成績】

(野)エルナンデス56試合打率.2948本塁打30打点出塁率.346OPS.798

(野)モンテス<退団→タンパベイ・レイズとマイナー契約>46試合打率.2721本塁打14打点出塁率.308OPS.699

(投)グリフィン20試合6勝4敗防御率3.01

(投)ケラー52試合2勝2敗20ホールド1セーブ防御率1.53

(投)バルドナード58試合2勝3敗26ホールド9セーブ防御率2.44

◆阪神【野手×/投手◎】

2位の阪神は、2023年に一定の活躍を見せたシェルドン・ノイジーの不振が誤算だったが、ジェレミー・ビーズリーとハビー・ゲラはそれぞれの持ち場で活躍。特にゲラは、セットアッパーとクローザーをこなす大車輪の働きを見せた。

「ノイジー(退団)は、前川右京ら若手の成長株に働き場所を追いやられた印象です。バットを立てるか寝かせるか、といったバッティングに対する考え方が、どうしても岡田彰布前監督と合わなかったこともありましたね。それでも2023年の経験がありますし、使い方によっては力を発揮できたかもしれないんですが......。

投手陣は◎です。先発のビーズリーは、最初はチャンスをもらえませんでしたが、それでも5つの貯金を作りました(8勝3敗)。シーズンを通して登板できていたら10勝はできたと思いますし、途中からはビーズリーを中心に先発ローテーションを組んでいた時期もありましたからね。ボールに力があることに加え、コントロールがいいんですよ。

ゲラは160キロ超えの真っすぐや、下馬評がかなり高かったことを考えると、少し期待値を下回ったかなと。僕も「バッターをもっと圧倒するんじゃないか」と期待していたので。ただ、厳しい場面での登板が続きましたし、1年目ということを踏まえるとよく投げたと思います。

【主な助っ人外国人の成績】

(野)ノイジー<退団>49試合打率.2311本塁打8打点出塁率.302OPS.593

(野)ミエセス<退団>14試合打率.1110本塁打0打点出塁率.158OPS.269

(投)ビーズリー14試合8勝3敗防御率2.47

(投)ゲラ59試合1勝4敗31ホールド14セーブ防御率1.55

◆DeNA【野手◎/投手〇】

リーグ3位からの下剋上で日本一となったDeNA。タイラー・オースティンが首位打者に輝き、投手のアンドレ・ジャクソンやアンソニー・ケイらはポストシーズンで日本一を手繰り寄せる活躍を見せた。

「オースティンは途中でケガなどもありましたが、安定した働きぶりでした。状態がよかったので4番を任せられましたし、牧秀悟の打順を自由に動かせるようになった。今季が契約の最終年だったので活躍の予感はありましたが、やはり実力があるということですね。

マイク・フォード(退団→ミネソタ・ツインズとマイナー契約)は、素質は◎でしたがチャンスが少なかったですね。ただ、オースティンが本気になったのはフォードの存在が大きかったと思うんです。フォードはファーストしか守れませんし、外野は梶原昂希が台頭するなど層が厚くなってきたので、オースティンを外野に回せなくなる。だから、気を抜いたらフォードに代えられてしまう危機感があったはずです。ミート力やパワーもあるし、オースティンがいなかったらファーストはフォードでよかったと思うくらいです。

ジャクソンは、シーズン序盤はよかったですが、以降は制球に難が出てきて自滅するケースが見られました。それでも日本シリーズで帳尻を合わせたかなと。同じく日本シリーズで活躍したケイは、イライラ感がナインの平常心を損なうというか闘争本能を削るというか......みんなにイライラ感が蔓延してしまうんです。ポストシーズンの少し前くらいから我慢できるようになりましたけど、もう少し大人になってほしい。投げているボールはいいので、精神面が安定すればふた桁は勝てるピッチャーですよ。



ローワン・ウィックは、伊勢大夢らの状態が上がらない時期によく支えてくれました。J.B.ウェンデルケン(退団)も悪くはなかったですが、ウィックが重視されていたからか登板数が2023年の約半分でしたね。

