「日本はアメリカの野球を変えている」メジャーリーガーが真似できない、日本人投手の“脅威の能力”とは?

日本人投手について熱い議論を戦わせるピッチングニンジャ(左)とマック鈴木氏

「日本はアメリカの野球を変えている」メジャーリーガーが真似できない、日本人投手の“脅威の能力”とは?

3月19日(水) 23:47

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18日に開幕したドジャースとカブスの「MLB東京シリーズ」。試合を取材するために来日した、弁護士で実業家のインフルエンサーという異色の投球分析家・ピッチングニンジャことロブ・フリードマン氏。

試合に先立って、16日に渋谷で開催された来日特別トークイベント(主催 Fanatics Japan合同会社)で、MLBで存在感を放っている投手、野球の魅力、ピッチングの奥深さなどについて、マック鈴木氏(元メジャーリーガー)、村田洋輔氏(MLB.jp編集長)、MCのDJケチャップ氏と語り合った。

「今もアメリカの選手は日本人選手を見倣っている」

MCのケチャップ氏が「日本人選手って、野茂(英雄)さんのトルネード投法、イチローさんのバッティング技術など、アメリカで野球の歴史を変えているんじゃないでしょうか?」と投げかけると、フリードマン氏は同意してこう語った。

「その通りだと思います。今もアメリカの選手は、日本人選手を見倣っています。多くの日本人投手が活躍していますが、特に スプリッター(※) については日本人投手が基準を作っています。アメリカでは長年の間、スプリッターを投げる投手がほとんどいませんでした。

有名なのはロジャー・クレメンスぐらいで、彼以来、ほぼ途絶えていたのです。ところが今、多くの日本人投手がスプリッターを投げて成功しているのを見て、メジャーリーガーたちがこぞってスプリッターを習得しようとしています。日本人がアメリカより進んでいると思うところですね」

スプリッター=フォークボールとスプリット・フィンガー・ファストボール(日本では略してスプリットを呼ぶことが多い)を含めた総称。アメリカでは後者をスプリッターとも呼ぶなど区別は曖昧。フォークに比べて、スプリット・フィンガー・ファストボールは、球速が速く落ち幅が小さい。どちらも人差し指と中指の間にボールを挟んで投げる落ちる変化球。

大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希の脅威の柔軟性

話はトレーニングの話題にも及んだ。大谷翔平が肩甲骨を背中で合わせてしまうエピソードを皮切りに、柔軟性についても日本人が進んでいるところではないだろうか、と問われたフリードマン氏も同意して続ける。

「山本由伸、佐々木朗希、大谷翔平を見ていると、彼らは関節が二重になっているかのような動きをします。アメリカの投手ではあまり見ない動きです。アメリカ人投手は、柔軟性や可動域のトレーニングをあまり重視せず、代わりにウェイトトレーニングをしているからでしょう。体格も大きいので、純粋な筋力に頼ることが多いのです。一方で、日本人投手は関節や手足の使い方が上手いと思います」

ところが、これに元メジャーリーガーのマック鈴木氏が異を唱えたのだ。

「農耕民族は身体の使い方が違う」

「いや、日本人のほうが進んでるというのではなく、身体の使い方がそもそも違うんです。日本人は農耕民族だから、足首と膝をすごく使う。アメリカの人は足首と膝はすごく硬いけど、股関節をうまく使うんですよね」

すると、鈴木氏はおもむろに立ち上がると、物を拾い上げる動作をしてみせた。

「消しゴムを拾うとき、僕ら日本人は(膝と足首を曲げて屈みながら)こう拾うでしょ?ピッチングも同じで、日本人は自然に膝と足首を動かす。でも、アメリカ人はこんな風にかがまないんです。身体のつくりと使い方が違うんですよ。楽なのは、そんなに曲げないで拾う欧米人の身体の使い方なんですけどね」

これにはフリードマン氏も「すごく興味深い話ですね。今一つ、私も学ぶことができました」としきりに感心していた。

ピッチクロックの弊害

参加者からの質問コーナーではフリードマン氏の示唆深い見解が、会場を唸らせた。

MLBでは2023年から試合時間の短縮のため、投手が一定時間内に投球しなければならないピッチクロックというルールが規定されている。18日の試合でも、ドジャース先発の山本由伸が投球の一球目でいきなり「違反」を取られるなどしていた。

日本でも導入の議論が進んでいるが、ケガのリスクが懸念されている。そのことを尋ねられたフリードマン氏は、こう懸念を示した。

「ケガとの相関性はあり得ると思います。そう考える理由はいくつかありますが、一つにはリカバリーの問題です。ウェイトトレーニングをする場合でも、セット間に回復の時間をいくらか取ることで、再び出力を上げることができますよね。

もしセット間に休む時間をあまり取らずにウェイトを繰り返せば、疲れてしまいます。同様に、投球間隔を制限して次々と投げることは、ヒジを守るための筋肉も疲労し、それが靭帯に過度な負荷をかけるかもしれません」

登板間隔、ボールも日本を見習ってみては?

フリードマン氏はMLBの登板間隔にも言及した。

「また今、ドジャースが取り入れようとしているように、私は登板間隔ももっと長くできればと思います。日本やアメリカの大学では先発は週に一度の登板が一般的ですが、MLBは中4日など短く、身体の回復が追いついていません。

それに、選手たちからはボールの不満も聞かれます。日本のボールは粘着性もあって、しっかり握れるように作られていますが、メジャーのボールは滑りやすいため、より強く握る必要があります。

これもヒジへの負担に繋がることです。もちろん、ケガを引き起こす要因はいろいろとたくさんあります。それでも、ピッチクロックがケガの要因になる可能性は否定できないと思います。今は不確かですが、将来的には問題が顕在化するかもしれません。ピッチクロックが導入されたとき、私もケガのリスクを心配していたので、日本の皆さんがピッチクロック導入に反対する意見に同意します」

あくまで「選手ファースト」を唱えるフリードマン氏。MLBが日本プロ野球から学ぶことは少なくないのかもしれない。

取材・文・撮影/松山ようこ写真提供/Fanatics Japan



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