＜ヤマハレディースオープン葛城最終日◇6日◇葛城ゴルフ倶楽部 山名コース（静岡県）◇6475ヤード・パー72＞

ベテラン3人による最終日最終組が話題となった今大会。その“次女”ポジションにあたる39歳の藤田さいきは、優勝した37歳の穴井詩にわずか1打届かず。それでも、18番グリーンを後にするその表情は、実にすがすがしかった。

【写真】まさか…80cmのウィニングパットがクルン

「面白かった。久しぶりにヒリヒリした」と振り返った藤田。長年しのぎを削ってきたライバルたちと、再び優勝争いの舞台に立てたことが、何よりもうれしかったという。

「美貞さんが勝った時とか、全部見てきているので。『あぁ、こういう雰囲気を出してくるのかぁ』って、懐かしくなっちゃいました」。かつての記憶が、自然とよみがえってくる。さらに、「先輩のオーラがすごかった」と、ツアー通算25勝を誇る42歳、全美貞（韓国）の“勝負顔”にもすっかり魅了された。

優勝の行方は、穴井と美貞のプレーオフへ。先にラウンドを終えた藤田は、取材エリアに設置された中継モニターに釘付けになった。

実はその少し前、最終18番で美貞が外した80センチのウィニングパットを、藤田はすぐそばで見届けていた。「あれは嫌なラインですよ。すごく切れるラインだったと思います」と冷静に読みつつも、プレーオフが始まると話もそこそこに、再びモニターにかじりついた。

美貞のセカンドショットがディボットに入ると、「あ～」と思わず声が漏れる。穴井のボールがラフに飛び込めば、「スピンかからないから、逆にいいかも」。美貞がディボットから放ったショットには、「めちゃくちゃうまい！」と感嘆し、穴井の3打目には「完璧！」と拍手。気づけば完全に実況モードへ突入していた。関係者しか味わえない、ぜいたくな“副音声”だ。

もう、自身の会見はどこへやら。解説者さながらにモニター越しの2人を絶賛しながら、「2人とも、いい顔してるなぁ」と、感慨深げに語った。ライバルたちの熱戦に夢中な藤田の姿からは、きょうのラウンドがいかに充実したものだったかが伝わってくる。

プレーオフが終わると、解説者から再び選手の顔に戻る。「ショットが良くなかったので、バーディチャンスにつけられず。3番のロングもいいところに付いたんですけど、パターがよろしくなかったです」と冷静に振り返った。

それでも、目標スコアのトータル12アンダーには到達。納得のいくプレーをした上での惜敗に、「しょうがないですね」と、さっぱりした表情を見せた。「また、どこかで頑張ります」。肩肘張らず、次のチャンスに向けてギアは入っている。（文・齊藤啓介）

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