【主な助っ人外国人の成績】

(野)オースティン106試合打率.31625本塁打69打点出塁率.382OPS.983

(野)フォード<退団→ミネソタ・ツインズとマイナー契約>6試合打率.2001本塁打2打点出塁率.273OPS.623

(投)ジャクソン25試合8勝7敗防御率2.90

(投)ケイ24試合6勝9敗防御率3.42

(投)ウィック43試合5勝1敗11ホールド1セーブ防御率2.60

(投)ウェンデルケン<退団>28試合1勝1敗16ホールド防御率1.71

◆広島【野手×/投手△】

8月終了時点では首位を走るも、シーズン終盤の大失速で4位に転落した広島。主軸として期待されたマット・レイノルズやジェイク・シャイナーらがシーズン途中で退団するなど、外国人選手の早期離脱も響いた。

「投手のトーマス・ハッチ(退団)はオープン戦で最初に見た時、試合を作れそうなピッチャーだと思ったのですが、シーズンに入ったら制球が甘いのと勝負できる球がないのでつらかったですね。

テイラー・ハーンはよかったんじゃないですか。苦しい場面を抑えて試合の流れを変えてくれることもありましたし。ただ、力任せですよね。ボールの力強さは武器ですが、新しい球種を覚えるなどしないと来季は厳しくなりそう。バッターとの駆け引きができるようになればいいと思います。

ロベルト・コルニエル(退団)はコントロールに難がありましたね。ボールの力や角度にいいものがあっても、自滅してしまうのがちょっと気になりました。かつてほどの球速はないですし、年齢的(29歳)に伸びしろも期待できないと考えると厳しいです。

【主な助っ人外国人の成績】

(野)レイノルズ<退団→現役引退>2試合打率.0000本塁打1打点出塁率.167OPS.167

(野)シャイナー<退団>12試合打率.1331本塁打5打点出塁率.161OPS.428

(投)ハッチ<退団>5試合0勝3敗防御率7.36

(投)ハーン35試合0勝1敗17ホールド2セーブ防御率1.29

(投)コルニエル<退団>16試合0勝0敗防御率2.65

◆ヤクルト【野手◎/投手△】

2年連続で5位と低迷したヤクルト。チーム状況が苦しいなか、ドミンゴ・サンタナはシーズン終盤まで首位打者争いを繰り広げ、ホセ・オスナも及第点の活躍を見せた。一方でピッチャー陣は、総じて厳しい結果に終わった。

「野手のふたりは相変わらず安定していましたね。オスナは及第点の成績ですし、調子の良し悪しにかかわらず全力プレーをしてくれるのがすばらしい。チームへの貢献度が高いです。

サンタナはずっと首位打者を争って、最後の最後でオースティンにひっくり返されましたがよくやったと思います。足の故障もありましたけど、それでも打率3割、20本近くのホームランを打ってくれる優良助っ人です。

サイスニード(退団)は、勝ち投手の権利を持って降りた後に、後続のピッチャーがひっくり返されたりと運もなかったです。打たれ出すと止まらなかったですし、勝ちたい気持ちが強すぎて"先を急ぐ"感がありました。ミゲル・ヤフーレ(退団→楽天に移籍)はピッチングはまとまっていましたが、圧倒するようなボールがなかった。それでも、先発ピッチャーがコマ不足の状況で長期の離脱がなかったのは評価できます。

エルビン・ロドリゲスも退団しましたが、もったいないと思うんです。7、8回の終盤の1イニング、全力でいけるような場面であれば腕を振って投げられますし、そんなに悪い印象はありませんでした。ホセ・エスパーダ(退団)は、6月に二軍落ちしてからは一軍での登板機会がなかったですし、リリーフで防御率5点台は厳しかったですね。

