この記事は【308GTB、F355GTS、360モデナ。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|序章】の続きです。
【画像】3台の比較テストは308GTBから始めることにした(写真6点)まず308GTBから
マラネッロ製V8ミドシップモデルの進化の軌跡を再確認すべく、テストは308から始めることにした。左ハンドル仕様であるということはペダル類がかなり右にオフセットして配置され、小さなヴェリア製の計器類がいちいちイタリア語で表示されているなど、(英国人である筆者にとっては)かなりエキゾチックな雰囲気であることを意味する。
視界も良好なコンパクトモデルで、インテリアはとてもすっきりとシンプルにまとまっている。ただし、シートの間にはスライダーやスイッチの並ぶ機能操作クラスターがあって、なかにはエアコンディショナー用もあったが、茹だるような暑さの日に限って故障していた。
キーを捻る。スターターによる回転音が聞こえた。少しスロットルを開けると、肩越しにV8エンジンが目覚め始めるのが分かる。まるで8気筒揃うまでひとつずつ根気よく起こしているかのようだ。アイドリングではちょうどフィアットの4気筒ツインカムエンジンを2機シンクロさせたように唸っている。とはいえツインチョークキャブレターと、そして何よりもフラットプレーンクランクの採用に伴う点火順序によって、その本性を隠しきれずにいた。四角くフラットなエアインテークの下に置かれた4基のウェバー・ツインチョークキャブレターを通じてエアを取り込み、スロットルを軽く開けるとまず、適度な応答性と低回転域でも十分なトルク特性、さらには力強いスタッカートを奏でる吸気音によって、とても扱いやすい性質の持ち主であることがわかるだろう。
クラシックフェラーリらしく5段マニュアル変速で、嬉しいことにゲートを厳格に切り込んだ例のスチール製シフトベースがギラリと光っていた。左上に押し込むとリバース、そして左手前が1速だ。回転数をしっかり合わせることさえできれば、実に滑らかで心地よい変速フィールを楽しむことができる。
308に現代のスーパーカーのような速さは望めないし、誰も望んではいないだろう。なにせパワーウェイトレシオは一昔前のホットハッチ並み。マラネッロによると0-60mph加速は6.7秒にすぎず、最高速も157mph(約250km/h)だ。7000rpmまで気持ちよく吹き上がるエンジンには明らかなスイートスポットがある。3000~6000rpmのエンジンサウンドとフィールはくせになるほど胸を空く。
ノンアシストのステアリングは超低速時こそ力を必要とするものの、動き出してさえしまえばグッと軽くなり、しっかりとフィードバックもあって非常に扱いやすくなる。かなりスローなステアリングとはいえ調子を合わせることは容易で、扱い心地も悪くない。連続するコーナーを無意識のうちに上手につなぎあわせ、気分よくクリアすることだってできてしまう。超初期型には14インチと小さめのアロイホイールに205/70サイズのミシュランXWXを履いていたが、この試乗車には16インチホイールにフロント205/50、リア225/50というピレリ・チントゥラートP7が奢られていた。
タイトなコーナーを真剣に攻め込むとGTBはモダンな911と少し似た振る舞い、フロントが滑らかな動きを失う素振りをみせる。これを回避しようと思えば、スロットルを開ける前にノーズを下げてタックインさせておき、荷重移動とエンジン重量を利用してリアタイヤを積極的に路面へと貼り付けておく必要がある。もっとも、苦労があったとしてもその程度のことで、ほとんどの場合308であればその音や変速、シャシーの軽快な動きを思う存分に楽しみつつV8エンジンの愉悦を堪能できることだろう。
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F355GTSのインプレッションに続く。
編集翻訳:西川 淳Transcreation:Jun NISHIKAWA
Words: John BarkerPhotography: Alex Tapley
1979年フェラーリ 308 GTB
エンジン:2927ccV8、DOHC、フラットプレーン・クランクシャフト、ドライサンプ、ウェバー40DCNF×4基
最高出力:252bhp/ 7700rpm最大トルク:209lb-ft/ 5000rpm
トランスミッション:5段 MT、トランスアクスル、後輪駆動ステアリング:ラック&ピニオン
サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、テレスコピック/ダンパー、アンチロールバー
ブレーキ:ディスク、ABS車重:1300kg最高速:157mph、0-62mph加速 6.7sec
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