『ゴッホ展家族がつないだ画家の夢』展覧会サポーターの松下洸平
3月14日(金) 8:00
ポスト印象派を代表するオランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホの作品が、今日までどのように伝えられてきたのか。ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリーコレクションに焦点を当てた日本初の展覧会『ゴッホ展家族がつないだ画家の夢』が今夏より2026年にかけて大阪、東京、愛知の3会場で開催される。3月13日(木)、同展の報道発表会が開催され、会場となる3館の館長(大阪市立美術館・内藤栄館長、東京都美術館・高橋明也館長、愛知県美術館・平瀬礼太館長)と東京都美術館の大橋菜都子学芸員、そして展覧会サポーターを務める俳優・アーティストの松下洸平が登壇した。
『ゴッホ展家族がつないだ画家の夢』では、オランダ、アムステルダムにあるファン・ゴッホ美術館の作品を中心に30点以上のファン・ゴッホ作品に加え、日本初公開となるゴッホの手紙4通を含めおよそ75点を展示。画家の家族によって、ファン・ゴッホのファミリーコレクションがいかに築かれ、受け継がれ、拡張されてきたのかをつぶさにたどっていく。
東京都美術館の高橋明也館長は「日本では本当に毎年のようにいろいろな形で『ゴッホ展』が開催されていますが、ファミリーの話に特化したテーマ性の強い展覧会は本当にレアだと思います」と話し、さらに「近代の美術家たちがどれだけ評価されるかは、その後に残された周りの人たちがどれだけ努力してその人を顕彰し、その資料や作品を集め、それを広げていくか、それに尽きる。ファン・ゴッホの場合は弟・テオの妻のヨハンナ(ヨー)です。ファン・ゴッホの死後、テオもすぐに亡くなってしまい、ファン・ゴッホの作品をヨーが受け継ぎ、獅子奮迅の活躍をしたんです。今回の展覧会は、そうしたファミリーに対するオマージュという性格も強く持っているので、そういった意味でファン・ゴッホに新しい光を当てられるんじゃないかと思っています」と、同展の企画意図について説明した。
展覧会は全5章で構成。第1章「ファン・ゴッホ家のコレクションからファン・ゴッホ美術館へ」では、コレクションを継承し、ファン・ゴッホ作品を世界へ広めることに貢献した3人の家族、フィンセントの弟、テオドルス(愛称:テオ)と、その妻のヨハンナ(愛称:ヨー)、そしてテオとヨーの息子のフィンセント・ウィレム(愛称:エンジニア)を紹介する。第2章「フィンセントとテオ、ファン・ゴッホ兄弟のコレクション」では、フィンセントとテオ、ふたりの兄弟が収集したコレクションを展示。フィンセントが熱心に購入していたという浮世絵版画なども紹介される。
そして、第3章「フィンセント・ファン・ゴッホの絵画と素描」はオランダ時代から終焉の地であるオーヴェール⁼シュル⁼オワーズまで、時代を追ってファン・ゴッホの画業の展開をたどることができる贅沢な章になる。
東京都美術館の大橋学芸員は、「これが実現できるのは、本展が、世界最大のファン・ゴッホコレクションを誇るファン・ゴッホ美術館の収蔵品による展覧会だからこそです」と話した。同館には現在、ファミリーが受け継いできた200点を超える絵画と、500点以上の素描や版画を収蔵。本章では、約10年という短い画業のなかで新しい表現に挑み続けたファン・ゴッホの足跡を辿っていく。
続く第4章「ヨー・ファン・ゴッホ⁼ボンゲルが売却した絵画」では、フィンセント、そしてテオの死後、作品を受け継いだヨーが、作品を売却したことを示す詳細な資料などが展示される。「ヨーが定期的に作品を売却したのは、シングルマザーとして生計を立てていくためでもありましたが、ファン・ゴッホが正当に評価されるために活動した結果でもありました」(大橋学芸員)
そして第5章「コレクションの充実作品収集」は、ファミリーコレクションを基に設立されたファン・ゴッホ美術館の拡張するコレクションを紹介。ここでは、先輩画家であったアントン・ファン・ラッパルトに充てたものなど初来日となるゴッホの貴重な手紙4点も展示される。「ゴッホの手紙というのはとても有名ではありますが、実物については、紙の質が必ずしも良いわけではなく、色褪せしやすいので、保存の観点から展示されることは滅多にありません。今回は非常に貴重な機会となります」(大橋学芸員)
さらに同展では、各会場で幅14メートルを超える空間でファン・ゴッホの作品世界を体感するイマーシブ・コーナーも設置される。高精細映像で《花咲くアーモンドの枝》などファン・ゴッホ美術館の代表作などを投影するほか、3DスキャンによりCG映像にした《ひまわり》(SOMPO美術館蔵)の映像も紹介されるという。ファン・ゴッホならではの筆致や絵具の使い方など、実物の鑑賞では気づきづらい新たな発見があるだろう。
報道発表会の最後には、同展のサポーターを務める俳優・アーティストの松下洸平が登壇。
幼少期から油絵を学び、美術系の高校で油絵を専攻していたという松下は、「学生の頃はゴッホの作品を、僕なりに勉強させていただいたこともあったので、ゴッホという存在は、特別な思い入れのある画家のひとり。なので、その作品を全国の皆様にお届けできる、そのサポーターとして、何か自分にできることは一生懸命やらせていただきたいと思います」と挨拶。
出品作品のなかで特に気になる作品について聞かれると《オリーブ園》を挙げ、「とても穏やかな色彩と風景だなと思って、それがとても印象的でした。亡くなる少し前に描かれた作品とのことですが、作品に流れている風がすごく穏やかで、出会いと別れを経験して、自分自身とも向き合い、フィンセントの中でも心の中に少し穏やかな風が吹き始めた頃、そういう印象を受けました」と心惹かれた理由を語った。
3月6日に38歳の誕生日を迎えた松下。27歳から37歳まで、10年という短い画業のなかで多くの作品を残したファン・ゴッホの生涯について、感じることはあるか?と問われると、
「時代も境遇も違いますが、僕自身も20代の頃はフィンセントと同じように、自分の作り出すものが間違ってないとは思いつつも、なかなか世の中の方の目に留まらないような経験も少なからずありました。そこで折れずに、めげずにこの仕事を全うできたのは、やはり根拠のない自信であったりとか、自分自身の作るものが間違ってない、いつか誰かの目に留まると思って信じ続ける力だったような気がします。ゴッホもおそらくそういった思いを強く持って描き続けてきたと思うので、その力強さには何か共感する部分が少しあります」と、同じ表現者として共感するところを明かした。
<開催概要>
『ゴッホ展家族がつないだ画家の夢』
■大阪展
会期:2025年7月5日(土)~8月31日(日)
会場:大阪市立美術館
■東京展
会期:2025年9月12日(金)~12月21日(日)
会場:東京都美術館
■名古屋展
会期:2026年1月3日(土)~3月23日(月)
会場:愛知県美術館
公式サイト:
https://gogh2025-26.jp/