【主な助っ人外国人の成績】

(野)オスナ141試合打率.26717本塁打72打点出塁率.320OPS.733

(野)サンタナ122試合打率.31517本塁打70打点出塁率.399OPS.905

(投)サイスニード<退団>24試合2勝8敗防御率5.03

(投)ヤフーレ<退団→楽天に移籍>23試合5勝10敗防御率3.34

(投)ロドリゲス<退団>32試合1勝1敗8ホールド1セーブ防御率1.80

(投)エスパーダ<退団→サンディエゴ・パドレスとマイナー契約>24試合0勝2敗5ホールド防御率5.00

◆中日【野手△/投手〇】

3年連続の最下位となった中日。ライデル・マルティネスは相変わらずの活躍ぶりだったが、主軸として期待されたアレックス・ディカーソンや先発ローテーションの一角として期待されたウンベルト・メヒアら、不振の助っ人が多かった。

「ダヤン・ビシエド(退団)は、あれだけチャンスがもらえなかったら評価しにくいです。日本での経験値が高くても、チャンスを与えたくなるようなベストな状態に持っていけないということを考えると、個人としても△の評価かなと。使われればそこそこ結果を残したでしょうが、周囲が納得する数字まで持っていけるかは疑問です。

オルランド・カリステは、ちゃんと起用すれば安定した数字を残してくれると思うんです。飛び飛びの起用だと、試合のリズムを作るのに時間がかかる選手だと見ています。試合に出た時は、先取点に貢献したりと貢献度は高かったですね。

クリスチャン・ロドリゲスは、22歳という若さや今のキューバのレベルなど考えると、これから日本でうまくなっていってほしい選手です。使う側も2024年は経験を積ませることを考えての起用だったでしょうし、そういう意味で評価は△。ディカーソン<退団>は、人工芝でやると腰が痛くなるなど体が弱すぎます。一発の魅力を感じさせてくれた打席もありましたが、期待外れでしたね。

先発ローテーションの一角として期待していたメヒアは、登板数も少ないですし安定感を欠きました。3試合投げて2回負けるようなペースでは厳しいですよ。マイケル・フェリス<退団>はリリーフで防御率5点台とこちらも厳しかった。抑えるパターンがあまりないんです。ただ力任せに投げているだけで意図を感じませんし、自分本位のピッチングになってしまいました。



ライデル・マルティネス(自由契約→巨人に移籍)は個人では、当然◎です。彼まで繋げばほぼ勝ちましたから。今季は3敗を喫しましたが、チームに与える安心感ははかり知れないものがあった。彼が巨人に移籍したダメージは計り知れませんが、どんな体制になるのか見守りたいです。

【主な助っ人外国人の成績】

(野)ビシエド<退団>15試合打率.2091本塁打2打点出塁率.261OPS.563

(野)カリステ114試合打率.2617本塁打36打点出塁率.287OPS.639

(野)ロドリゲス23試合打率.1300本塁打1打点出塁率.161OPS.290

(野)ディカーソン<退団>32試合打率.2053本塁打5打点出塁率.314OPS.666

(投)メヒア15試合3勝8敗防御率4.88

(投)マルティネス<自由契約→巨人に移籍>60試合2勝3敗7ホールド43セーブ防御率1.09

(投)フェリス<退団>17試合0勝1敗防御率5.19

(パ・リーグ編:全体的には低調も、高く評価した球団は?>>)



【プロフィール】



高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。





■元プロ野球選手のYouTuberのパイオニア

高木豊のYouTubeチャンネルはこちら>>



【関連記事】
◆岩隈久志から見た田中将大は「本来のピッチングに近づいている」巨人での200勝達成に向けた改善点は◆
◆江川卓の大学時代を鹿取義隆が回想百戦錬磨の名将も認めた「ピッチャーで1億、バッターで1億」の身体能力
◆高木豊がセ・リーグ球団の現役ドラフトを評価「まさか、この選手が出てくるとは」という選手を獲得できたのは?
◆立浪和義が中日でやりたかった野球とはなんだったのか?里崎智也と五十嵐亮太は「不透明なまま」と厳しい評価
Sportiva

新着ニュース

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