タランティーノ、カウリスマキが所有する劇場も。映画ファンならいつかは行きたい世界のユニークな映画館を集めてみた

アキ・カウリスマキが作り上げたキノ・ライカなど一度は訪れたい世界の映画館たち/[c]43eparalleleproductions

タランティーノ、カウリスマキが所有する劇場も。映画ファンならいつかは行きたい世界のユニークな映画館を集めてみた

1月4日(土) 5:30

数々の傑作で知られる映画監督のアキ・カウリスマキが、フィンランドの鉄鋼の町カルッキラに、2021年にオープンさせた映画館キノ・ライカ。この映画館が開業される様子を記録したドキュメンタリー『キノ・ライカ小さな町の映画館』が公開中だ。そこで今回は、映画好きなら一度は行ってみたい、ユニークな特徴を持つ世界の映画館を集めてみた。
【写真を見る】内観もおしゃれなキノ・ライカなど、世界のユニークな映画館集めてみた
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■アキ・カウリスマキ作品に迷い込んだかのようなキノ・ライカ(フィンランド)

フィンランドの首都ヘルシンキから車で1時間ほどの場所にある、人口9000人ばかりの小さな町、カルッキラ。森と湖と、いまは使われなくなった鋳物工場しかないこの町の”初めての映画館”として誕生したのがキノ・ライカだ。

工場を改造して作られたキノ・ライカ。レンガ造りの外観が渋い

この場所に長らく暮らすアキ・カウリスマキが、友人の詩人ミカ・ラッティと共に共同経営者を務めるキノ・ライカは、工場の一角を改装したもので、レンガ造りの外観が魅力的。スクリーンに加えて、豊富なセレクションを誇るワインバーや、小川に面したテラスを備えた複合文化施設となっている。

まるでカウリスマキ映画に迷い込んだかのようだ

映画のセット設営もやってきたカウリスマキ監督が、デザインや色彩、コンセプトといった現場責任者を担当したため、モダンなバーの看板や犬のライカの絵など、カウリスマキ作品の要素を至るところに感じることができる。

カウリスマキ監督と詩人のミカ・ラッティが共同オーナーを務めている

実際、バーカウンターは『浮き雲』(96)のレストランや『希望のかなた』(17)の怪しい寿司屋で登場したものが使用されており、ファン垂涎の空間となっている。ちなみにカルッキラの町は『希望のかなた』などでも登場しており、『枯れ葉』(23)の鋳造所のシーンはキノ・ライカの隣の工場で撮影されたそうだ。

カウリスマキ映画に登場してきたバーカウンターが!

『キノ・ライカ小さな町の映画館』では、6月に工事を始めて10月にはオープンというものすごいスピードで誕生したこのキノ・ライカに密着。実際に自分の手で椅子を取り付けたり、スクリーンを張ったり、工事仕事に勤しむカウリスマキの姿が映しだされていく。

カウリスマキ監督自ら工事をする様子も

カウリスマキはもちろん、ジム・ジャームッシュといった親交のある人々のインタビューやカルッキラの風景を通じ、この田舎町への思いや映画館を作った理由が語られており、キノ・ライカを訪れたくなる一作となっている。
盟友ジム・ジャームッシュも登場する


■タランティーノが購入したニュー・ビバリー・シネマ&ビスタ・シアター(アメリカ)

タランティーノが所有するニュー・ビバリー・シネマ

映画館のオーナーとして有名な監督がクエンティン・タランティーノ。彼がロサンゼルスに所有するのが、ニュー・ビバリー・シネマだ。1929年から続くこの映画館は、2007年に前オーナーが亡くなり閉館の危機を迎えたが、もともと常連だったタランティーノが買い取って存続させたという経緯を持つ。

35mmフィルムの2本立てという昔ながらの上映スタイルにこだわった、映画ファンからの信頼も厚いリバイバル館だが、タランティーノが気に入ったという『ガンパウダー・ミルクシェイク』(21)のプレミアの際には35mmのフィルム版を作成して上映が行われた。余談だが、ポール・トーマス・アンダーソンが監督したHAIMのミュージック・ビデオ「Summer Girl」にも登場する。

『サンクスギビング』のプレミアはビスタ・シアターで行われた

そんなタランティーノが2021年に新たに購入したのが、ロサンゼルスのサンセット大通りに1923年にオープンし、タランティーノ脚本の『トゥルー・ロマンス』(93)にも登場する老舗ビスタ・シアターだ。購入後約3年にわたってリノベーションがなされると2023年末に再開、盟友イーライ・ロスの『サンクスギビング』(23)のプレミアを35mmフィルムで行うなど、こちらの劇場でもフィルム上映のスタイルを取っている。

■現存する世界最古の映画館エデン・シアター(フランス)

