笑福亭鶴瓶&原田知世が語り合う、理想の年齢の重ね方『35年目のラブレター』夫婦役は「お互いしか考えられない」

『35年目のラブレター』で夫婦役を演じた笑福亭鶴瓶&原田知世にインタビュー!/撮影/河内彩

笑福亭鶴瓶&原田知世が語り合う、理想の年齢の重ね方『35年目のラブレター』夫婦役は「お互いしか考えられない」

3月9日(日) 3:30

ある夫婦の実話をもとに映画化した『35年目のラブレター』(公開中)で、夫婦役として共演を果たした笑福亭鶴瓶と原田知世。主人公の一途さや、彼を支え続けた妻の強さとやさしさを、鶴瓶&原田が鮮やかに体現。関西弁での掛け合いも心地よく相性のよさを感じさせる2人が、夫婦の育んだ温かな絆を見事にスクリーンに刻み込んでいる。本作の夫婦役を演じるのはお互いしか「考えられない」と口を揃えた鶴瓶と原田が、共演の感想をはじめ、理想の年齢の重ね方を語り合った。
【写真を見る】本物の家族写真のよう!笑福亭鶴瓶と原田知世のほっこりツーショット
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■「西畑夫妻の奥さんは、ホンマにすごい人」(鶴瓶)

読み書きができないまま大人になってしまった主人公の西畑保。そんな彼のそばにいつも最愛の妻、皎子(きょうこ)がいた。保は貧しい家に生まれ、ほとんど学校へ通えずに大人になり、生きづらい日々を過ごしてきたが、皎子と運命的に出会い、めでたく結婚した。どんな時も保に寄り添い、支えてくれた皎子。保は妻への感謝のラブレターを書きたい一心で、定年退職を機に一大決心をして夜間中学に通い始める。少しずつ文字を覚えていく保だがなかなか思うようにいかず、気づけば結婚35年目。ラブレターがようやく形になろうとしていたころ、皎子が病魔におかされてしまう。主人公の保を鶴瓶、その妻を原田、夫妻の若かりしころを重岡大毅と上白石萌音が演じ、『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(08)、『今日も嫌がらせ弁当』(19)の塚本連平が監督を務める。
ある夫婦の実話をもとにした『35年目のラブレター』で、笑福亭鶴瓶と原田知世が共演を果たした


――楽しい時もあればつらい時もある人生を、寄り添いながら生きていく西畑夫妻。鶴瓶さん、原田さんはお互いに向ける眼差しや笑顔からも、夫妻の絆を体現しています。西畑夫妻にはどのような印象を持ちましたか。

鶴瓶「脚本を読んで、夫婦のあり方や2人の本心がうまいこと書いてある作品やなと思いました。この夫婦には、質素なことが幸せやと思える気持ちがある。保は字を書かれへんけれど、妻がそこにちゃんと寄り添ってくれるんですね。字が書けないというのは、いろいろな時代を生きていくうえでもとても大変なことです。それをすべてサポートした奥さんは、ホンマにすごい人やと思います」

原田「どこか母のような気持ちで保さんを見つめている皎子さんは、かわいくて、柔らかくて、それでいてしっかりとした芯と、包み込むような愛を持った女性。保さんもとても情の深い人で、真面目さとピュアな部分で共鳴し合っているようなお二人ですよね。お互いにとって『この人しかいない』と思える相手で、そういう人と一緒にいられることの幸せを感じています。幸せにはいろいろな形があると思いますが、保さん、皎子さんの姿から尊い愛を見せてもらったような気がしています」

――鶴瓶さんは、奥さん役を原田さんが演じると聞いて「ぜひ!」とオファーに喜ばれたそうですね。

夫を支え続ける妻を、原田知世が凛とした佇まいで演じている

鶴瓶「脚本を読んだ時には、皎子を誰が演じるかまだわからなかったんですが、本当に原田さんでよかったなと思うんです。キャスティングも、うまいこと選ぶなあと思いましたよ。もう原田さんしか考えられないし、僕は毎日『皎子に会いたいな』と思いながら現場に行くのが楽しくて。今日も会いたかったです(笑)」

