EASL取材メディアから注目されるBリーグ発展と河村勇輝の存在「ハートの大切さを教えてくれた」

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EASL取材メディアから注目されるBリーグ発展と河村勇輝の存在「ハートの大切さを教えてくれた」

3月12日(水) 9:00

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Bリーグ勢が連覇達成。改めて存在感を示した©EASL

Bリーグ勢が連覇達成。改めて存在感を示した©EASL





EASLの現場から見たBリーグの現在地後編

【EASLの意義】3月7日から9日にかけて、マカオで開催された「東アジアスーパーリーグ(EASL)・ファイナル4」で、Bリーグ代表の広島ドラゴンフライズが優勝し、昨年度の千葉ジェッツに続いて日本勢が連覇を達成した。この勝利に各国のメディアは高い関心を寄せている。

EASL決勝戦後の会見では、フィリピン出身のカーロ・サカモス記者が広島の朝山正悟ヘッドコーチに「(フィリピン・)PBAのチームはあなたたちからどのようなことを学べるでしょうか」という質問をした。これに対して朝山氏はPBAの状況に詳しくないと前置きをしつつ、「スタッフの体制やトレーニングの施設など環境面も含めて、日本のレベルが少しずつ上ってきたというのが大きな要因ではないか」と答えた。

昨年と今年のファイナル4では、いずれもバスケットボールの盛んなフィリピン勢は出場を果たせていない。PBAでは外国籍選手が1名しか認められていないことが、2名のプレーが許されるEASLで苦戦している要因のひとつとなっているであろうことは想像に難くない。

フィリピンのサイト「SPIN.ph」などで執筆をしているサカモス氏には、なぜ会見で朝山HCにそのような質問をしたのかを聞くと「フィリピンのチームがEASLでもレベルアップをしてほしいし、それはPBAにおいても同様だから」と話した。

Bリーグには2人までがコートに立つことができる外国籍枠とは別にもう1人、「アジア枠」の選手がプレーできる制度があり、現在、多くのフィリピン出身選手が日本のチームに所属している。そのためBリーグの認知度は同国で高く、「若い選手もPBAよりもBリーグでプレーすることを望むケースが増えている」とサカモス氏はいう。

「Bリーグはとても競争力の高いリーグです。外国出身の選手が2人から3人コートに立つことができているのは、PBAが学ぶことができる点です」

広島がニュータイペイキングスを破った準決勝後の会見では、台湾の記者から朝山HCにこのような質問が投げかけられた。

「アシスタントコーチなどがパソコンを使って試合中に分析をしていたと思いますが、そうしたことはBリーグでは主流で、こちらのほうが早く分析ができるのでしょうか」

Bリーグでは多くのチームがパソコン等を駆使して映像分析を行なっているが、これにはテレビの中継フィードを分配してもらうインフラがなければ成り立たない。上記の台湾の記者がこのような質問をしたのは、台湾のリーグではまだこのような慣習がないと推察できる。いずれにしても、他国リーグでの取り組みを学び、それを競技面、ビジネス面での発展につなげる機会をもたらしているとすれば、EASLの意義は大きいといえる。

【人気の高い河村勇輝】フィリピンで著名なコラムニストで今回のEASLファイナル4では英語放送のコメンテイターも担ったホアキン・ヘンソン氏は、昨年度のファイナル4は千葉ジェッツが富樫勇樹をはじめとする「個人の力量」を基に優勝を果たしたのに対し、今回の広島が「チーム力」を前面に出して頂点に立ったことに、また別の感慨を憶えている様子だった。

サカモス氏と同様、ヘンソン氏もBリーグをレベルの高いリーグだとしており、「フィリピンの最良の選手たちがBリーグでプレーをし、その他多くがBリーグでプレーをしたがっているのにも合点がいく」と語った。

30年以上のバスケットボール取材歴があるというヘンソン氏は、阿部成章氏(元日本鉱業)や谷口正朋氏(元日本鋼管、故人)、岡山恭崇氏(元住友金属)ら往年の名選手の名前を出しながら、「日本には元から優れた選手たちがいて、彼らが礎を築いていた」とし、ゆえにBリーグの発展にも驚かないとほほえんだ。