現存する世界最古の劇場として知られているのが、フランス南部の町、ラ・シオタのエデン・シアター。ここは“映画の父”ことリュミエール兄弟が、1899年に映画の原型シネマトグラフ(活動写真)を上映した映画館として知られている。

現存する最古の映画館エデン・シアター

映画離れなどから1995年に一度閉館することになったが、近郊のマルセイユが2013年に欧州文化首都に選ばれたことで改修が認められ、クリームイエローの外観が鮮やかな現在の姿に生まれ変わった。

■イギリス最古の劇場の一つ、エレクトリック・シネマ(イギリス)

イギリスでも最古の部類に入るロンドンのエレクトリック・シネマ

イギリス最古の映画館の一つと言われているのが、ロンドンのノッティング・ヒルに現存するエレクトリック・シネマ。1910年にオープンした映画館で、名前の通り、電気が供給された建造物としてもイギリス最初期の建物の一つとされている。

エレクトリック・シネマの座席には寝転がれる席も

レトロなソファーシートが並ぶシアター内の前方にはダブルベッドが設けられており、寝そべりながら映画を鑑賞できるのも特徴的だ。

■世界で最も美しいトゥシンスキー・シアター(オランダ)

様々な建築様式が融合したアムステルダムのトゥシンスキー・シアター

世界で“最も美しい”と言われているのが、オランダのアムステルダムにあるトゥシンスキー・シアター。1921年にオープンしたこの劇場は、アムステルダム派をベースに、アール・デコやアール・ヌーヴォーなど多彩な建築様式が融合した絢爛豪華な建物となっている。

内部も豪華で数々のプレミアも行われる

石造りの荘厳な外観が目を引くが、その内部は世界各国の様々なテイストがミックスされたゴージャスかつ摩訶不思議な空間に。四方八方、柄、装飾だらけのシアターは映画を観る前から圧倒されてしまいそう。

■世界で最も有名なグローマンズ・チャイニーズ・シアター(アメリカ)

『MaXXXine(原題)』にも登場するハリウッドの象徴チャイニーズ・シアター

世界で最も有名な映画館として外せないのが、ハリウッド大通りに位置するグローマンズ・チャイニーズ・シアター。興行師シド・グローマンによって1927年に建てられた中国寺院風の建築が特徴的な映画館で、ロサンゼルスの歴史文化財にも登録されている。

手形でも有名なフォーコート・オブ・ザ・スターズが前庭となっている

ハリウッドスターを中心とする約300人の著名人の手形や足形が刻まれたセメントタイルが有名な前庭“フォーコート・オブ・ザ・スターズ”に加え、『スター・ウォーズ』をはじめとする数々の作品が初演を行うなど、まさにハリウッドの象徴的存在だ。

またハリウッドには、シド・グローマンがチャイニーズ・シアターより早い1922年に開業させた、エジプト建築がコンセプトのグローマンズ・エジプシャン・シアターも存在。こちらは、ハリウッド映画初のプレミア試写会が行われた歴史的な場所で、ドキュメンタリー『映画の殿堂:エジプシャン・シアターの100年史』(23)も話題となった。

■世界で唯一の二層構造劇場、エルジン&ウィンター・ガーデン・シアター(カナダ)

カナダのトロントにあるエルジン&ウィンター・ガーデン・シアターは、エルジンが1913年に、ウィンター・ガーデンが1914年にオープンした歴史ある映画館。トロント国際映画祭の会場の一つでもあり、カナダの歴史遺産にも登録されている。

まるで森の中で映画を観ているかのような気持ちが味わえるウィンター・ガーデン・シアター

2階建て構造の上層にあり、上流階級向けに開業したウィンター・ガーデンは、1928年から約60年間閉鎖され、1989年に復活したという経緯を持つ。その名の通り、内装が庭のようになっており、草木の装飾に加え、手書きの風景画や温かみのある光を放つランタンなどファンタジックな空間が広がっている。

エルジンのほうは『シェイプ・オブ・ウォーター』にも登場

また、エルジンは『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)の主人公が劇場の上にあるアパートに住んでいるという設定で登場した。

■世界最小(?)の移動式映画館ソル・シネマ(イギリス)

変わり種として最後に紹介したいのが、イギリスのソル・シネマ。この映画館はビンテージのキャラバンを改造した移動式シアターで、各地の様々なイベントに参加している。スペイン語で太陽を意味する”ソル”の通り、ソーラーパネルで集めた太陽光エネルギーを利用しており、定員は8名ほど。レトロな内装だが、音響はサラウンドシステムになっている。

世界にはこれら以外にも様々な特色を持った映画館が存在するので、冬休みに海外へ旅行する人は、ぜひともその土地の映画館に足を運び、映画を鑑賞してみてはいかがだろうか?

文/サンクレイオ翼


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