シネマ歌舞伎『野田版 鼠小僧』上映会より、中村鶴松
3月31日(月) 2:00
シネマ歌舞伎20周年を記念して、《月イチ歌舞伎》2025シーズンの第1弾となる『野田版 鼠小僧』(2005年劇場公開)が3月28日、東京・東銀座の東劇で上映され、本作に出演している歌舞伎役者の中村鶴松が舞台挨拶に立った。
『野田版 鼠小僧』は、野田秀樹と十八世中村勘三郎(当時 五代目中村勘九郎)のタッグで2003年8月に歌舞伎座で上演され大ヒットした舞台。後に松竹創業110年と十八代目中村勘三郎襲名を記念し映像化され、「シネマ歌舞伎」シリーズの第1弾として劇場公開された。
ずる賢く金にがめつい棺桶屋の三太(勘三郎)が、兄の遺産を横取りしようとするうちに鼠小僧と呼ばれるようになっていく……という物語。当時8歳だった鶴松は、三太を改心させるきっかけとなる重要な役どころ・孫さん太役を勤めており、この日の舞台挨拶では「今月30歳になったおじ“さん太”です」とジョークで笑いを誘った。
この共演がきっかけで、勘三郎に誘われ中村屋の部屋子になり、歌舞伎俳優としての道を歩み始めた鶴松は「あのとき、『鼠小僧』という演目がなかったら、今、歌舞伎役者としてここに立っていない。文字通り、人生のターニングポイントですし、部屋子になるということは、人生で一番大きな決断でした」と振り返る。また、「オーディションは、野田さんの太ももを思いきり蹴るという内容で(笑)。それだけが記憶に残っている」と当時の様子を語った。
当時は、本名の清水大希として舞台にあがり「いち子役が歌舞伎座に駆けつけた2000人のお客様の前で、中心になってカーテンコールに出るというのは、あり得ないこと。勘三郎さんだから、それをやってくださった」と感謝。また、「公演中、1日だけ朝の挨拶をし忘れてしまった日があった」といい、「本番が終わって、舞台袖でおわびをしたら、『そんなのはどうでもいいんだよ。芝居がいいんだから』と言ってくださった」と勘三郎からの忘れられない言葉を明かしていた。
『野田版 鼠小僧』では、現在の勘九郎と七之助とも共演し「今でも『お前は鼠小僧のときが、一番良かった』ってしょっちゅう言われます。冗談でしょうけど(笑)、それだけ、勘九郎と七之助のお兄さんの中でも、記憶に残るものだったんじゃないかなと思いますね」。改めて、勘三郎の存在について問われると、「何でも一生懸命にやるということを、背中で見せてくれた。その熱心な姿に、お客様も惹かれると思いますし、常に全力でやることが必要だと思う」と背筋を伸ばした。
冒頭の挨拶で語った通り、今月15日に30歳の誕生日を迎えたばかり。「やりたいこと、やりたい役もたくさんありまして、長年の憧れを実現させようとしているところ。今年は、またひとつ挑戦させていただく演目がありますので、(発表を)お待ちいただければ」とさらなる飛躍を誓った。
取材・文:内田涼
<作品情報>
シネマ歌舞伎第一作『野田版 鼠小僧』
シネマ歌舞伎『野田版 鼠小僧』予告編
2025年4月4日(金)~10日(木) 全国34館で上映 ※東劇のみ延長あり
■出演
中村勘三郎、中村福助、中村芝翫、片岡孝太郎、中村勘九郎、中村七之助、坂東新悟、中村獅童、坂東彌十郎、坂東吉弥、中村扇雀、坂東三津五郎