「Au Fil de lOr — Lart de se vêtir de lOrient au Soleil-Levant」展は、金という素材がいかに多様な文化で用いられてきたのかを示す展示であり、特に金糸や金箔を使った衣装や装飾品に焦点を当てている。この展示は、金が装飾技術としてどのように歴史的に発展し、文化的に重要な役割を果たしてきたかを広範囲にわたって探求するものだ。
【画像】世界中で高く評価される、日本の金装飾の美しさと卓越した技術力(写真22点)
展覧会は、中東、インド、中国、日本、ビザンチン、ヨーロッパなど、金が重要な役割を果たしてきたさまざまな地域の衣装を一堂に集めている。それぞれの地域で金の使われ方には独自の文化的背景があり、金は単なる装飾にとどまらず、権威、神聖、そして社会的地位を象徴するものであった。金糸や金箔を使った衣服は、時に神々への奉納、時に貴族や皇族の威厳を表現するために用いられた。
展示の中で特に目を引くのは、日本における金の使用だ。日本では、金糸や金箔が古代から現代に至るまで、重要な文化的役割を果たしてきた。展示の中では、江戸時代の金糸を使った着物や、能楽の衣装、そして金箔を使った仏教の祭具などが紹介されている。これらの日本の金装飾は、神聖さ、美しさ、そして権威を表現するための重要な手段だった。
特に江戸時代の辻ヶ花技法で作られた金糸の衣装が展示されており、この技術は日本の金文化の中でも非常に高く評価されている。金箔や金糸を織り込んだこれらの衣服は、貴族や武士階級にとって格式や名誉を象徴するものであり、金が持つ宗教的・精神的な意味が強調されている。展示は、日本がどのようにして金を通じて社会的地位を表現してきたか、そしてその技術がどのように発展したかを視覚的に伝えている。
小袖(こそで)や着物の金糸は日本の伝統的な衣装に施された金糸や金箔は、貴族や武士階級の象徴として非常に重要だ。能楽の衣装では、金を施した能楽の衣装が、神聖で霊的な意味を持つことが示されている。仏教装飾では金を使った仏教の祭具や仏像が、日本における金の重要性を物語っている。
この展示が行われているのは、ケ・ブランリ美術館だ。美術館は、ジャック・シラク元大統領の文化政策の一環として2006年に開館した。彼の文化外交のビジョンは、世界中の非西洋文化や先住民文化を広く紹介することだった。シラク大統領は、世界の文化遺産の多様性を尊重し、それを紹介するためにこの美術館を設立した。
ケ・ブランリ美術館の設立により、フランスは世界中の芸術や文化遺産を収集・展示する中心的な施設を持つこととなり、金をテーマにした展示もその一環だ。展示は、金という共通の素材を通じて、東洋と西洋の文化的交流の歴史を描き、金の装飾技術が世界を越えて広がった過程を示している。
金の装飾技術は、展示を通じて日本の伝統がいかに東洋と西洋を繋げる役割を果たしてきたかを示している。日本の金文化は、古代から現代にかけて、多くの国々に影響を与え、特に中国や中東を経由してヨーロッパにもその技術が伝播した。日本の金装飾は、その美しさと技術の高さによって、世界中で高く評価されることとなったのだ。
展示では、金糸を使った日本の衣装とともに、金を用いた他の文化の技法も紹介されており、特に日本がどのようにして金を用いた装飾の伝統を継承し、発展させてきたのかを知ることができる。金の装飾がもたらす視覚的な美しさと、それが持つ象徴的な意味に触れることで、来館者は日本を中心に広がる金文化の多層的な歴史を感じることができるだろう。
ケ・ブランリ美術館
https://www.quaibranly.fr/fr/
37 Quai Jacques Chirac, 75007 Paris
写真・文:櫻井朋成Photography and Words: Tomonari SAKURAI
【関連記事】
・アンリ・ジャック「クリック‐クラック コレクション」からビスポークモデルが登場
・京都「Jean-Georges at The Shinmonzen」の一つ星獲得を、ノンアルコールワイン「NOOH」で祝う
・ドビュッシーの生家「クロード・ドビュッシー博物館」を訪ねて
・本当のブランデッド・レジデンスとは|N°001 MINAMI AOYAMA DESIGNED BY ASTON MARTIN
・ルレ・エ・シャトーに大分県・湯布院の「ENOWA YUFUIN」が新たに加盟