センバツ大会注目選手〜投手編
3月18日に開幕する第97回選抜高校野球大会(センバツ)。今大会は全国から好投手が多数集い、熾烈な戦いが繰り広げられそうだ。とくに注目しておきたい有望投手を10名ピックアップした。
新2年生ながら高い完成度を誇る横浜・織田翔希photo by Ohtomo Yoshiyuki
織田翔希(横浜2年/185センチ・72キロ/右投右打)
新2年生とはいえ、「モノが違う」という意味で真っ先に挙げたいのがこの投手だ。偉大なOBの松坂大輔(元・レッドソックスほか)とはタイプが異なるが、潜在能力は上と言っていいだろう。昨秋は実質的なエース格として関東大会優勝、明治神宮野球大会優勝に導いた。150キロに達する快速球は重力に逆らうような好球質で、カーブ、スライダー、チェンジアップの変化球も精度が高い。調整能力にも秀でており、不調時でも試合を組み立てられる。大谷翔平や佐々木朗希(ともにドジャース)など歴代の素材型高校生と比べても、実戦力の高さは際立っている。長身痩躯の肉体はまだ発展途上で、硬式ボールを本格的に握って1年と技術的な伸びしろも残している。今後2年間でどんな進化を見せてくれるのか、希望がふくらむ大器だ。
最速158キロを誇る健大高崎・石垣元気photo by Kikuchi Takahiro
石垣元気(健大高崎3年/178センチ・78キロ/右投両打)
2025年の高校球界を代表するスピードキング。決して全力で右腕を振っているように見えないのに、コンスタントに150キロ台の球速を叩き出す。昨秋の関東大会では球場のスピードガンで158キロが表示されたが、「(誤作動で)出ていないと思います」と、自身のなかで最高球速に認定していない。周囲の喧騒に踊らされない冷静さも持ち合わせている。北海道から群馬へと渡り、昨春は好左腕・佐藤龍月との二枚看板でセンバツ優勝に大きく貢献。今春は佐藤がトミー・ジョン手術明けのため登板できない見込みだが、成長著しい実戦派左腕・下重賢慎らとの共闘で連覇を狙う。ストレートの球質や制球力が向上し、「勝てる投手」としての資質をアピールできれば、今秋ドラフトでの1位指名は堅そうだ。
抜群の制球力を武器に近畿大会を制した東洋大姫路・阪下漣photo by Ohtomo Yoshiyuki
阪下漣(東洋大姫路3年/181センチ・88キロ/右投右打)
総合力なら今大会で右に出る者がいない右腕。昨秋は絶対的エースとして近畿大会優勝、明治神宮野球大会準優勝の立役者になった。ストレートは最速147キロを計測するも、球速にさほど関心を示さない。制球重視でコースを突き、ストレートの軌道から横滑りするカットボールで凡打の山を築く。高校生の試合にひとりだけ大人が混じっているような、精神年齢の高い投手だ。試合後の報道陣との明瞭な受け答えからも、聡明さが伝わってくる。グラブハンドを天に向かってしならせるフォームも特徴的で、甲子園でよく映えそうだ。
昨年秋の公式戦で13イニングで失点0の好投を見せた智辯和歌山の宮口龍斗photo by Sankei Visual
宮口龍斗(智辯和歌山3年/183センチ・87キロ/右投右打)
大ブレークの可能性を秘めた大器。たくましい体躯、鋭い腕の振りから放たれるストレートは、猛烈な加速感がある。チーム内に安定感のある実戦派右腕の渡邉颯人がいるため、昨秋は背番号11。それでも、和歌山大会では自己最速の152キロを計測するなど、公式戦で計13イニングを投げ、被安打2、奪三振15、失点0と圧倒的な内容だった。伊丹ボーイズに在籍した中学時代には侍ジャパンU-15代表に選出されている。まだ粗さは残るものの、スケール感たっぷり。今春の活躍次第では、世代トップランナーの仲間入りを果たすだろう。
経験豊富な実戦派左腕、横浜の奥村頼人photo by Ohtomo Yoshiyuki
奥村頼人(横浜3年/179センチ・82キロ/左投左打)
勝負どころで力を発揮する左腕。昨秋は織田翔希の陰に隠れる形にはなったが、下級生時から名門のエース格を張った実力を持つ。横浜では成瀬善久(元・ロッテほか)、伊藤将司(阪神)の系譜を受け継ぐ、実戦派左腕だ。最速146キロのストレートは打者の手元で伸び、変化球でも安心して勝負できる。昨秋の明治神宮大会準決勝・東洋大姫路戦ではタイブレークで2回無失点。緊迫した場面でも腕を振れる勝負強さも持ち味だ。滋賀・野洲ボーイズからさらなるレベルアップを求めて横浜の門を叩いた。シャープなスイングで外野の間を抜く打撃もハイレベルだ。
