2025年冬ドラマ「最終回視聴率ランキング」BEST10。松坂桃李主演の『御上先生』、初回からラストまで高視聴率を続けた理由

番組公式HPより

2025年冬ドラマ「最終回視聴率ランキング」BEST10。松坂桃李主演の『御上先生』、初回からラストまで高視聴率を続けた理由

4月3日(木) 6:53

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1月に始まった冬ドラマが放送中の1本を除いて終了した。最終回の個人視聴率のベスト10を見てみたい。

最終回の個人視聴率にはそのドラマの人気度が表れやすい。前評判が高く、初回で高視聴率を得ようが、その後に視聴者を惹きつけられないと、徐々に数字が落ちる。もちろん逆もある。放送開始後に評判になると、右肩上がりで数字が伸びる。

視聴率と質。だが、質は序列化が難しい。個人によって好みや評価基準は異なるからだ。何人見たかを客観的に表す視聴率は公平な尺度とも言える。

ベスト10はプライムタイム(午後7~同11時)の冬ドラマを対象とした。フジテレビ系『秘密~THE TOP SECRET~』は放送中なので除外した。テレビ朝日系『相棒 season23』は昨年10月にスタートしたものの、組み入れた。

ビデオリサーチ調べの関東地区の個人視聴率を基にする。その1%は約39.9万人。全国単位に換算すると、推計約116.1万人となる。2020年4月以降はテレビ局もスポンサー側も使っていない世帯視聴率もなじみがあるので付記する。

教育とミステリーを融合した『御上先生』

➀TBS系『御上先生』(日曜午後9時)3月23日放送。全10回。個人7.3%、世帯11.8%
➁テレビ朝日系『相棒 season23』(水曜午後9時)3月12日放送。全19回。個人6.3%、世帯10.8%
③フジテレビ系『119エマージェンシーコール』(月曜9時)3月31日放送。全11回。個人4.9%、世帯8.0%


御上先生 』は教育をテーマとする学園ドラマ。初回から最後まで高視聴率を続けた。

このジャンルは若者たちを取り巻く諸問題を現実的に描くと、地味になってしまいがち。だが、超進学校の不正入学に関するミステリーを融合させたことにより、スリリングな物語に仕上がった。

主人公は御上孝( 松坂桃李 )。文部科学省のエリート官僚だが、私立隣徳学院高に派遣され、3年2組の担任教師となる。一方で文科省と政界が絡む不正入学を赴任直後から秘かに調べる。一方で教師であることも忘れず、生徒たちに担当科目・数学を教え、さらに生きる姿勢を生徒たちに説いた。

まず自分で考えることの重みを言い添えた。そのうえで自死、教科書検定、生理の貧困などについての答えを探させた。ドラマ側が選んだこれらの論点が新鮮だった。

最終回では父親が自分を不正入学させていた生徒・千木良遥( 高石あかり )が自主退学する。御上の教えのとおり、自らが考えて下した結論だった。コア視聴率(13~49歳の個人視聴率)は平均的。

相棒 』もずっと高視聴率を続けた。テレビ界では一般的に個人視聴率が6%を超えるとヒット作と捉えられる。

主人公はおなじみの杉下右京( 水谷豊 )。水谷が右京を演じ始めてから25年になった。相棒は初代でもコンビを組んでいた5代目の亀山薫( 寺脇康文 )。2人の組み合わせは計10シーズン目だった。最終回では政治と裏社会のつながりの結託から派生した事件が描かれた。刑事ドラマは年齢の高い視聴者に好まれるため、コア視聴率は低め。

ドラマで描かれにくい管制員たちの日常

119 』は横浜市消防局の通信指令センターが舞台。指令管制員の粕原雪( 清野菜名 )を主人公とし、119番通報してくる人たちを声と想像力で救う管制員たちの日々が描かれた。

最終回ではショッピングモール内などに仕掛けられた塩素ガスの噴出や水難事故などが重なり、消防局が対応できる範囲を超えてしまった。だが、雪ら管制員の要請に応じてくれた市民たちが救助や救命に協力してくれる。

通信指令センターを追ったドキュメンタリー番組もあるが、管制員たちの細かな心理状態や本音はドラマでないと伝わりにくい。コア視聴率は平均的。

4位~6位医師になる目的が希薄だったまどかの最終回は?

