『スターズ・オン・アイス2025』後編(全3回)
『スターズ・オン・アイス』に出演した坂本花織(4月5日撮影)
【一堂に会すワールドメダリストたち】4月4日、大阪。世界最高峰のアイスショー『スターズ・オン・アイス』(4月5、6日)の記者発表が行なわれていた。壇上に集まったのは、豪華絢爛なワールドメダリストたちだった。
3月の世界選手権の男子シングルで金メダルを獲ったイリア・マリニン(アメリカ)、ペアで2度目の世界王者になった「りくりゅう」こと三浦璃来と木原龍一。さらに、女子シングルで4連覇は逃したが、銀メダルに輝いた坂本花織、そして3位に入った千葉百音もいた。また、世界ジュニア選手権で3連覇を達成し、次代を担う新鋭、島田麻央も前列に陣取っていた。
「まずは、『(選手の)皆さん、お疲れ様でした』って言いたいです。ワールドメダリストと一緒に滑れるのが楽しみです!」
アイスダンスの「かなだい」として高橋大輔と一時代を駆け抜けた村元哉中は、彼女らしい気遣いでそう声をかけている。
まさに最高に近い陣容がそろった。壇上にはいなかったが、昨年12月の全日本選手権で表彰台を争った樋口新葉、松生理乃、中田璃士、佐藤駿、壷井達也、友野一希らもゲストメンバーに入っていた。
一方でプロに転向した面々も、注目はかなだいだけでなかった。浅田真央もショーの看板になっていた。ほかにも宮原知子らこれだけの面子がそろうのは珍しいほどだ。
「自分たちの世代の憧れのスケーターがたくさんいらっしゃるので、すごい楽しみです!」
坂本が口にした言葉は、決して建前ではない。
〈世代の融合〉。それを感じられるショーになるはずだ。
ただ、ワールドメダリストは、競技者としての緊張も感じさせていたーー。
【男女の金メダル候補にかかる重圧】来シーズンに向け、選手はミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を照準に据え、一世一代の覚悟が問われる。すべてはミラノに向かっているのだ。
「全力で取り組んだ世界選手権で優勝できたことはうれしかったです。今はハッピーな気持ちで、ここに来ることができました。これからも、できる限りのトレーニングをして、五輪シーズンを頑張りたいと思います」(マリニン)
「世界選手権に限らず、今シーズンは波があったので、苦しかった試合もたくさん経験しました。ワールド(世界選手権)では4連覇はできなかったですけど、2位という結果を得られて......どこかほっとしていると同時に、来シーズンに向かっては前向きに切り替えて。『スターズ・オン・アイス』から、来シーズンを見据えて取り組んでいけたらと思っているので、楽しみたいです」(坂本)
ふたりはミラノ五輪でも、金メダルが期待される。フィギュアスケート界だけでなく、冬の祭典の英雄になれるか。重圧を背負うが、それはスーパースターの宿命と言える。
【五輪出場をかけたし烈な戦いへ】世界選手権で日本は、男女シングルでそれぞれ3つの出場枠を獲得した(上位2選手の順位合計が13以内で3枠という条件で、男子は鍵山優真が3位、佐藤が6位で合計9。女子は坂本が2位、千葉が3位で合計は5で同じく3枠)。ペアも、りくりゅうの金メダルでひとつは出場枠を得た。ペアの2つ目、アイスダンスは五輪最終予選で出場権を争うが......。
今後は国内で出場枠を勝ち取ることが、選手たちの目標になるだろう。その争いは今回もし烈だ。
「昨年の世界選手権は7位と悔しい結果に終わっていたので......今シーズンはGPシリーズから結果を残せて、世界選手権で3位はうれしかったです。ただ、自分のなかでは完璧な演技ではなかったですし、課題もたくさん見つかりました。まずは、ショーで堂々と演技して楽しみたいです!」
そう語った千葉も、虎視眈々といったところか。
『スターズ・オン・アイス』の記者発表後、メインリンクではB'zの『ultra soul(ウルトラ・ソウル)』が大音響で繰り返しかかっていた。出演者8人でのグループナンバー。日本のトップスケーターが集結しているだけに、振り付けをすぐに自分の滑りに落とし込んでいった。
全日本選手権で5位と復活を遂げた松生理乃は、小さな体を目いっぱい動かしていた。千葉は長い四肢を生かし、大人っぽさが増したか。世界選手権にも出た樋口新葉と坂本は仲良くじゃれ合う姿を見せ、ライバルを超えた戦友なのだろう。
彼らはシングルスケーターとしては孤独だが、フィギュアスケートという限られた世界で、じつは子どもの頃からどんな競技よりも濃厚につながっている。それが五輪出場をかけ、命を削るような争いになる。明暗は残酷だが、それもいつしか物語になるはずだ。
『スターズ・オン・アイス』はつかの間、全員が氷上でも強く結びつく。ショーは大阪で公演後、4月12、13日には札幌でも行なわれる。
終わり
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