中国本土のエアライン、海南航空を利用して、海南島の海口へ旅に出た。同社は成田空港と北京および西安を結んでいたが、2025年2月3日より新規に週1便で海口美蘭空港への直行便を就航させた。就航初便のフライト自体は快適であったが、日本や他の国の航空旅行とは異なる点がいくつかあり、それが独特の“違和感”として感じられた。その内容を分析してみた。
空港での異様な待機
通常、日本や欧米の空港ではチェックインを済ませ、手荷物検査を終えれば、あとは搭乗までゆったりと待つことができる。しかし、中国発路線ではチェックイン後にもさらに待たされることがある。チェックインカウンターで手続き作業が終了した後、横に移動して立つよう指示され、係員は次の搭乗者のチェックインを始める。預け入れ手荷物がベルトコンベアで移動する途中に行われるX線検査で、主にモバイルバッテリーが見つかると再検査が行われることがあるためだ。
中国系エアラインはこのチェックがより徹底していると感じる。モバイルバッテリーには容量があり、本体に数値の刻印表示がないと没収されることがあるので、実際に海外に持ち出す場合は要注意だ。一般的には、モバイルバッテリーが見つかった場合、館内アナウンスで呼び出されるなどして恥ずかしい思いをするが、中国系エアラインの方式は評価できる。
機内持ち込み手荷物内のライターは100%没収されるので、気を付けよう。日系エアラインでは、一人1個の使い捨て液化ガスライターは持ち込めるが、中国系はより厳しいということになる。
機内に見かけない乗務員がいる
海南航空では黒っぽい制服で胸にウィングバッジを付け、着席している乗務員らしき人を見かけた。乗務員なのに、座ったままなのが普通ではない。予備のパイロットか客室乗務員かと思ったが、実は何か異常があれば迅速に対応する役割を担っているという。中国系エアラインの一部路線では、機内に安全担当者が搭乗していることがあり、外資系エアラインではスカイマーシャルとも呼ばれる。目立たないものの、このような担当者が存在する安心感は大切だ。これもまた、日系エアラインでは見られない特徴の一つである。
また、週1便のフライトのため、176人乗りの機材に対して乗務員は15名も乗務していると聞いた。通常の便ではパイロットと客室乗務員を合わせても6〜7名になるところを、倍以上も乗務させている。一日で往復乗務をするには勤務時間が長すぎる。乗務員を成田空港に1週間も宿泊させるにはコストがかかりすぎる。その対策として、海口から成田へのフライトには、帰路の成田から海口に乗務する乗員を加算して搭乗させ、帰路担当は往路には勤務ではなく客席に座らせている。
日本人のアウトバウンド客にとって週1便のフライトでは7泊8日の旅程になるため、早々に増便してほしいところだ。
世界で評価を受ける海南航空
中国系エアラインのサービス評価には厳しい声が多い。しかし、海南航空の場合、世界的な航空サービス評価会社「スカイトラックス(SKYTRAX)」の5つ星評価を初めて取得した中国本土の航空会社である。
筆者はコロナ禍前の2018年に、世界的なイギリスのファンボロー航空ショー会場で、このスカイトラックスの表彰式を取材したことがある。海南航空は世界TOP100エアラインの堂々8位にランクインしていた。この時のANAは3位でJALは13位だった。記念撮影に写る男女客室乗務員の姿は堂々としていて好ましかった。
予想外の手厚いサービス
機内の様子は日系エアラインとは違った。頭上の手荷物収納棚の扉部分に大きな広告シールが何枚も貼られている点だ。よく見ると、ECサイトの宣伝広告だった。海外のLCCでは見かけることはあるが、日系ではない。これも、新しい発見だと思った。
機内サービスは想像以上に良かった。機内食は、ボックスミールと別に肉か魚の2種類から選ぶ温かいメインディッシュが付いていた。ボックスの中にはエビの入ったサラダ、ミニたい焼き、パン1個とバターが入っており、清潔で豪華に見えることは間違いない。これも中国風のおもてなしの一部かもしれないと思うと、興味深く感じた。実際に食べてみるととても美味しかった。
ミールの入る箱の内側に中国語で「旅行における炭素削減:あなたと私には責任がある」と書かれており、機内食を事前にキャンセルすると600ポイントが獲得できると表示されていた。機内食の搭載量が減れば航空機の燃料も減らせるという環境問題を提起している点は好ましい。
また、多くの客室乗務員は気持ちの良い笑顔で対応していた。一昔前にはあまり見られなかった状況だ。
海南航空の顧客サービス面では、予想以上の対応の良さに感心した。特に素晴らしい対応として目にしたのは、降機時に客室乗務員が荷物の多い母親をサポートし、赤ん坊を抱えたまま機外に出てタラップを降りて行き、バスに乗るまで付き添っていたことだ。このような心遣いは、どのエアラインでも見られるわけではなく、印象的だった。
コストパフォーマンスの高さ
海南航空のサービスを総合的に評価すると、十分な満足度を得られたと言える。この先の渡航を考えると、4月の閑散期に成田⇔海口を往復し、航空運賃は燃油サーチャージ込みで5.9万円であった。ハワイよりも近くて運賃が安く、何より現地での滞在費用が安く済む。ビーチリゾートとしての海南島は、日本からの直行便で手軽に訪れることができ、コストパフォーマンスの面でも魅力的な選択肢となるだろう。三亜は緯度が世界クラスの他のリゾート地と同程度で、ワールドクラスのホテルが林立している。
2025年4月1日から、海南航空で関西⇔海口を結ぶ週3便の路線が開設されるニュースが飛び込んできた。日本からますます、利便性が高くなる。
中国系エアラインのフライト中に感じた“違和感”は、結局のところ文化や習慣の違いによるものだ。しかし、それを理解し受け入れることで、中国系エアラインの新たな魅力を発見することができる。また、良い意味での意外さを爽やかさとして感じられた。
中国では不動産バブルと言われて久しいが、海南省では自由貿易や医療の面での特区が充実しており、経済面でも安泰であると期待が持てる。海南島最南部三亜のリゾート体験をお勧めする内容でこの記事を締めくくろう。
お勧めのホテル
「中国のハワイ」という名前を「中国のドバイ」に変えたと言われるホテルがある。それが、世界にドバイとここだけにあるアトランティス・三亜だ。ホテルの中に15,000トンの水槽があり、68,000匹の魚が生息している。1,314室ある大型ホテルの中で、5室のみのアンダーウォータースイートが素晴らしい。部屋に居ながらにして滞在中ずっと魚を眺めていることができる。
日本から海南島への直行便は海南航空のみ。中国のリゾートで桁違いのバカンスを楽しみに行きたい。海南島はビジネスと観光両面で興味深い渡航先である。
※航空運賃は2025年2月下旬に海南航空公式HPで確認したもの。
【北島幸司】
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing
【関連記事】
・
さんまとマツコも驚いた。お金を払っても入れない「JALファーストクラスラウンジ」の魅力
・
長時間フライトでも疲れない「飛行機の座席位置」を徹底考察。人気は前方座席だけど
・
福田萌が“妊娠30週”での飛行機搭乗でトラブルに。新生児にも悪影響の恐れが…なぜ危ないのか
・
「飛行機の機内食」製造現場を訪問。ファーストとエコノミーのコスト差は
・
JAL、ANAのCA服もカワイイけど…高いデザイン性を誇る“世界最強デザイナー”のCA服とは