「最近、ラブソングが減ってる説」を徹底検証!

1985年から2024年までのヒット曲トップ10を基に作成

「最近、ラブソングが減ってる説」を徹底検証!

4月3日(木) 21:30

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昭和や平成の頃は、男女の熱い恋愛を歌い上げた名曲がいっぱいあったのに、なんか最近、王道のラブソングを全然聴かない気がする!やっぱり原因は恋愛離れ?

というかそもそも実際に減ってるのか?それを確かめるべく、40年分のヒット曲計400曲を手作業で分析。その結果見えてきた、ヒットチャートの変化とは!?

■昔はラブソングの名曲がいっぱいあったのに...... そういえばここ最近、ラブソングの大ヒット曲って出てなくない?そんな疑問がふと浮かんだ。

パッと思い浮かぶ近年の大ヒット曲といえば、アニソンが多い。

例えばビルボードの「Hot100」の国内ランキングで、2024年の1位はCreepy Nutsが歌うアニメ『マッシュル-MASHLE-』の主題歌 『Bling‐Bang‐Bang‐Born』 。23年の1位にはYOASOBIが歌うアニメ『【推しの子】』の主題歌 『アイドル』 がランクインしている。

少しさかのぼるが、19年のLiSAが歌うアニメ『鬼滅の刃』竈門(かまど)炭治郎立志編の主題歌 『紅蓮華 (ぐれんげ) の大ヒットなども、まだ記憶に新しいところだろう。

一方、1990年代から2010年代のヒットチャートを見てみると、男女の恋愛模様を歌ったヒット曲が目立つ。

ドラマ『東京ラブストーリー』の主題歌である小田和正の 『ラブ・ストーリーは突然に』 (1991年)や、当時若者の間で社会現象ともなった西野カナの 『会いたくて会いたくて』 (2010年)など、時代を象徴するようなラブソングが存在しているのだ。やはりラブソングは減っているのではないだろうか!?

そこで、1985年から2024年までの40年間分のヒットチャートランキングTOP10を調査した!

■ラブソング判定が難しい曲も まず、400曲分の歌詞をひとつひとつ確認してラブソングかどうかの判定をする作業が必要となる。そもそもラブソングかどうかの判別は、個人の主観によるところが大きいもの。

今回は、明確に恋愛を主題としている歌を「〇」、そうでない歌を「×」として判定するとともに、「ラブソングとは断定できないが、ラブソングとしても鑑賞できる曲」を広義のラブソングとし、「△」として判定した。



△の一例として、華原朋美の 『I'm proud』 (1996年)が挙げられる。歌詞の中にははっきりと「好き」や「キス」など恋愛要素を含んだ言葉が出てこないが、全体を通してみると、ラブソングとも取れる。

逆に、一部に恋愛要素を含んだフレーズがあるが、全体で見ると恋愛とは異なるテーマを歌った曲もある。例えば、Mr.Childrenの 『HANABI』 (2008年)には恋愛的なフレーズがいくつかあるが、全体的には世界への憂いを歌っているように感じた。

歌詞の確認もそうだが、最初に苦労したことが、どの音楽チャートランキングを採用すべきなのかということ。

CDの売り上げがメインだった時代から、「着うた」などの配信曲、ストリーミングサービスと移行してきた中、その過渡期を定めることは、なかなか難しい。

最初はオリコンCDランキングを参照してみたが、2010年前後はTOP10に嵐やAKB48ばかりがランクインしているなど、当時のほかのランキングとの乖離が大きかったのだ。

そうした経緯から、今回は1985年から2007年までをオリコンCDランキング、08年から24年までをビルボードが発表しているHot100を参照することにした。ちなみに今回のルールとして、リリースから3年以内であれば、年をまたいでランクインしている楽曲でも、そのままカウントしている。

■アイドルが恋愛を歌わなくなった? まずは80年代のランキングから見ていこう。全体的にラブソングが多い印象で、特に1985年のランキングはTOP10すべてが広義のラブソングだった。

90年代に移ると、ラブソングっぽい雰囲気を感じつつも、同性の友達に語りかけているような雰囲気の歌詞の楽曲がいくつかあって、こちらも判定に迷うものが多かった。

具体的な歌詞として、95年のスピッツ 『ロビンソン』 は、特に曖昧な表現が多い。〝誰も触(さ)われない二人だけの国君の手を離さぬように(作詞・作曲:草野正宗)〟という歌詞が出てくるが、これは恋人に対してのメッセージとは断定できず、△とした。

またかつては、アイドルグループのラブソングが大ヒットすることが多かった。2000年のSMAP 『らいおんハート』 、モーニング娘。 『恋愛レボリューション21』 、07年の嵐 『Love so sweet』 、10年のAKB48 『ヘビーローテーション』 などなど、枚挙にいとまがない。

一方、近年はあまりラブソングを歌わないアイドルグループも増えてきている。17年の8位にランクインしている 『サイレントマジョリティー』 は理不尽な社会に対する反抗ソングになっており、この曲を歌った欅坂46(現・櫻坂46)にラブソングのイメージはほぼない。

また、2020年に同時デビューしたSnow ManとSixTONES(ストーンズ)も、恋愛要素が入っていないヒット曲が多い。



■「テレビ離れ」は関係ない 各年代の〇と△を「ラブソング比率」とし、推移を図表①に示した。見ていくと、85年は10曲中10曲すべてが広義のラブソングなので100%、95年が10曲中6曲で60%、05年が40%、15年も40%と減少傾向。23、24年には瞬間的に70%に上昇しているが、大きな傾向としてはラブソングは減りつつあるようだ!

