第18回トロント国際女性映画祭で最優秀初監督賞を受賞した「骨なし灯籠」が、5月16日~29日に恵比寿ガーデンシネマ、6月3日~22日(※月曜は休館)に東京都写真美術館ホールで、字幕付きで公開されることが決定した。併せてポスタービジュアルと予告編がお披露目された。
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【画像】「骨なし灯篭」フォトギャラリー本作は、2024年3月に映画の舞台となる熊本のミニシアター「Denkikan」で先行上映がスタートしたが、口コミが広がり21週公開という異例のロングランに。その後、神戸、名古屋で公開されたほか、第18回トロント国際女性映画祭や第5回チネチッタ国際映画祭など海外の映画祭でも評価された本作の東京公開が実現した。なお、恵比寿ガーデンプレイス内の2館で約1カ月に渡って上映されるのは前例がなく、異例の興行となりそうだ。
ポスターを手掛けたのは、映画の舞台である熊本県出身で「キングダム」「ラストマイル」のポスターも担当したデザイナーの吉良進太郎。凛とした亡き妻の横顔に、映画を彩る風景が潜むデザインで、何かに気づいたような表情をみせる夫の姿が重ねられている。別名、骨なし灯籠と呼ばれる山鹿灯籠をモチーフにした幻想的なイメージに、本作を象徴するという「また明日!」というコピーが添えられている。
予告編は「大切な人を亡くしたあなたへ」というテロップから始まる。そして政治学者で熊本県立劇場の館長を務める姜尚中氏の「生と死という重いテーマが、これほど深く、そして清々しく描かれている映画は稀ではないか」というメッセージが続く。また、映画を観た観客の「夫婦ともに涙なしでは観れませんでした」「ラストシーンのセリフに『ああ、これは亡き夫が私に言ってくれたのだ』と思い、涙がとめどなく溢れてきました」という声が紹介されている。
監督・脚本を手掛けたのは、かつて倉本聰が主宰した脚本家と俳優養成の私塾「富良野塾」出身の木庭撫子(こばなでしこ)。現在も放送作家として「おかあさんといっしょ」や「箱根駅伝」の構成やナレーション台本を担当する木庭が、元テレビマンで本作のプロデューサーを務めた夫と二人三脚で資金集めから奔走し、オール山鹿ロケで作りあげた。なお、本作は木庭の監督デビュー作となる。
【あらすじ】
亡き妻の骨壺を抱え、死に場所を探し、彷徨う男がいた。男は、元美術教師の市井祐介(水津聡)。古き時代の佇まいを残す、熊本豊前街道の温泉町「山鹿(やまが)」で、祐介は、祭りのポスターに描かれた「灯籠娘」に、妻・ゆかり(まひろ玲希)の面影を見る。祐介は、灯籠師見習い・直樹に誘われるまま働き始め、一年が経ち、妻の三回忌を迎えても、深い喪失と孤独は拭えない。町を出ようと決めた祭りの日。突然、ゆかりの双子の妹だという、あかりが現れる。「あなたにお願いがあって」千人灯籠を踊るために、スペインからやってきたというあかり。彼女の目的とは……。
東京公開を受け寄せられたキャストと監督のコメントは以下のとおり。
■水津聡(すいつさとし)
昨年の春、熊本で。なんの後ろ盾もなく封切られたこの映画は、観た人が、知人を誘って再び観に来てくれて、また観た人が人を呼んで…というふうに、人から人へとつながった結果、夏まで延長上映が続きました。もしかしたら想像以上に、この映画を必要としている人が、いるのかもしれません。それはここ東京でも(またこれから展開してゆくだろう地方でも)。だったら一人でも多くの人に届きますようにと、願ってやみません。
■まひろ玲希(まひろたまき)
熊本での舞台挨拶の初日、一番前に座っていらした女性が嗚咽をこらえながら涙を流していました。思いが伝わり、私も会場を後にするまで涙が止まりませんでした。後日、一緒に泣いてくれてありがとうと頂いたお手紙には、「最後のセリフは主人が私に言ってくれたんだと感じました。映画館を出たとき、少し心が軽くなりました」と。大切な人を亡くされた方の心が少しでも軽くなり、優しく背中を押すことができるなら私たちも嬉しいです。
■木庭撫子監督
プロデューサーである夫は、24年前に最愛の前妻を亡くしました。時を経ても哀しみは残ることを知るわたしたちが、遺された者の「生」を見つめた映画です。舞台となった山鹿(やまが)に住む人々や生きものだけでなく、路傍の小さな花や、風鈴を鳴らす風も「生きて」います。周りを見渡せば、そこにある「いのち」の美しさ、優しさを、この作品を通して感じてもらえたら・・・東京の空も、違う色に見えるはず。あなたの心に、「骨なし灯籠」の灯りがともることを願っています。
【作品情報】
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