【写真】寺尾聰“直文”と楽しそうにデートをする吉永小百合“福江”
山田洋次監督が贈る90本目の監督作品「こんにちは、母さん」が、3月28日(金)夜8時よりBS松竹東急(全番組無料放送・260ch)にて無料テレビ初放送される。本記事では、作品のあらすじや見どころについて紹介していく。
■“母”シリーズ3作目「こんにちは、母さん」
移り行く令和の時代に、いつまでも変わらない“親子”の姿を描いた人情物語「こんにちは、母さん」。劇作家・永井愛氏の戯曲を映画化した本作は、山田監督が手掛けた映画「母べえ」(2008年)、「母と暮せば」(2015年)に続く“母”シリーズ3作目として知られ、吉永小百合を主演に2023年9月に公開された。
大会社の人事部長として毎日精神をすり減らしながら働き、家では妻や大学生になった娘・舞(永野芽郁)との関係性に悩みながら生きる神崎昭夫(大泉洋)。彼は会社の同僚である木部(宮藤官九郎)から相談を受けたことをきっかけに、久しぶりに母親の福江(吉永)が住む東京下町にある実家を訪れる。
しかし、普段なら割烹着を着て出迎えてくれるはずの母の様子はどこかおかしく、艶やかなファッションに身を包み、ホームレス支援のボランティア活動などをしながら楽しそうに生活していた。おまけに恋愛までしているようで…。
“実家にも自分の居場所はないのか”と戸惑いを覚える昭夫。しかしお節介ながらもあたたかみのある東京下町の人々、そして今までとは違う母とかかわるうちに、昭夫は見失っていたことに気付かされていく――。
■人間の繊細な心理を丁寧に描く山田洋次監督の手腕
「男はつらいよ」シリーズや「幸福の黄色いハンカチ」(1977年)などで知られる山田監督が、悩みの多い現代社会で人の幸せとは何かを、家族やそれを取り巻く人間模様とともに描きながら問いかける本作。
作中で、山田監督が得意とする“葛藤する登場人物の心理描写”が幾度となく繊細に描かれている点は見どころの一つとなっている。例えば、“誰をリストラするか”“どう本人に伝えるか”に悩む、いわば人に嫌われる人事部長という立場に悩む昭夫。そんな彼が近所にある煎餅屋の煎餅を食べて「こういったものは人間を慰めるためにあるんだな、腹の足しというか心の足し。人間を慰めるためにあるんだ。こういう仕事に就けばよかった。こういう仕事は裏切らないからな」と目に涙をにじませながら語る場面は非常に印象的だ。
山田監督は同シーンについて、「子どものころなんかは、むしろ『せんべい屋なんて』ってバカにしてるわけだろ。あの言葉は自分を批判してる言葉であるわけだな」と以前インタビューで語っていた。“予想外のものに感動し慰められる”というシチュエーションを取り入れたことで、よりリアルな共感を呼ぶ作品に仕上がっている。
50日近くにわたって撮影がおこなわれた本作。昭夫が母の恋愛を受け入れられず布団でもがくシーンでは、ハンガーラックからコートが落ちるタイミングにもこだわり、何度も撮り直しをおこなったという。妥協を一切許さない山田監督らしい演出へのこだわりっぷりは本作でも健在で、上手く説明できない感情に苦しむ昭夫の姿を丁寧に描いた同シーンにも注目だ。
■大泉洋と吉永小百合が親子役として初共演
本作には、「男はつらいよ 柴又慕情」(1972年)を始め「母べえ」(2008年)、「母と暮せば」(2015年)など、約50年にわたって数々の山田監督作品に出演してきた吉永と、映画やドラマだけでなくバラエティや音楽活動とマルチに活躍する大泉が、初めて親子役として共演したことでも話題となった。
牧師・荻生直文(寺尾聰)に恋をし、瞳を輝かせながらピュアな恋心を抱く福江をチャーミングに演じている吉永。その一方で、昭夫に見せる“母親”としての表情はとても優しく温かみがあり、懐の大きさを感じ取れる。福江の持つ二面性をリアリティかつ魅力的に演じた吉永は、山田監督の“母”シリーズには欠かせない俳優と言えるだろう。
そして、息子・昭夫を演じる大泉はコメディ色のイメージがあるものの、日々の生活に神経をすり減らし、孤独や怒り、悲哀などを、人間味あふれる芝居で見事に表現。多くの人の共感を誘うようなリアリティ溢れる細やかな演技によって、昭夫というキャラクターが自然と愛おしく見えてくる。
そんな大泉は、出演にあたり以前インタビューで「昭夫にとっては母親に対して一番甘えられるし、わがままも言える。母への思いも含めて、非常に私に近いものがありました」とコメントを残していた。自身に近い役どころだからこそ、役に染まることができたのかもしれない。
また吉永や大泉だけでなく、永野芽郁、宮藤官九郎、寺尾聰など実力派俳優陣による演技も、物語に深みと温かみを与えている。
【関連記事】
・
【写真】水色の着物に身をつつみ笑顔を浮かべる吉永小百合“福江”と、その横で微笑む寺尾聰“直文”
・
井上真央主演、家族の“繋がり”を再発見していくヒューマンドラマ「夜のあぐら ~姉と弟と私~」無料放送見どころを紹介
・
菅田将暉が初登場、凛とした若武者に成長した虎松を熱演「おんな城主 直虎」38話・39話を無料連続放送
・
映画「こんにちは、母さん」など、山田洋次監督の名作10タイトルを一挙無料放送山田監督よりコメントも到着
・
優等生の女子高生が、ライバル視していた女子生徒に好かれる百合漫画に「ニヤけた」の声【漫画】