20歳の俳優、吉柳咲良(きりゅうさくら)が目覚ましい活躍を見せている。日曜劇場「御上先生」では、高校生の心の葛藤を繊細に表現して観る者を魅了。ディズニーが伝説的作品を新たなミュージカル版として実写映画化した『白雪姫』(3月20日公開)では、プレミアム吹替版で白雪姫役に抜てきされ、圧巻の歌声を披露している。「わんぱく少女で、スカートを履かない女の子だった」という吉柳が、アニメ映画『天気の子』(19)やミュージカル「ロミオ&ジュリエット」など転機となる作品を経て、プリンセスへたどる道のり。「自分が制限しなければ、なんにでも挑戦できる」と力強く前進する、20歳の胸の内を明かした。
【写真を見る】プリンセスへの憧れを吐露した吉柳咲良。凛とした瞳とレッドドレスが印象的な撮りおろし
■「オーディションのモットーは、やりたいことをやり切る!」
ディズニー初の長編映画であり、世界初のカラー長編アニメーションとしても知られる『白雪姫』(37)を新たにミュージカル版として実写映画化した本作。外見の美しさと権力に執着する邪悪な女王によって闇に支配されていた王国で、雪のように純粋な心を持つ白雪姫が巻き起こす奇跡を描く。
白雪姫というディズニープリンセスを、オーディションで射止めた吉柳。「1937年に公開された『白雪姫』はディズニープリンセスのなかでも、最初のプリンセスと言えるような存在ですよね。ディズニーファンの友達からも白雪姫の偉大さについて聞いていたので、オーディションを受けるにあたってもプレッシャーがありました」と打ち明ける。
吉柳は「第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン PURE GIRL 2016」において、12歳でグランプリを受賞して芸能界入りを果たした。勝負強さを感じさせる彼女だが、「とても緊張しい」だという。それをカバーするオーディションの心得があるそうで、「オーディションで目の前にいる方たちは、もうここでしか会わないかもしれないし、いまの時間は、365日、24時間のうちのこの瞬間しかない。限られた時間のなかで、残せるものはすべて残しておかなければ、目に止めてもらうこともできない。やれることはやり切って、『よし!』という気持ちで帰れるようにしたいと思っています」と語る。
本作のオーディションでは、全力を出すために努力を重ねた。吉柳は「楽曲を聴いて、とても難しい曲だなと思いました。音域も広いし、柔らかく歌うものから、パワフルに高音を出すものもあって、そのなかで白雪姫としての色を出さなければいけない。まずはボイトレを重点的に行うことから始めました。また1937年版の『白雪姫』を観返して、白雪姫のセリフ回しがどのようなものなのか研究して。白雪姫は一音、一音を大切に話していて、語尾まで流すことなく、最後まできちんと丁寧に話していることに気づきました」と回想。「できることはなんでもやる」という意気込みで臨み、見事に白雪姫役を獲得した。
大役を得てからも、もちろんプレッシャーや緊張感と戦っていたというが、それらを跳ね除けるのは「任せていただいたという、責任感」だとまっすぐな眼差しを見せる。「やっぱり『この子に任せてよかった』と思ってほしいですし、期待にお応えするところまでが自分のお仕事。そうなると、『不安だ』とは言っていられないなと。『よかった』と言ってもらえて初めて充実感を味わえるお仕事だと思うので、プレッシャーは自分を強くしてくれるためのものに変えていきたい」と、内から溢れだすエネルギーがなんとも魅力的だ。
■「プリンセスを夢見てもよかったんだと思うことができた」
キャラクターに向き合う日々は、白雪姫の特別な魅力を実感する時間になったと振り返る。「白雪姫はいつも前を向いて、常に笑顔で思慮深く、やさしく、尊敬するところばかり」と愛情を傾けた吉柳は、「白雪姫のやさしさや他人を思いやる気持ちは、とても平等なもの。誰にでも与えられるべき幸せがあるはずだということを、彼女自身がものすごく理解しているような気がしています。誰かを思うことや、“誰かのために”ということが、白雪姫の凛々しさや強さの源になっているんだと思いました」としみじみ。キラキラと輝くプリンセスを演じられたことは、いまでも「夢のようなこと」だと感激しきりで、憧れるような存在である白雪姫は「自分とは程遠いし、似ても似つかないと思います」と苦笑いで続ける。