最速144キロの速球とチェンジアップで三振の山を築く東海大札幌の矢吹太寛photo by Kikuchi Takahiro
矢吹太寛(東海大札幌3年/179センチ・69キロ/左投左打)
順調な歩みを見せる北の左腕。昨秋は背番号7ながら中心投手として、全道大会優勝を経験。最速144キロの快速球とタイミングを外せるチェンジアップを武器に、公式戦31イニングで33奪三振を記録した。いかにも細身ながら、ひと冬越えてどれくらいたくましさを増しているか。一塁走者を見ながら投球モーションに入れて、緩急を使って打者にフルスイングさせないうまさも光る。ストレートがもう一段ボリュームアップできれば、大化けの可能性も十分にある。OBの門別啓人(阪神)を超える存在になれるか。
昨年夏の群馬大会で10者連続奪三振をマークした健大高崎の下重賢慎photo by Ohtomo Yoshiyuki
下重賢慎(健大高崎3年/182センチ・82キロ/左投左打)
巨大戦力に潜む隠れた実力派。昨夏の群馬大会では大会記録を塗り替える10者連続奪三振をマーク。夏の甲子園でも好投し、佐藤龍月の不在の影響を感じさせなかった。右足をインステップし、斜めの角度から左腕を振る変則タイプのムード。それでも最速145キロを計測するストレートに、ツーシームという絶対的な決め球があるのも強み。昨秋の公式戦ではチーム最多の30回1/3を投げ、防御率は驚異の0.30。先発投手としての安定感は石垣をもしのぐ。健大高崎のセンバツ2連覇のキーマンと言っていいだろう。
昨年夏の甲子園でも活躍した早実のエース・中村心大photo by Ohtomo Yoshiyuki
中村心大(早稲田実3年/177センチ・83キロ/左投左打)
大仕事をやってのける雰囲気が漂う左腕。京都の軟式クラブ・京都ベアーズから東京の歴史ある早稲田実へ進学。昨夏の西東京大会までは好不調の波が激しかったが、甲子園2回戦の鶴岡東戦で覚醒。延長10回を投げ抜き、完封勝利を挙げた。最速145キロの快速球も光るが、130キロ台で鋭く変化するカットボールが打者の脅威になる。課題だった制球も安定しており、昨秋は公式戦40イニングで45奪三振をマークした。ェールに包まれた身長196センチ右腕・浅木遥斗の登板があるかにも注目だ。
2年連続センバツ出場を果たした日本航空石川の蜂谷逞生photo by Ohtomo Yoshiyuki
蜂谷逞生(日本航空石川3年/178センチ・75キロ/右投右打)
質のいい球を投げ込み、着実にゲームメークする右腕。絶対的エースとして北信越大会準優勝、2年連続センバツ出場の原動力になった。バランスのいいフォームから放たれる最速145キロの快速球はまだ増速気配があり、キレのあるスライダーでも三振を奪える。あとはマウンドから打者を威圧する怖さが出てくれば、鬼に金棒だ。昨春のセンバツでは背番号1をつけながら、救援登板して1アウトしか奪えず降板。今春は何としても聖地で借りを返したい。昨秋はコンディション不良だった逸材左腕・猶明光絆が復活すれば、強力な投手陣が形成される。
恵まれた体躯から力強いボールを投げる高松商・行梅直哉photo by Terashita Tomonori
行梅直哉(高松商3年/183センチ・91キロ/右投右打)
大舞台でアピールしたい速球派右腕。昨秋は背番号10ながら、リリーフとして公式戦6試合、19回2/3を投げて防御率0.46を記録。四国大会準優勝に貢献した。分厚い下半身でどっしりと立ち、スリークォーターの角度から鋭く右腕を振ってリリース。昨秋に最速147キロを計測した剛速球で押す投球が持ち味だ。高松商は安定感のあるエース右腕・末包旬希をはじめ、好投手が目白押し。四国大会で登板のなかった高橋友春が昨年11月の練習試合で152キロを計測し、甲子園での登板がなるかも注目される。
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