この結果について、音楽ジャーナリスト・柴那典氏に話を聞いてみた。柴氏は、ラブソングが減っているか、減っていないかという単純な構図で語るのは難しいとした上で、次のように語る。

「近年の特徴として、アニソンが上位にランクインするようになったということが挙げられますが、現代においては、『週刊少年ジャンプ』などの少年漫画を原作としたアニメの主題歌がヒットする傾向にあります。

一方、恋愛アニメのヒットは少ない。このことから、ラブソングがこれまでより少なくなったように感じるのかもしれません」

つまり、ヒットするアニメが恋愛をテーマとしていないのが一番の要因だということだ。そもそも、ヒットするラブソングはどのように生まれるのか?

「高視聴率を獲得した恋愛ドラマのテーマソングがヒットするという傾向は、90年代から今に至るまで続いていますね。

現代ではドラマの存在感が薄れたように感じるかもしれませんが、例えば23年のランキングで2位となっているOfficial髭男dismの 『Subtitle』 は、川口春奈主演の恋愛ドラマ『silent』の主題歌としてはやりました」

若者のテレビ離れともいわれるが、柴氏によれば、TVerの普及やNetflixなどの動画配信サービスの台頭によって、依然としてテレビドラマの影響は音楽チャートに影響を与えているらしい。

■カギは最新のメディア そしてもうひとつ、ラブソングがヒットするカギとなるのが、その時代で若者に流行している"最新のメディア"なんだそう。

「そもそもラブソングを聴く層というのは、甘酸っぱい青春の恋愛を経験する10代や、さまざまな出会いや別れを経験する20代の若者です。そんな若者たちの間で流行しているメディアからラブソングがヒットするという流れは、実は昔から変わっていません。

現代ではTikTokが流行していますが、24年の2位にランクインしているtuki.の『 晩餐歌 (ばんさんか)』は、まさにこの法則によってヒットしたラブソングです」



時代をさかのぼっても同じことが言えるようだ。

「90年代から通信カラオケが流行し、00年代に入ると、着うたが流行しました。"着うたの女王"ともいわれている西野カナは、時代を象徴するラブソングを数多く生み出してきました。

00年代はケータイ小説を原作としたドラマや映画が多数ヒットした時代でもあり、その主題歌を担当したHYらのアーティストが売れています」

さらに10年代からは、YouTubeの影響が大きいんだとか。

「MV(ミュージックビデオ)がドラマ仕立てになっていて、ひとつの恋愛ドラマを描くようなものも増えてきました。

例えばこの時代では、back numberが象徴的なアーティストだと思います。MVでは女性主人公のラブストーリーを描きつつ、男性歌手が女性の気持ちを語るというスタイルは、後続の優里にも受け継がれていますね。

10年代後半からはストリーミングサービスが台頭し、あいみょんや優里といったラブソングを得意とする代表的な歌手が登場してきました」

■ラブソングの中身も変化している では、ラブソングの質に変化はあるだろうか?

「昭和の歌謡曲の時代は、基本的に作詞家が書いた曲を、歌手やアイドルたちが歌う形式がほとんどでしたので、若い世代の当事者目線というよりかは、不倫や浮気などの"大人の恋愛"を描いた歌詞も多かったんです。

しかし平成に入ると、自らが作詞し、若者世代の等身大の気持ちを代弁するバンドやシンガー・ソングライターが増えてきました。自分で歌詞を書いているかどうかが、歌謡曲とJ-POPのラブソングの違いを生んだと言えるでしょう」

また、歌詞そのものの変化もみられるようだ。

「恋愛の多様性を反映した曲が増えており、それも昭和歌謡とは質的に違いますね。例えば星野源の 『恋』 (2016年)は異性愛だけでなく、同性愛や2次元への恋にも読めるように作詞されたとインタビューで語られています」

昔の曲がよりストレートに恋愛を歌っていると感じる原因は、こうした作詞法の変化にあるのかもしれない。

ここで結論!

「ラブソングが減っている」という仮説は一部当たってはいたが、だからといって必ずしもラブソングがヒットしなくなっているワケではないようだ。もちろん、恋愛離れやテレビ離れが原因ではない。いつの時代もラブソングは若者に求められており、少しずつ形を変えながら受容されているのだった!

【1985~2024年のヒット曲とラブソング判定・全データ】

1985~2007年まではオリコンCDランキングを、08~24年はBillboard Japan Hot100を参照。該当年の直近3年以内にリリースされた曲をトップ10とし、洋楽やK-POPは除外した

(外部配信先でご覧の方は、関連リンクよりご確認ください)













取材・文/瑠璃光丸凪 (A4studio)

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