何年経ってもF355マジックは健在だ。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|F355GTS編

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何年経ってもF355マジックは健在だ。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|F355GTS編

3月10日(月) 3:11

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この記事は【年月を経て美しくなるばかりの308。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|308GTB編】の続きです。

【画像】乗り心地も素晴らしく、よく練られ鍛えられたフェラーリF355GTS(写真5点)

348とNSX
本来ならばここで308/328世代に代わるモデルとして348tbを採り上げたいところだが、いかんせん完成度が低かった。新開発のモノコックボディに3.4リッターで300bhpを発するV8エンジンを縦置きに積み、F1マシンでもテストされていた横置きギアボックスを組み合わせるというモダンさであったにも関わらず、その性能には不満が募った。それで思い出したけれども、348がデビューした際に旧型となった(けれども未だ優れていた)328と共にテストした際、『PerformanceCar』誌編集長がスピンを避けようとしてコーナー内側の芝生に突っ込んだものだ。とにかくバランスを欠いていたと言わざるを得ない348の動的パフォーマンスも四年後にスパイダーが登場する頃にはかなりまともになっていたが、時代には取り残されつつあったと言っていい。ホンダがNSXを発表し、ミドシップスポーツカーの新たなスタンダードを築いていた。NSXはそのハンドリング性能や実用性、洗練度においてスーパーカー界に大変な衝撃をもたらしたのだった。

F355
我々の期待に十分応えてくれたマラネッロ製モノコックボディの V8ミドシップカーといえば、1994年に登場したF355だろう。348からわずかな変更を加えただけで見栄えは大いに変わり、さらにその中身もまた多くを348から引き継いでいたというのに、もはやそこに348のアンバランスはまるで見当たらなかった。F355のスタイリングは、ややエッジを柔らかくしたセンセーショナルなもので、見てよし走ってよし、V8エンジンは3.5リッターとなって5バルブ化され、最高出力は375bhpまで跳ね上がった。レッドゾーンに至ってはそれまでに比べると成層圏突入レベルというべき8500rpmにまで達していたのだ。

マラネッロで初めてテストした際、エンジンやスタイリングはもちろん、トータル・パッケージの素晴らしさに感銘を受けたことを思い出す。なんでもできてしまうという印象だった。30年が経った今、スコット・テイラーの所有する、今となってはとてもタイトなGTSのコクピットに乗り込んでみれば、ダッシュボード端のエアベントやグリルといった348から受け継ぐ奇妙な遺物も見つかるものの、ドライビングポジションは低く、ステアリングはカートのように少し後ろに傾いていて、それがまた良い具合にはまってくれる。

エアバッグ付きのステアリングホイールは弁当箱のように不格好だが、リムそのものはまだしも薄く、タウンスピードでは極めて軽く応答性もしっかりしている。ドライサンプV8ユニットはかなり低く置かれていて(ちなみにその後のモデルではさらに低くなり、しまいには床下に仕舞ったかと思うほど低められたが…)、すべての重さが腰のあたりに集中するような感覚がある。これが安心感につながるのだ。

2000rpmを超えるか超えないかあたりから共鳴音が出はじめ、そこから先はとてつもなくスムーズかつ軽やかに、そして無理なく回っていく。トルクに多少物足りなさを感じるときもあるが、たとえばアップシフト時ならギアレバーを動かすと同時に回転数を少し上げてやるといいだろう。もっとも滑らかで驚くほどしなやかな動きをみせるギアレバーと自由自在に回せてしまえそうなエンジンが手の内にあるのだから、いつでもどこでも9000rpmまでぶん回したくなってしまうものだけれど!

F355を元気よく走らせるのは容易い。乗り心地も素晴らしく、よく練られ鍛えられた車のドライブフィールだと感じる。一方でGTSの場合ではルーフパネルを開けて走ると、ボディは多少軋み、ホイールからは少々揺れも感じるだろう。もちろんパネルを戻して走ればクーペのGTBと同じくらいソリッドになってくれる。急なコーナーに立ち向かえばアジャイルであると同時に落ち着きもあって、仮にリアが自然にスリップしたとてスロットルコントロールもしやすく、何よりすべてが予測可能でカートのように思い通りのラインを描くことができる。何年経ってもF355マジックは健在だ。

・・・360モデナ編に続く。


編集翻訳:西川 淳Transcreation:Jun NISHIKAWA
Words: John BarkerPhotography: Alex Tapley


1996年フェラーリ F355 GTS
エンジン:3496cc、40バルブ V8、DOHC、フラットプレーン・クランクシャフト、ドライサンプ、ボッシュ・モトロニック
最高出力:375bhp/ 8250rpm最大トルク:268lb-ft/ 6000rpm
トランスミッション:6段 MT、トランスアクスル、後輪駆動ステアリング:ラック&ピニオン、パワーアシスト
サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、テレスコピック/ダンパー、アンチロールバー
ブレーキ:ベンチレイテッド・ディスク、ABS車重:1350kg最高速:183mph、0-62mph加速:4.7sec
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