鈴木優のLAリポートVol.1
かつてオリックス、巨人でプレーした鈴木優氏が、現在拠点とするロサンゼルスからドジャースの試合を中心にリポート。スタジアムの熱気、躍動する選手たちなど、メジャーリーグならではの雰囲気を定期的にお届けします!
試合前にタイガースのケーシー・マイズ(中央)と話し込む山本由伸(左)photo by Suzuki Yu
【メジャー2年目の貫禄】デトロイト・タイガースとの本拠地開幕3連戦は、ドジャースが3連勝を飾り、東京シリーズからの連勝を5に伸ばしました。
そんななか、私が注目したのはホーム開幕2戦目。昨年、ドジャースのワールドシリーズ制覇に貢献した山本由伸(ドジャース)とジャック・フレアティ(タイガース)が投げ合うことになりました。個人的には、このふたりの投げ合いは、ホーム開幕戦よりも注目していました。
山本投手はメジャー1年目の昨年、肩の故障により一時離脱しましたが、シーズン終盤に復帰。ポストシーズンでは「人生で一番緊張した」というサンディエゴ・パドレスとの地区シリーズ第5戦の登板や、ニューヨーク・ヤンキースとのワールドシリーズの先発といった大舞台を経験し、投手としてさらに進化。
本人も「今年は順調にいいキャンプを過ごせました」と話したように、万全の状態でメジャー2年目のシーズンに入りました。
私の目から見ても、今年は昨年よりも落ち着きが感じられ、その姿からは貫禄すら感じます。
事実、ホーム開幕戦の試合前にはこんなことがありました。試合前練習で山本選手がタイガースに所属する前田健太選手にあいさつ行くと、背番号12のケーシー・マイズ投手がやって来ました。
通訳を介して何やら会話をしていたので、何を話していたのか山本選手に尋ねると、フォークの投げ方を聞かれたそうです。日本だけでなく、メジャーの選手からも注目される存在になったのだなと、あらためて感じました。
ワールドシリーズ制覇を記念してつくられたチャンピオンリングphoto by Suzuki Yu
また、この日は昨季のワールドシリーズ制覇を祝うリングセレモニー(チャンピオンリング贈呈式)がありました。ドジャースナインが名前を呼ばれ、次々にリングをもらっているシーンを、この日先発のフレアティ投手が静かに外野で座って眺めていました。フレアティ投手も、そこにいたかったんだろうなという思いが伝わってきました。(翌日の試合前、フレアティ投手にもリング贈呈式が行なわれた)
【緊張感ある投手戦】試合は、初回に山本投手がランナーを背負うも、しっかり0点で抑える無難な立ち上がりを見せました。一方、ドジャース打線の怖さを誰よりも知っているフレアティ投手は、いきなり先頭打者の大谷翔平選手にストレートのフォアボールを与えてしまいます。しかし、つづくムーキー・ベッツ選手を併殺に仕留めるなど無失点。
山本投手は5回までに2本のホームランを許しますが、10三振を奪うなど"さすが"のピッチングを披露。フレアティ投手も6回にフレディ・フリーマン選手に同点2ランを浴びましたが、"らしさ"を全面に出した投球で試合をつくりました。
内容的には山本投手のほうがよかったですが、ともに2失点ということで、今回は引き分けというところでしょうか。
さすが、チームをワールドシリーズ制覇へと導いた投手同士の投げ合いとあって、ポストシーズンのような締まった試合で、とても緊張感がありました。
結局、試合は延長10回の末、ベッツ選手のサヨナラホームランでドジャースが勝利しました。
試合後、記者の質問に答える山本由伸photo by Suzuki Yu
試合後、山本投手に話を聞くと、こう語っていました。
「フレアティと投げ合うことができたのは特別なことだし、そんな試合に投げられてよかったと思う。先制点は与えたくなかったが、与えてしまったあともなんとか粘れたと思う。そこはよかった」
ただピッチングには全然満足していないようで、「まだまだですね」と早くも次の登板に向けて気持ちを切り替えていました。
今日の山本投手のピッチングを見て、まだまだ改善できるところはあると思いますが、しっかり組み立てできていましたし、これだけ三振を奪えたのは大きな自信になったはずです。この日の山本投手のピッチングを見て、本気でサイ・ヤング賞を狙ってほしいと思いました。
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