2025年も1月から大河ドラマ・プライム帯連続ドラマ・深夜ドラマ・配信ドラマなどさまざまにスタート。年間100本以上のドラマチェックを欠かさないアラフォー筆者が、この冬、特に熱演が印象的だった3人の女優たちをご紹介します。
※以下、各ドラマの一部ネタバレを含みます。渋谷凪咲『地獄の果てまで連れていく』『私の知らない私』
まず驚かされたのは、元NMB48のメンバーである渋谷凪咲(28)です。『地獄の果てまで連れていく』(TBS系)では、主人公・紗智子(佐々木希)に復讐を企てられる悪魔のような殺人鬼・麗奈。一方、『私の知らない私』(読売テレビ・日本テレビ系)では、記憶をなくした主人公・芽衣(小野花梨)の高校時代からの友人・莉奈を演じています。
ふたつのギャップ・ふたつの狂気を、見事演じ分け
どちらも一見、可愛らしい笑顔と柔らかな雰囲気の女性。しかし、それぞれにまったく違うギャップを持っています。『地獄の果てー』の麗奈は「イライラする~」と、自分が気に入らない人間を驚くほど簡単に殺していくサイコパス。愛する夫・誠(井上祐貴)への異常な執着と、夫以外の人間への残虐さが怖すぎます。渋谷は天使のような笑顔で狂気を表現しており、心底ぞっとさせられます。
一方『私の知らない私』の莉奈は、自己肯定感が低く、SNSの裏垢で虚勢を張ったり、利用されていると分かっていても男にすがりついたり、友人に嫉妬したり。ある意味では繊細であり、その弱さゆえに暴走してしまいます。誰もがふと落ちてしまう心の闇を、等身大で見せてくれました。
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ふたつの役を見事に演じ分けた渋谷は、初主演映画『あのコはだぁれ?』(2024年)で、第48回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。バラエティや情報番組に引っ張りだこの彼女ですが、これからは女優としての活躍にも注目が集まりそうです。
髙石あかり『御上先生』『アポロの歌』
2025年後期(10月スタート)の朝ドラ『ばけばけ』のヒロインに決定している髙石あかり(22)も流石の演技を見せてくれています。日曜劇場『御上先生』では、文科省のエリート官僚・御上孝(松坂桃李)の出向先である私立高校の生徒・千木良遥役を。そして佐藤勝利(timelesz)とダブル主演で手塚治虫氏作品の実写化『アポロの歌』(毎日放送・TBS系)にも出演しています。
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22歳とは思えない、唯一無二の存在感
『御上先生』では、旬の若手俳優が並ぶ教室のなかで“真面目で育ちが良く控えめな性格。成績も優秀で優しく友達思い”という設定をしっかりと表現。教室のなかでも、設定どおり控えめながらも目に留まる存在感を放っています。逆に『アポロの歌』では圧倒的ヒロイン。
『アポロの歌』は、手塚治虫氏原作の壮大なSF青春ストーリー「アポロの歌」を現代解釈した前人未到のパラレル・ラブストーリーです。幼少期の母とのトラウマのせいで、愛を軽蔑して生きている大学生・近石昭吾(佐藤勝利)。髙石は昭吾の幼なじみで、歌手になる夢を見ながらバーで働いている渡ひろみを演じています。しかしそれは第一世界での役柄。実は昭吾が「何度生まれ変わっても一人の女性を愛し、結ばれる前に死ぬ」という設定で、第二世界では人気歌手・シグマ、第三世界ではクローン合成で何度も蘇るシグマ王を演じています。髙石は世界線が変わるたびにきっちりとキャラを演じ分けており、目が離せません。彼女の演技力の高さには、第1話から唸らされました。
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勤務先のバーで客に促されてKiroroの『長い間』を歌うシーン。Aメロからずっと歌っているのですが、サビの「気づいたの~あなたがこんなに胸のなかにいること~」部分の声色と絶妙な表情だけで、昭吾への複雑な想いを見せているのです。観る者が切なくなるほどに。まだ22歳!? おそろしい子!
小芝風花『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』
この冬、最も涙を誘ったのは小芝風花(27)の名演ではないでしょうか。1月にスタートした大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で、史実にも残る伝説の花魁・花の井(五代目瀬川)を演じました。
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イメージになかった色気を放ち、もはや死角なし
小芝の実力は言わずもがな。清純派も、がむしゃらヒロインも、シリアスからコメディまで幅広くこなし、『波よ聞いてくれ』の“やさぐれ金髪ギャル”まで演じきった演技派女優です。しかし“花魁役”と発表されたとき、大変失礼ながら不安を覚えました。小柄で可愛い印象の彼女に、色を売るイメージがまったくなかったからです。しかし、何のその。品格を併せもった色気を放つ、花魁としての佇まいには本当に驚かされました。
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もちろん見た目だけでなく、幼なじみである蔦重(横浜流星)への複雑な恋心を表現した繊細な演技も秀逸。鳥山検校(市原隼人)への身請け話が出てからは特に! 彼女の胸の痛みが伝わって伝わって。切なくて切なくて。結局身請けは決まってしまい、最後の花魁道中が放送された第10回は涙なくしては観られませんでした。花魁になったときとも、瀬川を襲名したときとも違う、真っ赤な紅を引いた白無垢姿での花魁道中。力強さも儚さもすべての想いを感じさせ、最後の「おさらばえ」は多くの感動を呼びました。もう完全に瀬川ロスです。おみそれいたしました。
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この冬は、それぞれに新たな魅力を披露してくれた女優さんが多い印象。彼女たちの活躍から、引き続き目が離せそうにありません。
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
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