ヘアスタイルの細かさで考える岡田将生の魅力がある。毎週日曜日よる9時から放送されている『御上先生』(TBS)は、まさにその好例である。
岡田が演じる文部省の官僚役の髪型、それもその分け目がどうも気になる。気になるからには、何かある。岡田が演じる役のヘアスタイルにはそういう不思議がある気がする。
男性俳優の演技を独自視点で分析するコラムニスト・加賀谷健が、岡田将生の分け目に注目して解説する。
やたら分け目くっきりな官僚役
松坂桃李主演ドラマ『御上先生』に出演する岡田将生の髪型が、やたら分け目くっきりである。文部科学省の官僚役であり、相手に隙を見せないビジュアルを作るためなのか。超硬派な役人は、こうも完璧に髪を撫で付ける必要があるのかというくらい。
岡田が演じる槙野恭介の同期官僚である御上孝(松坂桃李)のほうは、全然分け目がくっきりしていない。それどころか、前髪あたりをいい感じに遊んでいる。どこの一般企業にもいそうな現代的ヘアスタイルだ。
第1話で御上と槙野が因縁の対面をする場面がある。ヘアスタイルの違いが歴然としている。ふたりの後輩官僚・津吹隼人を演じる櫻井海音も割りと撫で付けタイプだが、それでも今風なさわやかさは感じられる。なのに、岡田将生だけなぜ古風なのか。気になる。気になるからには、何か秘密がありそうなのだ。
髪型の変遷として追うドラマ作品
この槙野役の撫で付けた分け目ヘアーが、現代的ではなく古風なのかどうかはさておき、これまでに岡田が出演してきたドラマ作品を髪型の変遷として追うことは出来る。
『オトメン(乙男)~夏~』(フジテレビ、2009年)などデビュー当初は前髪がさらりと長かった。前髪をアップにしたくせ毛スタイルがイケメン過ぎた『リーガルハイ』(フジテレビ、2013年)が中間地点くらい。
初の朝ドラ出演作『なつぞら』(NHK総合、2019年)のリーゼントスタイルなどを経て、そこからマッシュカット系怒涛のバリエーションが現在までさまざまである。
槙野役と近似値の髪型だと、落語家役を演じた『昭和元禄落語心中』(NHK総合、2018年)がある。1970年代の時代設定と役柄の年齢に合わせた古風なヘアスタイルだが、槙野役ほどには分け目までくっきりはしていなかった。この分け目、なおさら気になるなぁ。
今風のヘアスタイルが異質だった朝ドラ
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さらに近年の作品で岡田のヘアスタイルが話題になったのが、伊藤沙莉主演の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合、2024年)である。伊藤演じる主人公・佐田寅子の伴侶になる同僚判事・星航一役を演じた。
槙野と同じように同僚役という共通点はあるけれど、肝心のヘアスタイルは全然類似していない。『昭和元禄落語心中』よりさらに前の戦後の時代設定にもかかわらず、航一役の岡田の髪型が2010年代に流行したショートマッシュ風であり、時代考証としておかしいのではないかと話題を集めた。
確かに裁判官という硬派な職種だし、時代も時代だから、槙野役よりさらに分け目くっきりでもよかったかもしれない。なのに、毛先ぼさぼさ。しかも程よいマッシュ感。今風のヘアスタイルが異質だと、少なからず視聴者の目には映ったのである。
くせ者感を明確化するスタイリング
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でもそれは、コミュニケーションなどが独特な空気感の航一の風変わりな人物像を浮き彫りにするためのあえてのスタイリング演出だったと思う。
第18週第90回で航一の頭上に美しい雪粒が結晶化したのは、マッシュの毛先がぼさぼさだったからでもある。同様に、槙野役もまたかなりくせが強いキャラクター性を明確化するビジュアライズだと考えられる。
御上は槙野が自分を裏切って出世したと思っている。同期からの批判の眼差しをうまくかわしながら、時折どうしてわかってくれないものかとモヤモヤした表情を浮かべる。それがどこか機械的な感じもする。
第2話で槙野が販売機からコーヒーが出るのを待つ場面がある。販売機の扉が開き、閉まる。その間、岡田の手元にピントは合っていない。扉の開閉がやたら目を引くのだ。ロボット的な槙野性質をこの開閉する機械がたとえているのだろうか。
序盤からやたら怪しげな雰囲気を醸し、ネット上では、敵か味方かと考察が盛り上がっている。くせ強(つよ)、くせ者、怪しげキャラの供給源そのものが不思議な分け目にあるのかもしれない。スタイリングの細部ひとつで、ああだこうだ考えさせてくれる岡田将生のヘアスタイル変遷は、奥深いものである。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業X:@1895cu
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