【世界フィギュア男子】鍵山優真はイリア・マリニンに大差の敗北五輪へ向け求められる「無敵の人」の隙をつく準備

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【世界フィギュア男子】鍵山優真はイリア・マリニンに大差の敗北五輪へ向け求められる「無敵の人」の隙をつく準備

3月31日(月) 22:00

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世界フィギュア2025・男子シングル レビュー

イリア・マリニン(アメリカ)の連覇で終わったフィギュアスケートの世界選手権男子。

マリニンにどこまで食らいつけるかと注目されていた鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大学)は、演技が終わるとガックリとした表情で、笑みも浮かべずにリンクから去っていった。そのあと自分の得点と順位を確認し、3位に入ったことがわかると、やっと安堵の表情を見せた。

アメリカ・ボストンで開催された世界選手権で3位に入った鍵山優真 photo by Getty Images

アメリカ・ボストンで開催された世界選手権で3位に入った鍵山優真 photo by Getty Images





そんな鍵山は大会前にはこう話していた。

「目標は、もちろんいい結果を狙いたいというのもあるけど、まずは自分自身がショートプログラムとフリースケーティングをしっかりとそろえることを一番大事にしたいです。結果を一番に考えているということはないので、全力で滑りきった結果は、何位であったとしても素直に受け止めたいなと思います」

【今季自己ベストで上々の滑り出し】鍵山は、ショートプログラム(SP)で曲を少し変更して臨んだ。後半のステップシークエンス以降の部分に、ギターやドラムの音を追加して力強さを出した。これは振り付けのローリー・ニコル氏から提案されての変更だった。

3月27日(ボストン現地時間)のSP。最終滑走の鍵山は、マリニンがノーミスで自己ベストの110.41点を出したあとの演技だった。

決意を固めたような表情でスピードに乗って滑り出すと、最初の4回転トーループ+3回転トーループは3.80点の加点にする。次の4回転サルコウは軸がやや流れながらもきっちり決めた。

そして曲を変更したステップシークエンスは、ジャッジ5人がGOE(出来ばえ点)加点5を出す出来でノーミスの滑り。納得の力強いガッツポーズを繰り返した演技は、シーズン自己ベストの107.09点。演技構成点についてはマリニンを0.86点上回った。

「(演技の)前半と後半の強弱のメリハリがしっかりとついて、ステップの力強さもより明確に出せたと思う。今までの曲だとノーミスでも自己ベストやシーズンベスト更新はなかなかできなかったけれど、より力強さが加わることによって演技構成点にもしっかりと影響し、久しぶりにシーズンベストを更新できたのでよかったです」

今季のSPでは、隙のない滑りをするマリニンに次ぐ2位発進ながら、鍵山は僅差で競り合うことができていると、納得する表情だった。

そのあとの記者会見で、マリニンのすごいと思うところを聞かれ、鍵山は「イリア選手は以前から、本人は簡単に跳んでいるかどうかわからないけれど、見ている側としては難しい4回転ジャンプを簡単に跳んでいるので本当にすごいと思います。スケーティングや表現の部分も年々すごく強化されてきているので、僕としては"無敵の人"というイメージです」と話した。

【悔しさを受け止めて五輪シーズンへ】2日後のフリーは、状況が一転した。

少し硬さもまとう滑りだった鍵山。最初の4回転フリップが2回転になるミスになったことで「そのあとも焦ってしまった」と、2本目の4回転サルコウはステップアウトし、次の4回転トーループ+3回転トーループは最初のジャンプが少し流れるような着氷になり、セカンドは2回転になった。

そこから立て直したように見えたが、チェンジフットシットスピンのあとのつなぎでブレードが氷に引っかかったのか、少しよろけた。そして、後半最初の4回転トーループは着氷が止まる形で転倒という結果。最後の3回転フリップ+3回転ループも、フリップの着氷が乱れて1回転トーループを付けるだけになるミスもあった。

ステップやコレオシークエンス、スピンでGOE加点は稼いだが、フリーは10位の171.10点にとどまった。

SPの貯金もあり、合計は278.19点で4位に2.71点差の3位。318.56点のマリニンには40点もの大差。鍵山は、「今日の演技が表彰台にふさわしいかどうか疑問も感じる。この悔しさや3位という結果を素直に受け止めて、五輪シーズンに向けてイチから頑張りたいです」と話した。

そんな鍵山のキス・アンド・クライでの安堵の理由は、6位の佐藤駿(エームサービス/明治大学)とともに、2026年の五輪出場3枠を確保したことだった。

【超高難度に挑む王者の隙をつけるか】今回もGPファイナルと全米選手権に続き、フリーで4回転7本の構成として、2位に31.09点差をつけて圧勝したマリニンが実力は抜け出ている状況。だが、マリニンもまだこの構成を完璧にしているわけではない。

GPファイナルではすべての4回転が「q」マークを含む回転不足の判定で、ミスをしたフリーは鍵山の得点を下回っていた。今回もアクセルとトーループが「q」判定で、2本目のルッツは2回転に。今回のフリーの208.15点は、鍵山が2022年北京五輪団体戦で出した208.94点とほぼ同等だった。

4回転を6本にした2024年の世界選手権では、世界歴代2位の合計333.76点を出しているマリニンだが、4回転7本の構成については「自分に課した挑戦。自分にとってかなり難しい挑戦だが、オフシーズンにできるだけ確率を上げられるように努めて、五輪ではほかのプログラム要素も一緒に、楽々と完了できるようにしたいと思っています」と意欲的だ。

マリニンは来季さらに完成度を上げてくる可能性が高いが、高難度であればあるほどその時の体調や精神状態などが成功の可否に大きく影響し、隙も生まれるものだ。だからこそ鍵山は、相手にミスが出た時に接戦に持ち込める万全な準備をしておかなければいけない。

そのためにも今回果たせなかった「SPとフリーをそろえたい」という目標を、リラックスした気持ちで臨めるであろう4月の世界国別対抗戦で実現し、マリニンに対して存在感を大きくしておくことは必須だ。

SPへの自信は今回でほぼ手中にしただけに、フリーは今季挑戦した4回転ルッツの導入なども含め、鍵山らしさを存分に発揮できるプログラムとして完成させることが最大の目標になる。それができれば、まだまだ戦うことはできるはずだ。

【日本勢のレベルアップに期待】また今大会6位に終わった佐藤も初出場に加え、五輪出場枠がかかる状況のなか、プレッシャーに襲われる演技になった。SPは4回転+3回転の連続ジャンプが、4回転と2回転になり、後半のスピンとステップのレベルも取りこぼして91.26点にとどまった。

だが、フリーでは4回転トーループと4回転フリップのエッジエラーはあったものの、きれいで流れのある正確なジャンプを見せていた。

「緊張を通り越して怖さも感じるようななかで納得できるフリーの演技ができたのは、自分にとってすごくうれしいことだし、成長を実感できました」と、佐藤は話した。

まだスピンやステップの取りこぼしもあり、ジャンプなどのGOE加点を増やしていく課題はあるが、克服してくれば演技構成点も上がってくる。合計300点台に限りなく近づける力はあるだけに、今季は一気に飛躍した今回2位のミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)や、昨季世界選手権3位のアダム・シャオイムファ(フランス)らとの表彰台争いを佐藤にも期待したい。

今季の世界選手権もマリニンの強さを見せつけられる戦いになったが、日本勢の可能性も垣間見える大会だったといえるだろう。

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