④TBS系『クジャクのダンス、誰が見た?』(金曜午後10時)3月28日放送。全10回。個人4.0%、世帯7.0%
⑤テレビ朝日系『プライベートバンカー』(木曜午後9時)3月6日放送。全10回。個人3.9%、世帯6.9%
➅TBS系『まどか26歳、研修医やってます!』(火曜午後10時)3月18日放送。全10回。個人3.2%、世帯5.8%


クジャクのダンス、誰が見た? 』の主人公は大学生・山下心麦(広瀬すず)。その父親で元警察官・山下春生( リリー・フランキー )が初回で殺される。春生は23年前に一家6人が殺された東賀山事件を調べ直していた。

小麦は春生が遺した手紙の文面に従い、弁護士・松風義輝( 松山ケンイチ )と一緒に2つの事件の真相を追う。やがて週刊誌記者・神井孝( 磯村勇斗 )も合流した。回を追うごとに事件の内実が見えてくる構成が巧みで見る側を惹き付けた。一方で徐々に浮き彫りになったメインテーマは「親子とは何か」だった。

小麦と春生、松風と生き別れていた元警察官の父親・久世正勝( 篠井英介 )、無実なのに春生殺害の疑いで逮捕された遠藤友哉( 成田凌 )と同じく無実ながら東加山事件で死刑囚となった父親・力郎( 酒向芳 )、春生殺害事件の担当検事・阿南由紀( 瀧内公美 )と力郎を死刑にした元担当検事で弁護士の父親・鳴川徹( 間宮啓行 )。真実の親子愛と歪んだ親子愛があった。第9回と最終回で事件の全容が分かる。コア視聴率は平均的。

プライベートバンカー 』は敏腕プライベートバンカーの庵野甲一( 唐沢寿明 )が主人公。この仕事は富裕層の資産管理者で実在する。庵野が天宮寺丈洋(橋爪功)の依頼を引き受けたところから物語は始まった。

丈洋は大手外食業の社長で資産が7000億円もある。その独占を目論む家族8人の仲は異様に悪かった。庵野はそんな家族を関係修復に導き、資産もひとまず守ったように見えた。

最終回、庵野は助手の飯田久美子が営む団子屋の常連客・京極( 五頭岳夫 )に、丈洋の会社と団子屋を売り渡してしまう。ずっと誠実に見えて庵野の正体が最後になって分からなくなる。コア視聴率は低め。

まどか26歳、研修医やってます! 』は医師1年目の主人公・若月まどか( 芳根京子 )の物語。働き方改革で変わりつつある医療現場をポップに描きつつ、一定のリアリティーも保った。

まどかは周囲におだてられて医学部に入学。医師になるという目的意識が薄かった。それが2年間の研修医生活で成長してゆく。

最終回では研修医たちを温かく見守ってきた診察部長の角田茂司( 奥田瑛二 )が膵臓がんと診断される。まどかや若手医師は治療に挑む。TBSの火曜午後10時台のドラマはラブストーリーが目立つが、今回は恋愛要素が薄め。それも理由なのかコアは低め。

7位~10位日曜10時半スタートにしては視聴率高めのバカリズム脚本

➆テレビ東京『法廷のドラゴン』(金曜午後9時)3月7日放送。全8回。個人3.2%、世帯5.5%
⑧テレビ朝日『家政婦のミタゾノ』(火曜午後9時)3月11日放送。全9回。個人3.1%、世帯5.3%
⑨日本テレビ『ホットスポット』(日曜10時30分)3月16日放送。全10回。個人3.0%、世帯5.6%
⑩フジテレビ『問題物件』(水曜午後10時)3月26日放送。全11回。個人2.8%、世帯5.1%


法廷のドラゴン 』は主人公・天童竜美( 上白石萌音 )と彼女を取り巻く人々の物語。

竜美は日本将棋連盟の奨励会に所属していたが、プロ棋士の道を望まず、弁護士になった。ただし法廷戦術は将棋の戦法を使った。最終回では元弁護士の衆議院議員と法廷で対決。コア視聴率は低い。

家政婦のミタゾノ 』は2016年に深夜枠で放送が始まり、今回は第7シーズン。主人公の女装する家政婦・三田園薫( 松岡昌宏 )は派遣先の家にある隠し事を暴き、家族を崩壊させる。しかし、やがて再生させる。最終回では隠し事をしないことを公約する都知事選候補者宅に派遣される。コア視聴率は低い。

ホットスポット 』の主人公は富士山麓にあるビジネスホテルに勤務する遠藤清美( 市川実日子 )。ある日、同僚・高橋孝介( 角田晃広 )に人間離れした身体的能力があることを知る。

高橋は宇宙人と人間のハーフだった。これを清美が幼なじみ2人にバラしたことから、高橋がいいように使われる。最終回では高橋と清美たちが悪徳市長をやっつける。個人視聴率もコアもこの放送時間帯にしては高い。

問題物件 』の主人公は謎の不動産調査員・犬頭光太郎( 上川隆也 )大島不動産販売の販売特別室に勤務する若宮恵美子( 内田理央 )が心霊物件などを前に頭を抱えていると、いつの間にか現れ、その物件の真実を暴く。

最終回で犬頭は販売特別室長で車椅子生活を送る大島雅弘( 宮世琉弥 )が過去に保護し、育てた犬の生まれ変わりと分かる。今は犬太として雅弘に飼われているが、雅弘の部下・恵美子が困ると放っておけず、人間・犬頭に姿を変えた。犬頭は犬太だと分かっていたが、感動的なラストだった。コアは低い。<文/高堀冬彦>

【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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