ヘンソン氏は言う。

「日本はアジアだけでなく、世界的にも誇ることができるようなすばらしいバスケットボールを展開しています」

こうした他国のメディア関係者に日本のバスケットボールの印象について取材をしていると、彼らは軒並み河村勇輝(NBAメンフィス・グリズリーズ、2ウェイ契約)の名前を出してくる。

香港で「852sportsentertainment」というサイトのメイン編集者として活動するトーマス・ウォック氏は、「河村が香港でもっとも認知度のある選手だ」と話した。彼は河村の人気の理由をこう述べてくれた。

「河村勇輝という選手は、身長の高さよりもハートこそが大切なのだということを見せてくれています。身長がないことは、バスケットボールをプレーすることに対しての情熱があれば問題ではないのです」

今シーズンから香港出身のオリバー・シュウが、B3岩手ビッグブルズでプレーをしていることで日本のバスケットボールへの関心を高めているというウォック氏は、Bリーグが今後さらなる発展を遂げていくと考えており、世界でも「最高のリーグのひとつ」となり「アジアの代表格になるはずだ」と評した。

河村に関しては、韓国KBSのバスケットボールコメンテーター孫大範氏が、Bリーグを経てNBAに挑戦している点で興味深い考察をしている。同氏は、田臥勇太(宇都宮)などこれまでNBAのドアを叩く日本人はいたため、河村がそれに続いていること自体に驚きはないというが、「日本協会なども含めたバスケットボール界全体が、アメリカでの彼の夢の実現のあと押しをしている点がこれまでにないことだ」と話した。

【国際化を目指す琉球】中国でバスケットボールサイトを運営している趙環宇氏が、前編で琉球ゴールデンキングスについて言及しているが、それは同チームがBリーグのなかで最も国際化に力を入れてきたことが認知されてきた表われでもある。

琉球は、EASLの前身にあたる「スーパー8」や「テリフィック12」に出場しており、さらに昨年9月にはイタリア・シチリア島での国際招待大会へも遠征している。

元NBAニュージャージー・ネッツ(現ブルックリン・ネッツ)職員で現在は琉球のゼネラルマネージャーを務める安永淳一氏は、Bリーグシーズン直前、あるいはシーズン最中に並行して行なわれる国際大会への参加は「スケジュール的には本当に厳しい」としながら、そうした舞台に飛び込んでいく価値はあると言葉に力を込める。

「キングスの名前は明らかに広がっています。バスケットボール界にいる人で知らない人はいないでしょうし、絶対、琉球ゴールデンキングスの名前が出るようになっていると思います」

安永氏はこのように語り、地道に国外の大会へ出場してきたことが奏功していると手応えを感じている様子だった。

【先進的なBリーグ】昨年度のファイナル4の際にもBリーグがEASLで果たす役割の大きさについて触れていたヘンリー・ケリンズCEO。彼はBリーグが競技(アジア枠の導入など)、ビジネス(NBAや豪NBLとのパートナーシップなど)の両面において「とても、とても国際的なアプローチをしている」ことに変わらず頼もしさを感じているようだ。

ケリンズ氏はまた、年々収益を伸ばしているBリーグと傘下の球団の取り組みについて、「彼らがアジアだけでなく、世界を見渡しても最も先進的な考え方を持っているのではないか」と賛辞を述べた。

広島の優勝でBリーグ勢にとって2年連続のEASL制覇となり、競技面での強さがより多くの人々の関心を誘った。しかしさまざまな国のメディアに話を聞いていると、競技面においてだけでなくビジネス面においても成長が止まらず、また河村勇輝のような選手を輩出するBリーグに対する関心は高いのだと感じさせられた。

2024-25では10チームが参戦したEASLには来シーズン、モンゴルリーグからの参戦が決定している。その後も、チーム数の拡大が見込まれる。この国際リーグが発展をしていく過程において、特別な存在感を放つ日本とBリーグの果たす役割は大きくなっていきそうだ。



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