3月28日(金) 20:20
賃貸物件の家賃を変更するには、貸主と借主の合意が必要です。これは借地借家法によって定められており、貸主が一方的に「来月から家賃を5000円値上げする」と決めることは認められていません。
ただし、「近隣の家賃相場と比べて極端に安すぎる」「固定資産税や維持管理費の増加が著しい」などの理由があり、社会通念上「妥当」と判断された場合には、家賃の増額が認められる可能性があります。
とはいえこのようなケースでも、まず調停が行われ、裁判で認められない限り家賃は契約通りのままです。したがって家賃の値上げを告げられても、納得できないのであれば応じる必要はありません。
家賃の値上げに納得がいかず、貸主と交渉や調停を行う場合でも、家賃そのものの支払いは継続する必要があります。
借地借家法では貸主が一方的に家賃を値上げすることを認めていませんが、だからといって「値上げに応じないので、家賃の支払いもストップする」というのは適切ではありません。家賃の未納が続けば、契約解除や立ち退きを求める理由にできるからです。
借地借家法第32条2項では「建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる」とされています。値上げ前の家賃が正しいと考えるのであれば、その金額を支払い続けることが重要です。
しかし本事例のように、貸主が「値上げ分を含めた金額でなければ家賃を受け取らない」と主張することもあるでしょう。このような場合でも借主は、「家賃を支払う意思がある」ことを示さなければなりません。
貸主が家賃の受け取りを拒否している場合、法務局を通じて供託する方法が有効です。供託とは、貸主に家賃を支払えない場合に、法務局に家賃を預けることで、支払い義務を果たしたとみなす制度です。
供託を行うことで、借主は「正当な理由なく家賃を滞納している」という扱いを受けずに済むため、家賃未払いによる契約解除や強制退去のリスクを回避できます。
ただし、供託を行えば問題が解決するわけではありません。調停の結果、「家賃の値上げが妥当」と判断された場合は、値上げ後の家賃と供託していた金額との差額に加えて、利息を支払う必要があります。
そのため、供託によって家賃を支払う意思を示しつつ、家賃交渉を続けることが賢明です。
家賃の値上げは貸主の一方的な要求では成立せず、借主の同意が必要です。もし納得できないなら拒否しても問題ありません。さらに、貸主が値上げを理由に家賃の受け取りを拒否した場合でも、法務局へ供託することで未納扱いを避けられます。
家賃の値上げに納得がいかないときは、支払いの意思を示して契約解除のリスクを防ぎつつ、冷静に交渉を続けましょう。
国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集
e-Gov 法令検索 借地借家法
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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