新潟市で開催中の第3回新潟国際アニメーション映画祭で、「ニュータイプ」40周年記念トークショーが3月16日シネ・ウインドで行われ、映画祭フェスティバル・ディレクターで、同誌の創刊に携わった井上伸一郎氏、アニメ評論家の藤津亮太氏が、副編集長の鳩岡桃子氏を聞き手にトークを行った。
まずは井上氏が、1983年に3月に角川映画初のアニメーション映画「幻魔大戦」が公開、翌年84年に「少年ケニヤ」、そして85年に「カムイの剣」と劇場公開作の流れを説明し、「1984年の11月、当時角川書店の社長だった角川春樹さんが、3月の『カムイの剣』公開に合わせてアニメ誌を出すようにと。雑誌ってそんなにすぐに創刊できないので、バタバタだった」と振り返り、井上氏は別会社のアニメ雑誌「アニメック」や「ザテレビジョン」アニメコーナー担当時代から富野由悠季氏とのつながりが深かったこともあり、副編集長に起用され「ニュータイプ」創刊に至ったエピソードを明かす。
誌名の命名について藤津氏が質問すると、「(初代)編集長の佐藤良悦さんが『ニュータイプ』にしたいと。当時角川書店専務で、子会社のザテレビジョン社長だった角川歴彦さんが富野さんのところに話をしに行きました」と井上氏。創刊同月の1985年3月に放送が始まった「機動戦士Zガンダム」が表紙を飾り、別冊付録で「カムイの剣」を紹介した。
アニメーション分野以外にも、一般映画や音楽情報も取り上げるなど、幅広いカルチャーを網羅したアニメーション専門誌としてその地位を確立した。現副編集長の鳩岡氏は「映像として面白いものはずっと取り上げようというマインドは創刊当時からのモットー」と強調する。
本トークは鳩岡氏によるスライド解説とともに、80年代の「火の鳥」「王立宇宙軍 オネアミスの翼」などからはじまり、「ガンダム」「機動警察パトレイバー」、土6・日5と呼ばれる夕方のアニメーション放送枠、「エヴァンゲリオン」シリーズ、細田守、「花の詩女ゴティックメード」、新海誠特集、近年の人気クリエイターまで、様々なエピソードを披露。オールカラー化やDVD付録、米国・韓国での海外販売など、時代の変化に伴う雑誌の売り方の変遷も含めたコアなトピックを紹介した。また、デジタル時代到来後の画像のやり取り、入稿方法の変化など、紙媒体ならではの裏話や苦労も明かされた。
中学生だった80年代に「ニュータイプ」を友達の家で読んでいたという藤津氏が「絵を描く友人が『設定資料が乗っているのがいい』と言っていました」と当時を振り返ると、「お金を払ってイラストを頼めなかったので、イラストの代わりに設定資料集を掲載した」と制作費の都合からのアイディアが好評を博したと井上氏。また、アニメーション業界で活躍するようになってから藤津氏が担当した、ジブリ作品「千と千尋の神隠し」記事も紹介された。
雑誌の顔となる表紙についても、各年代、作品によっての様々な工夫やこだわりが明かされ、例えば2024年の劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」特集時は、2002年、2006年の「機動戦士ガンダムSEED」特集からの構図を踏襲したものが採用されるなど、世代を超えたファンを喜ばせていた。
最新号の「月刊ニュータイプ2025年4月号」は「ファイブスター物語」が表紙を飾っている。また、井上氏がアニメ雑誌「アニメック」編集部在籍時代の思い出、「ニュータイプ」「少年エース」の創刊などを振り返った書籍「メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史」が星海社新書から発売中だ。
第3回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催、チケット販売、プログラムなど詳細は公式HP(https://niaff.net)、SNSで随時告知する。
【作品情報】
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機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
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