3月24日(月) 9:00
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。
【水先案内人 高松啓二のおススメ】
初見は70年代のリバイバル上映だった。あれから50回以上は劇場で観ただろうか。映画史に残る名作中の名作なのでここでは何度も観て気になった事を取り上げてみた。
●カット版
完全版の227分が公開されるまで、1962年のオリジナルから何度かカットされ、複数のバージョンが存在していた。しかもカット版は前半のタファスとロレンスが移動するシーンは裏焼きだったため、左から右移動演出(イラスト参照)が損なわれていた。
●オープニングのバイク
ブラフ・シューペリアSS100はロレンスが乗っていた同型バイクである。1989年西武百貨店「アラビアのロレンス」展に展示されていた。映画より大きい印象だった。
●ナンバープレート
アップになるナンバープレートUL656は事故時のものでなく、実際はGW2275。
●帽子
ロレンスが被っている英国軍のPeaked Capは通常ワイヤーが入っており円形状にしてあるが、登場時のロレンスはワイヤーを抜きフニャフニャして(イラスト参照)他の軍人と違っている。これは彼の突っ張りなのだろう。軍に馴染めないでいるが、ラストでは既成帽になっており、彼が軍に取り込まれてしまった状況を表している。
●歌
ロレンス役のピーター・オトゥールがラクダに乗って峡谷で歌う歌と井戸の名シーンで口笛を吹く曲は、1892年の英国の流行歌「モンテカルロの銀行を破った男」。
●アレック・ギネス
ファイサル役のアレック・ギネスは1960年に「Ross」という舞台でロレンスを演じていた。ちなみにタイトルはロレンスが英国に戻った後に空軍へ再入隊した時の偽名ロスが由来である。
●ピーター・オトゥール
撮影中にピーター・オトゥールはアンソニー・クインをぶん殴ったとか?〜『女たちよ!』伊丹十三の本から
興味が尽きないね──。
<作品情報>
『アラビアのロレンス〈完全版・4K版〉』
午前十時の映画祭 15にて上映
監督:デヴィッド・リーン
出演者:ピーター・オトゥール、アレック・ギネス、アンソニー・クイン