映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
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更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
今週は、2025年3月20日(木)が春分の日のため、同日に多くの新作が公開されました。
先週末、第48回日本アカデミー賞が発表されたばかりですが、最優秀主演女優賞に輝いたのは「あんのこと」の河合優実でした。そんな彼女がヒロインを務めた「悪い夏」も3月20日に公開されました。
「悪い夏」を見ると、河合優実が日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞したのは、改めて当然のように感じます。と同時に、日本アカデミー賞の演技部門で受賞が期待できる他の俳優の存在も見えてきます。
本作のキャッチコピーは「クズとワルしか出てこない」ですが、まさに本作でキャスティングされている俳優は日本アカデミー賞などで有利に働く素養のある人物が多くなっています。
例えば河合優実ですが、本作に限らず「クズとワル」の役柄を演じることがとても多くなっています。
これは彼女から発せられる独特な雰囲気との親和性が高く、どの役柄もハイレベルで演じ切っている特徴があります。
河合優実の演技を考える上で外せないのは「ナミビアの砂漠」の役柄でしょうか。
自分でもよくわからず感情の赴くまま生きている主人公は、もの凄くリアリティーがあり、「きっと河合優実本人もこのようなタイプなのではないだろうか?」と思うほどの憑依を感じるのです。
この憑依こそが演技力の象徴的なものであり、役者と役柄が同化していくほど役者のポテンシャルが高くなるわけです。
同様に「悪い夏」では同じような憑依型の俳優もキャスティングされています。
それは裏社会のボスを演じる窪田正孝です。
笑いながら平然と殺人も厭わないような役柄なのですが、窪田正孝の趣味のボクシングの腕も相まって、「きっと窪田正孝本人もこのようなタイプなのでは?」と思うほどの憑依を感じます。
その窪田正孝ですが、「ある男」(2022年)で得体の知れない男性を演じ、第46回日本アカデミー賞で最優秀助演男優賞を受賞しました。
役者本人から自然と醸し出される個性が強いと、より役柄に深みを与えて唯一無二のキャラクターが誕生することにつながり、賞レースでは有利に働く面があるのです。
また、少なくとも河合優実の場合は「悪い夏」や「ナミビアの砂漠」などの実例から、おそらくNG無しといった感じで、制約を設けていなさそうなのも、よりキャラクターに深みを与えている面があります。
「悪い夏」には出演していないのですが、これらの条件が当てはまる俳優では、例えば綾野剛がいます。
直近では「まる」(2024年)の狂気に満ちた人物は「綾野剛の日常」にしか見えず、「これが演技だったら怖い」と思えるくらいの演技力を見せています。
綾野剛は日本アカデミー賞ではまだ最優秀男優賞を受賞していませんが、そんなに遠くないタイミングで実現するように思えます。
さて、「悪い夏」は、何かと話題になる「生活保護」が題材の作品になっています。「生活保護」の仕組みは人間の感性に因るグレーゾーンの部分があるので映画向きな面があるのです。
本作は、北村匠海らが演じる市役所職員のケースワーカーを軸に物語が展開されていきます。
このような題材の作品は、かなり極論的なモノも存在するのですが、本作は原作が「横溝正史ミステリ大賞優秀賞」を受賞している作品なので、妥当な内容になっています。
つまり、社会の仕組みを考えながら、いま最も旬な演技派俳優たちの豪華な競演を堪能することができる作品になっているのです!
【作品情報】
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悪い夏
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(C)2025映画「悪い夏」製作委員会