「私は、小さなころから“わんぱく少女”で。兄弟や従兄弟は、男の子ばかり。それにうちは、空手道場をやっていて。なかなか激しめの家で育ちました」と楽しそうに笑いつつ、「声も低いし、スカートも履かないような女の子でした。かわいいものがあったら、わざとそちらではないほうを選ぶ癖がついているような女の子。性格的にはネガティブで、自分にトゲを刺していくようなタイプ。自分の嫌なところばかりに目を向けてしまうところがあった」と告白。
しかしながら「そんな私でも、心のなかでは小さなころからかわいいものや、プリンセスにずっと憧れがありました」と明かし、「今回、白雪姫を演じさせていただけたことで、私がプリンセスを夢見てもよかったんだと思うことができました。かわいいものは似合わないと、自分を否定し続けてきた小さなころの自分が、やっとちゃんと泣けたような気がして。自分で自分を否定して、一番味方でいなければいけない自分が敵にまわってしまっていたようで、可能性を狭めていたのは自分だったんだなと改めて気づきました。白雪姫を演じられたことが、これからの自分にとっても自信になる気がしています」と、白雪姫がくれたものは限りない。
■「20歳の1年は、ずっと思考し続けています」
吉柳は、2004年4月生まれの現在20歳。2017年にミュージカル「ピーター・パン」で10代目ピーター・パン役に抜てきされ、5年間にわたって続投。2019年には新海誠監督作品『天気の子』の凪役として声優を務め、昨年はミュージカル「ロミオ&ジュリエット」でジュリエット役を演じるなど、次々と話題作への出演を重ねている。
ネガティブで、自分の嫌なところに目を向けてしまうタイプだと明かした吉柳だが、10代はたくさんのステキな出会いに恵まれ、周囲に力をもらいながら「自分にしかできないことがきっとある、と思えるようになった」と笑顔を見せる。
「『天気の子』では、私のハスキーな声について、新海監督が『その声は武器ですよ』と言ってくださった。それまで自分の声が嫌いでしたが、きっと私にしかできないことがあるし、私だったから凪くんを演じられたんだと思うことができました。それは新海監督のおかげで、いまでも仲良くさせていただいています」とにっこり。さらに「『ロミオ&ジュリエット』では、うまくできずに落ち込んでいると、ロミオ役の小関裕太さん、岡宮来夢さんが『いまのすごくよかったよ』『いろいろなジュリエットがいていいと思う』など背中を押してくれるような言葉をたくさんくれました。またもう一人のジュリエットである奥田いろはちゃんも、『参考になることがたくさんある。本当にすごい』と声をかけてくれたりと、カンパニーに救われたことがたくさんあって。みんなが壁をぶち破ってくれて、お互いのよかったところを共有できる関係性を築くことができて、ものすごくうれしかったです」と心を込める。
20歳を迎えた1年は、『白雪姫』、そして同世代の注目俳優たちとクラスメイトを演じる日曜劇場「御上先生」にも出演。エリート文科省官僚から高校教師になった御上先生(松坂桃李)が、18歳の高校生を導きながら権力に立ち向かっていく物語で、ヤングケアラーとなる椎葉役を演じた吉柳が、多感な高校生の葛藤をすばらしく表現したことも話題となった。吉柳は「影山優佳ちゃんや、高石あかりちゃんなど、同世代のみんなと意見を交換しながら、支え合いながら撮影に臨んでいます。2人との出会いは、私にとってとても大きなもの」と感謝。「20歳となった1年は、幅広くいろいろな経験をさせていただき、そのなかで私はずっと思考し続けているなと思います。10代は正解を探しがちだったけれど、正解は一つに絞る必要はないんだなと。価値観を広げながら、考え続けることで、役の幅も広がっていくのかなと思っています」と“考えること”の大切さを学んだ1年だという。
「私は1人では生きていけません。人に恵まれ続けています」という道のりや、白雪姫との出会いも経て、「自分が制限しなければ、なんにでも挑戦できる」という心境に辿り着いた吉柳。「お姫様系のビジュアルとは違ったとしても、いまの技術ってすごいので!メイクで変わることだってできますよね。きっとなんにでもなれる」と声を弾ませながら、「歌もそうですが、年々、歌える音域が広がっていくのを実感しています。これはもう、私の努力次第。『私はこの人みたいになれない』『私はダメだ』と言っていてもしょうがないので、『できないな』と感じているならば『できるまでやればいい!』と思えるようになりました」と清々しく語る。どこまでも駆け上がっていきそうなパワフルなオーラを輝かせる吉柳咲良のこれからが、ますます楽しみだ。
※高石あかりの「高」は「はしごだか」が正式表記
取材・文/成田おり枝
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