4月7日(月) 20:20
老後に受け取れる公的年金(老齢年金)は、原則として65歳から支給が始まります。ただ本人の希望に応じて、60歳~64歳で受け取り始める「繰り上げ」や66歳~75歳で受け取り始める「繰り下げ」も選択できます。
では、65歳から受け取るつもりで繰り上げの手続きをしていなかった人が、60歳で亡くなってしまった場合はどうなるのか見ていきましょう。
一般的には、本人の死後、遺族が次のお金を受け取れる可能性があります。
●遺族基礎年金
●遺族厚生年金
●死亡一時金
●寡婦年金
今回のケースでは、亡くなったのは「公務員だった叔母」です。そのため、夫を亡くした妻が対象の「寡婦年金」は受け取れません。また、「死亡一時金」は、自営業者など第1号被保険者として保険料を納めた期間が3年以上ある人が対象のため、若い頃から長年ずっと公務員として働いてきた人なら受け取れない可能性が高いでしょう。
受け取れる可能性が比較的高いのは、遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金)です。
遺族基礎年金と遺族厚生年金はあわせて「遺族年金」と呼ばれていますが、それぞれ受け取れる条件が細かく決められています。例を挙げると以下のとおりです。
受け取れるのは、亡くなった人に生計を維持されていた子のある配偶者もしくは子です。ここでいう「子」とは、18歳になった年度の3月31日までのある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人を指します。
・受け取れる金額の例
81万6000円+子の加算額(子1人の場合23万4800円)
※2024年度。子のある配偶者(1956年4月2日以後生まれ)の場合
遺族基礎年金よりも受け取れる遺族の範囲が広いです。亡くなった人に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位が高い人が受け取れます。
1. 子のある配偶者
2. 子
3. 子のない配偶者(30歳未満の妻は5年間のみ受給可。夫は55歳以上が対象で受給開始は60歳からです)
4. 父母(55歳以上が対象で、受給開始は60歳からです)
5. 孫
6. 祖父母(55歳以上が対象で、受給開始は60歳からです)
受け取れる金額は原則「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」で、亡くなった人の生前の給与水準などによって変わってきます。
なお、2015年9月30日以前に亡くなった公務員の場合、遺族厚生年金ではなく「遺族共済年金」の対象です。また、公務に関連して亡くなった場合は「公務遺族年金」の対象になる可能性があります。
年金を受け取り始める前に亡くなってしまった場合、「せっかく今まで保険料を払ってきたのにもったいない」と感じるかもしれません。ただ、本人が受け取れなくても、遺族が受け取れる可能性があります。
亡くなった人やその家族が条件を満たしていれば遺族年金などの対象になるので、よく確認してみましょう。条件を満たすかわからない場合や手続き方法を知りたい場合は、亡くなった人が加入していた共済組合や年金事務所に問い合わせれば教えてもらえます。
江東区公式ホームページ年金を受け取る前に亡くなったとき
日本年金機構遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
全国市町村職員共済組合連合会遺族一時金/公務遺族年金
地方公務員共済組合連合会
国家公務員共済組合連合会遺族共済年金
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所代表
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