退職金で「クラウンに乗り換える」と言う58歳の夫。貯金が「600万円」しかないのですが、年金だけで生活できるのでしょうか?

退職金で「クラウンに乗り換える」と言う58歳の夫。貯金が「600万円」しかないのですが、年金だけで生活できるのでしょうか?

3月15日(土) 19:10

トヨタの「クラウン」は日本初の純国産者であり、高級セダンとして君臨し続けてきたといわれており、あこがれている方もいるでしょう。中には退職金が出たら乗り換えたいと考えている人もいるかもしれません。 今回は「老後2000万円問題」が話題となっている中、貯金が600万円の状況で高額な車を購入することはできるのか、年金だけで生活することは可能なのかについてまとめました。

老後の退職金と生活費の平均はどれぐらい?

厚生労働省の「令和5年 就労条件総合調査」によると、45歳以上、勤続20年以上で定年退職する場合、退職金の平均額は「管理・事務・技術職」の大学・大学院卒業で1896万円、高校卒業が1682万円、「現業職」の高校卒業で1183万円です。
 
また、総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要」のデータによると、65歳以降に必要な生活費(消費支出と税金や社会保険料の合計)の平均額は、夫婦2人の世帯で28万2497円となっています。
 

年金だけで生活することは可能?

同調査によると、年金の平均受給額は夫婦二人世帯で月額21万8441円です。この金額は、平均支出に対しておよそ6万4000円不足しています。年間では約77万円の不足となり、貯金が600万円の場合約8年分しかカバーできません。
 
仮に60歳で定年を迎えた場合、年金の受給開始年齢の65歳になるまでの生活費を確保する必要があります。また、収入が年金のみに限られる場合、平均程度の支出が続けば将来的に不足分を賄えなくなる可能性があり、老後の生活において不安が残ります。
 
急な出費や物価上昇なども考慮すると、年金だけで生活することは厳しいといえるでしょう。年金受給分だけで不足する場合、貯蓄を取り崩さなければならないでしょう。定年後、ゆとりがある生活を送るためには、退職前に老後資金を少しでも多く確保しておくよう意識する必要があります。
 

クラウンを購入した場合に考えられるリスク

クラウンの新車は440万円~830万円(税込み)の価格帯で販売されています。また、オプションによってはさらに価格は高くなるでしょう。さらに、購入後は駐車場代やガソリン代、保険料、メンテナンス費などの維持費が必要です。
 
老後の生活に必要な費用については、生活費に加え、将来の医療費や介護に必要な費用なども考慮しなければなりません。また、高齢になると免許を返納する可能性もあることから、車の購入には慎重になるべきといえるでしょう。
 

老後資金として重要な退職金

老後に必要な資金の目安として「2000万円」という数字がよく挙げられますが、これは、モデルケースの毎月の不足分、約5万5000円を賄うために必要と考えられている金額です。20年で約1300万円、30年で約2000万円が必要になるという金融庁の試算に基づいています。
 
毎月の不足額がこれよりも多くなる場合は、さらなる備えの資金が必要でしょう。老後を安心して暮らすには、現役で働いている間にできる限り貯蓄を増やし、退職金も生活資金として活用する必要があるといえます。
 

収入が年金のみに限られると、生活費が不足する可能性がある。車の購入は退職後の生活を考えて慎重に検討しよう

各世帯によって支出額や年金受給額などの状況は異なりますが、平均値から見ると、年金収入のみでゆとりのある生活することは厳しいといえるでしょう。そのため、老後の生活資金が十分ではない状況で、退職金をクラウンの購入に充てることは非常にリスクが高い選択と言わざるを得ません。
 
十分な貯金があるとはいえない場合、退職金は老後の生活資金として確保しておくことをおすすめしますが、もし車を購入するなら必要最小限の車を選び、余剰資金は貯蓄にまわすといった工夫をするといいでしょう。
 
また、定年後は生活費を見直して無駄な出費をおさえたり、何らかの形で収入を得る方法を模索することも、安定した老後の生活には有効です。
 
老後の生活は長期にわたる可能性があるため、目先の欲求に惑わされず、長期的な視点で将来の生活設計を行う必要があるでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和5年 就労条件総合調査の概況 (17ページ)
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要(18、19ページ)
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 (10、16,21ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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