原田「ありがとうございます(笑)」

鶴瓶「萌音ちゃんから知世さんに受け継がれていくという流れにもまったく違和感がなくて、関西弁もすごかったですよ。原田知世流の関西弁を聞けるのは、ホンマによかったなあ。それに、例えば皎子が寝ているシーンであったとしても、見ていると『妻だ』という感情が湧いてくる。少し口幅ったいですが、夫を思ってくれる感じがうちの嫁に似ているんですよね。僕は結婚して50年経ちますが、人間ドッグに行くとなると『今日はこれしか食べられないからね』『朝はこれを飲んで』と嫁がきっちり用意してくれるんです。愛というか、介護ですね(笑)。現場でも、そんな妻といるような居心地のよさを感じていました」

■「鶴瓶さんの周りには、いろいろな人が集まってくる」(原田)

――原田さんは、撮影時に「鶴瓶さんを見つめていろいろ発見したい」とコメントされていました。夫婦役として共演した感想を教えてください。

いつの間にか周囲を魅了してしまう保。笑福亭鶴瓶がハマり役として演じている

原田「撮影の合間には、鶴瓶さんの周りにいろいろな人が集まってくるんです。鶴瓶さんはスタッフの人たちだけではなく、エキストラの方にも、私たちがテレビで見ているあのままの雰囲気で分け隔てなくお話をされていて。誰にでもすごくやさしくて、すごく温かい。そして情の深い方なので、一緒にいると安心できるんです。私は今回、関西弁もありましたし、クランクイン前には少し不安な気持ちもありましたが、最初の1日を鶴瓶さんと一緒に過ごしただけで、『大丈夫だ』と気持ちが楽になりました。普段、誰か親しい人といる時のように、無理して距離を縮めようとお話したりするのではなく、同じものに笑ったりしながら、自然とそばにいようと思っていました」

――そのナチュラルな空気感が、劇中の西畑夫妻からにじみ出る温かさに繋がっているように感じます。

原田「鶴瓶さんは、いつもとても自然体なんですね。食卓で物撮りをしていた時に、鶴瓶さんは喉が渇いていらしたのか、そこに置いてあったお茶をガブっと一気飲みされたことがあって(笑)。シーンの繋がりなどもあるのでスタッフさんも『ああっ!』と驚いているなか、鶴瓶さんは『大丈夫、大丈夫』と言ってまたお茶を注いでいました。現場ではそういったおもしろいエピソードがたくさんあって、それが私を含め、スタッフさんも全員が『かわいい』と思うものばかり。いつも鶴瓶さんの人間味に魅了されていました」
終始和やかな雰囲気だった鶴瓶と原田


鶴瓶「あはは!忘れていたわ。よう覚えてますね」

原田「『今日はこんなことがあったな』とメモしていたんです(笑)」

鶴瓶「ええ!いつかそれ、見せて(笑)」

――とてもいい現場だったことが伝わってきます。心を込めて握ったお寿司や、一生懸命に手紙を書いた文字から伝わる想いなど手作りのよさを感じる物語ですが、本作の撮影現場でものづくりのよさを感じた瞬間はありますか。

鶴瓶「撮影中も情の深さを感じることばかりでしたね。僕は仕事に臨むうえではいつまでも変わらずに、情の部分を大事にしていきたいと思っているんです。夫婦が住んでいる長屋のロケセットも、いい雰囲気があって。スタッフの人も頑張って、よう見つけてきよったなあ。映画の撮影って、それぞれの情や頑張りの積み重ねを感じることばかりですね。撮影中もそうやけれど、この映画は全体から昭和の匂いがしていて。僕は『二十四の瞳』という映画が大好きなんですが、本作にはそのような人とのつながりが深かった時代の空気感があるなと。皎子は保と結婚して、この人と関わった以上、絶対にこの人を支えていくんだと決める。皎子からは、『この人のために生きる』という気持ちが見えます。いまは物が多くて、捨てるものも多い時代だけれど、ひとつのものをずっと大事にするということがいかにすばらしいことか。派手なことが描かれた映画ではないですが、忘れかけてしまっているけれど、いまを生きるうえでものすごく大事なことが描かれた作品やと思います」

