3月24日(月) 17:20
賃貸物件の貸主と借主の間では、賃貸借契約が締結されています。借主が貸主に賃貸物件を使用させる際には、引き渡し後、借主の使用に支障がない状態を維持する必要があると考えられるでしょう。つまり、お風呂付きの物件であれば、お風呂が使える状態に、ボイラー付きの物件であれば、ボイラーが使える状態にしておかなければならないでしょう。
今回の事例では「ボイラーが故障してお風呂に入れない期間があった」ということなので、ボイラーが直るまでの間は貸主が負うべき義務の一部が不履行の状態であったと考えていいでしょう。
民法第六百十一条に「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」と記載されているように、家賃が減額されることになるでしょう。
国民生活センターに寄せられた相談事例に、「給湯器の故障により、修理がなされるまでの6日間はお風呂に入れなかった」というものがあります。この事例では公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が作成した「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン(2020年 3月)」を基に、家賃から減額割合に基づいた額が差し引かれる可能性があることが記載されています。いくら減額されるかはボイラーが直るまでにかかった日数によるため、確認してみるといいでしょう。
上記の例はボイラーの故障が借主の責任によるものではないと判断された場合であり、借主の不注意などによって壊してしまった場合などは、家賃の減額は認められないと考えられます。
賃貸物件の設備には、「初期設備」と「残置物」があり、初期設備とはその部屋に最初から取り付けられている設備のことで、故障したときは貸主の負担で修理を行います。
ただし、故障の原因にもよるようです。故意や不注意によりぶつけたり落としたりした場合は、借主負担になる可能性があります。しかし、経年劣化により不具合が生じた場合や、通常の使い方をしていて起こった損耗については、貸主負担になると考えられます。
一方、残置物とは、その部屋に前に住んでいた人が置いていったものを指します。このような設備は貸主の管理下にあるものではないため、故障すると借主負担になる可能性があります。まずは、部屋の設備のうちどれが初期設備でどれが残置物なのか、確認しておくといいでしょう。
賃貸物件に住んでいてボイラーが故障し、お風呂に入れない期間が合った場合、直るまでの家賃を減額してもらえる可能性があります。
ただし、故障の原因が借主にないことが条件となるため、壊れるような使い方をしていなかったかよく確認してみましょう。
賃貸物件の設備については、故障した場合の修理費用を貸主と借主のどちらが負担するかは状況によって異なります。壊れてから慌てることがないよう、入居する前に詳しく確認しておくことをおすすめします。
国民生活センター 暮らしの法律Q&A 第129回 給湯器が故障して風呂が使えなかった期間の家賃を減額してもらえる?
デジタル庁e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百十一条
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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