3月31日(月) 1:30
退職金制度は、多くの企業で導入されていますが、その割合は減少傾向にあります。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度を導入している企業の割合は約74.9%です。特に、大企業ほど退職給付制度を設けている傾向があり、従業員1000人以上の企業では90.1%、100人未満の中小企業では70.1%となっています。一方、退職金制度を廃止する企業も増えており、特にスタートアップ企業やIT業界の新興企業では、退職金よりも給与やストックオプション(新株予約権)を重視するケースが見られます。長年勤続することが前提の退職金制度よりも、短期間での成果に報いる形へとシフトしているといえるでしょう。
退職金の金額は、学歴や勤続年数、企業規模によって大きく異なります。厚生労働省の同調査によると、学歴別に管理・事務・技術職、現業職が勤続35年以上した場合は以下の通りです。
大学・大学院卒:平均2037万円
高校卒(管理・事務・技術職):平均1909万円
高校卒(現業職):平均1471万円
なお、退職給付制度には退職時に受け取る「一時金」以外に、「確定給付企業年金(DB)」「確定拠出年金(DC)」「中小企業退職金共済(中退共)」などの「年金」も含まれており、運用の仕組みや受け取り方は運営者によって異なります。
転職を繰り返していることが退職金取得自体に影響を及ぼすことはありません。勤務する企業に退職金制度があることが条件です。
ただし、転職を繰り返すと、退職金の受給額は大きく変わります。企業によっては「勤続●年以上の社員に退職金を支給する」といったルールがあり、頻繁な転職によってこの基準を満たせない場合があります。
また、確定給付企業年金(DB)は「給付額」が確定していて企業が運用機関に委託しますが、確定拠出年金(DC)は会社が拠出する「掛金」が確定していて従業員自身で運用します。いずれも移換または現金化ができるため、転職の影響を受けにくいというメリットがあります。
また、退職金の計算において退職時の給与額が計算の基礎になることがあるため、転職を繰り返して給与が大幅に上がる場合は結果的に退職金が増えるケースもあります。ただし、転職先に積み立て式の退職給付金制度しかない場合は、転職後の期間が短いと退職金の額が少なくなるため、退職後の資金計画が必要です。
退職金には、税制上の優遇措置があり、「退職所得控除」という制度が適用されます。これにより、一定額までは非課税となります。
退職所得控除額の計算方法
勤続20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
勤続20年超過:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
例えば、勤続30年の場合、退職所得控除額は 1500万円(800万円+70万円×10年)となり、退職金のうちこの金額までは税金がかかりません。
また、退職金の税金は「退職所得控除後の金額を2分の1にした額」に対して課税されるため、他の給与所得に比べて大幅に軽減される仕組みになっています。
「退職金が1000万円を超えるには、年収がいくら必要か?」という疑問についての答えですが、年収そのものが退職金の算出に直接的に関係しない場合も多いため、具体的な金額を挙げることは難しいといわざるを得ないでしょう。
退職金額は多くの場合、勤続年数や毎年の積み立て金額をもとにした各企業の算定方法によって決まります。
退職金が1000万円を超えるかどうかは、年収ではなく、勤続年数や勤める企業の退職金制度の種類によって決まることが分かりました。また、転職を繰り返すと退職金の積み立てがままならないこともあるため、長期的なキャリアプランが重要です。
退職金制度から確定拠出年金(DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)などへの切り替えが進む現在、これらの制度を活用し、自分自身で老後資金を積み立てる選択肢も検討するとよいでしょう。
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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