舞台『マスタークラス』初日前会見より、左から)望海風斗と森新太郎(演出)
3月14日(金) 10:00
宝塚歌劇団雪組のトップスターとして活躍し、退団後も『ムーラン・ルージュ!』『next to normal』など数々のミュージカルで注目を集める望海風斗が初めてストレートプレイに挑むことも話題の舞台『マスタークラス』が2025年3月14日(金)、東京・世田谷パブリックシアターで開幕する。
望海が演じるのは20世紀最高峰のオペラ歌手マリア・カラス。才能に奢らず訓練を怠らず、そう長くはない生涯の中で栄枯盛衰を味わい、後世の歌手に多大な影響を与えた彼女は、現役引退後も米ジュリアード音楽院で次世代の育成に努めた。本作はオペラファンであり、カラスの大ファンでもあった劇作家テレンス・マクナリーが、ジュリアード音楽院で行われたカラスのマスタークラスの講義録をもとに、その栄光と挫折の人生を描いたもの。
1996年にブロードウェイで初演され、トニー賞・最優秀演劇作品賞を受賞。日本では96年、99年にパルコ劇場で黒柳徹子が主演しているが、26年ぶりの上演となる今回は、望海を主演に迎え、森新太郎が演出を手掛ける。
13日、演出の森と主演の望海が初日を前にした心境を語った。
森は「とにかく本がとても優れています。客席を講義を受ける生徒に見立てて物語が進行していくというのが、他に類をみない面白さで、私は演出家としてまずそこに惹かれました。また、セリフが何もかもことごとくよくできていて、機知に富んでいる。観客の皆さんの心を一瞬で鷲掴みにするようなキラーフレーズの連続で、ずっと飽きずに見られる」と戯曲の魅力を話す。「セリフ量が膨大で、イタリア語やフランス語なども話す上、音楽の素養が要求される。この完璧な戯曲に唯一弱点があるとしたら、これを演じきれる俳優さんがほとんどいないだろうなということ。勇気のある俳優さんがいないことには、この作品は成立しない」とも。
2017〜21年、宝塚歌劇団雪組のトップスターとして活躍し、歌・演技・ダンス三拍子揃った実力ある望海が初めてのストレートプレイとして本作に挑むことについて、森は「とてもラッキーなことに、私が呆れるほどこの作品に前向きに取り組む勇気ある俳優さんがいた」とコメント。稽古は「とにかく大変だった」というが「望海さんが脱皮を始めた時期がありました。僕がイメージしていたマリア・カラスを遥かに凌駕するエネルギーと美しさがどんどん溢れ出て、感動してしまった。正直にいうと、もっと稽古を続けて、この感動を僕が独占したいぐらい」と望海を絶賛し、「初日の幕が開くということで、この感動をお客様にちょうどいい時期に手渡せると思っています」と語っていた。
一方の望海は「私はこの本を読んだときに、大変なことは分かるんですけど、何がどう大変なのかあまり分からずにいたんです。面白い本だし、ぜひ上演してほしいし、上演するなら出演したいし、それならマリア・カラスの役をやりたいと思っていたんですけど、後になって、私はとんでもない作品に挑戦することに気がつきました」と笑う。そして「後先考えずに前のめりでやりたいことに挑戦してしまうところは、私の悪いところでもあるんですが、今回は怖さを知っていたらきっと挑戦できなかった」と話す。
稽古中に“脱皮”をしたきっかけを問うと、望海は「毎日毎日、やってもやっても森さんに追いつけない。あの手この手で仕込んで、これで森さんを納得させられるだろうと思っても、もうボコボコ(笑)。そうして、出すものがなくなった後に、脱皮できるんですね。そこまでいかないといけないんだということが分かりました」。本作は、望海がこれまで主戦場としてきたミュージカルではなく、ストレートプレイとなるが「マリアのセリフにも『音楽に身を委ねればいい。その音楽の中に全部が入っているから』というセリフがあるんですが、本当にその通り。ミュージカルの場合は、音楽が80%助けてくれるので、私は20%を出せばいいだけなんですが、今回は音楽がない分、全部自分で補わないといけないのは本当に大変なことだと痛感しています」と言う。
ただ、決して後ろ向きではない。「年齢を重ねていく中で、これだけ大きな壁にぶつかる挑戦をさせてもらえることはすごくありがたいです。この壁を越えた先の自分は、まだちょっと予想がつかないですけど......でも、マリア・カラスの言葉たちがきっとこれから舞台で生きていくにあたって、ものすごく大きな支えや力になると思っています。出会ってしまった、安易なところに戻れないという怖さもありますけどね」(望海)と語っていた。
東京公演は3月23日(日)まで。その後、長野公演が3月29日(土)・30日(日)にまつもと市民芸術館にて、愛知公演が4月5日(土)・6日(日)に穂の国とよはし芸術劇場PLAT、大阪公演が4月12日(土)〜20日(日)、サンケイホールブリーゼに予定している。
取材・文・撮影:五月女菜穂
<公演情報>
『マスタークラス』
原作:テレンス・マクナリー
翻訳:黒田絵美子
演出:森新太郎
出演:
望海風斗/池松日佳瑠、林真悠美、有本康人、石井雅登/谷本喜基
(スウィング)
岡田美優、中田翔真
【東京公演】
日程:2025年3月14日(金) ~3月23日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
【長野公演】
日程:2025年3月29日(土)・30日(日)
会場:まつもと市民芸術館 主ホール
【愛知公演】
日程:2025年4月5日(土)・6日(日)
会場:穂の国とよはし芸術劇場 PLAT
【大阪公演】
日程:2025年4月12日(土) ~4月20日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/masterclass/