保は、コツコツと読み書きを学んでいく

原田「映画の撮影は関わっている人も多いし、みんなで同じ船に乗って一緒に進んで行くような感覚があるものです。みんなで力を合わせているなという実感があるからこそ、完成した時にその喜びを分かち合える。また作品ごとに一期一会でもあるので、同じ人がまた全員集まれるというのも二度とない。だから今回の撮影現場でも、すべての瞬間を大事にしていきたいなと思っていました。あと本作で、とても印象的だったことがあって。現場を体験したいという学生さんたちが、撮影のお手伝いをしてくださっていたんです。若い女性が多くて、彼女たちが生き生きと働いている姿を見ると、なんだかとてもうれしくて。彼女たちが映画作りを喜んでやっていて、『すごくいい経験ができました』と帰っていく姿をよく覚えています。私がデビューをしたころは、映画の撮影現場にはほぼ男性しかいませんでした。女性は本当に少なかったんですね。いまは照明部さんや撮影部さんにも女性がいて、時代が変わってきているなという気がしています」

■「理想の年齢の重ね方は、ひとつのことをやり続けること」(鶴瓶)、「出会いを噛み締めながら歩んでいきたい」(原田)

――保と皎子からは、積み重ねた夫婦としての歴史や絆が感じられます。また保の姿からは「なにかを始めるのに遅いことはない」ということが実感できるなど、本作を通して「どのように年齢を重ねていくか」を考える人も多いように思います。お二人にとって、理想の年齢の重ね方とはどのようなものでしょうか。

保と皎子は笑顔を忘れず、支え合いながら前に進んでいく

鶴瓶「ひとつのことをずっとやり続け、やり遂げること。それが理想の年齢の重ね方ですね。僕にとっては落語になりますが、ずっとやることによって見えてくるものがある。そして落語は毎回が挑戦でもあって。いい仕事に就いたと思いますよ。自分の本分を忘れずに、ひとつでも情熱を捧げられるものを持つというのはとても大事なことやと思っています」

原田「本当におっしゃる通りだなと思います。大人になって初めて気づくことですが、振り返ってみるとちゃんとそこに自分が歩んできた道ができているものですよね。歩んできた時間の大事さを噛み締めていますし、今回、鶴瓶さんともお会いできたように、これから先もいろいろな人や作品との出会いがあるはず。その出会いを通り過ぎるものにするのではなく、そこで自分がどう感じたのかを認めながら歩んでいけば、日常が豊かで彩りのあるものになってくるのかなと感じています」

鶴瓶「振り返ることって、とても大事なことですよ。俺、あんなことやっていたんや、いろいろな人と出会っていたんやということに気づきますよね。それにね、人って調子に乗ってしまう時期もあるやないですか。周りを見渡して、振り返ることをしていれば、謙虚でいないとあかんなと思ったりしますから。やっぱり大事なことやなと思います」

――保と皎子の人生からも、出会いの大切さを痛感するような映画です。保は皎子に感謝を伝えるラブレターを書こうと奮闘しますが、お二人にとって手紙を書きたい相手はいらっしゃいますか?

心を込めて書いた文字には、深い味わいがある

鶴瓶「嫁ですね。思い出の手紙もあります。まだ子どもが学生だったころ、西宮で震災にあって。そのなかでもどうしても東京に仕事に行かなければならない時に、西宮にいる彼女に手紙を書きました。余震も多くて、どうなるか不安だったころです。怖い経験だけれど一緒にいられてよかった、怖いことも共有できてよかったということを手紙に書きました。いまでも、結婚記念日と入門記念日、そしてお互いの誕生日には手紙を交換しています。ずっとですよ」

原田「ステキですね。私はあまり手紙を書くほうではないんですが、書くとしたら母と姉かなと思います。東京に出てきて、ずっと支えてくれていて、本当に娘、妹のことをいつも考えてくれている2人です。本作には皎子さんとお姉さんのエピソードが出てきますが、あそこでは私も思うところがありました。昔はよく仕事で海外に行ったりすると手紙を書いたり、ファックスで『こんなことがあったよ』と送ったりしていました。感謝の気持ちを伝えるならば、やっぱり母と姉ですね」

取材・文/成田おり枝


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