ここ数年、テレビ業界の脚本家たちにとっては苦難の時期が続いている。米Deadlineが報じた。
全米脚本家組合(WGA)が4月12日(現地時間)に発表した新たなレポートによると、2023~2024年シーズンにおけるテレビの脚本職の数は、前年から42%減少。2022~23年の1819件に対して、今年度は1319件にまで落ち込んだという。
この急激な減少の背景には、23年にWGAがストライキを行い、スタジオと新たな契約を結ぶために数カ月にわたって戦ったことがある。また、ケーブルテレビにおけるオリジナル番組の減少、さらにストリーミング・プラットフォーム各社がウォール街からの圧力で利益優先の縮小戦略にシフトしたことも影響している。
組合のデータによると、WGAがカバーするエピソードテレビ番組の数も前年比で約37%減少しており、番組打ち切りやシーズン終了による影響も大きい。
特に深刻なのは、ショーランナーや共同制作総指揮の職が大きく減ったこと。今シーズンは前年度から642件の減少となり、2018~2019年の1508件から2023~2024年には952件と、およそ6年間で3分の2程度に急落している。
また、スタッフライター、ストーリーエディター、エグゼクティブストーリーエディターなどのエントリーレベルの職種も378件減少。さらに、コンサルティング・プロデューサーやスーパーバイジング・プロデューサーなどの中堅ポジションも299件減っている。
一方、映画の脚本業も苦戦しているが、テレビほどではない。2024年の最初の3四半期では、映画脚本家の収入が前年比6%減少、仕事に就いている脚本家の数も15%減少しているという。
WGAは組合員向けのメールで、「脚本家としてのキャリアは元来、不安定で持続困難なものだったが、今回の業界縮小によりその困難さがさらに増している」と述べている。さらに、「私たちはウォール街の要求に従ってコンテンツへの支出を削減している企業の意思決定に翻弄されている」と批判。そして「現政権(※米国連邦政府)が経済の混乱を引き起こし、民主主義を揺るがしているようにすら感じる」と強い表現も使われていた。
WGAは2023年5月2日から9月27日まで148日間のストライキを実施。これは組合の歴史の中で2番目に長いストで、1960年のストと並ぶ日数だった。最長記録は1988年の153日。今回のストはSAG-AFTRA(全米映画俳優組合)のストとも重なり、ハリウッド全体がかつてない停滞を経験した。
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