2024年夏に北米公開されるや大きな注目を集め、同年に公開されたインディペンデント作品でNo.1のスマッシュヒット。また、過去10年間のインディペンデントホラー映画で最高の興行成績、北米配給を務めたNEON史上でも最高の興収成績を収めるなど、さまざまな記録を打ち立てたサスペンス・ホラー『ロングレッグス』が、いよいよ3月14日(金)に日本公開となる。
【写真を見る】ニコラス・ケイジだと気付かない観客が続出する激変ぶり!“愛されスター”がシリアルキラーに
それに先駆けてPRESS HORRORでは、日本最速試写会を実施。海外では「この10年で一番怖い」とも評された本作だが、日本の観客たちの目にはどう映ったのか。来場者に行ったアンケートでは「映像が全編キマっていて凄まじかった。今年No.1のホラー映画で間違いない!」(20代・男性)、「怖いのに目が離せない!サスペンスとホラーのいいとこどり!」(30代・女性)といった声が寄せられており、本稿ではこのアンケートの回答を紹介しながら、“ネタバレなし”で見どころに迫っていこう。
■8割以上が「怖かった」と回答…ホラーファンから高い満足度を記録
物語の舞台は1990年代半ばのアメリカ北西部オレゴン州。FBI支局に勤める新人捜査官のリー・ハーカー(マイカ・モンロー)は、並外れた直感力を買われ、重大な未解決事件の担当に抜擢される。それは過去30年間で10回も発生していた不可解な殺人事件。平凡な家族の父親が妻子を殺害したのち自ら命を断ち、現場には“ロングレッグス”という署名付きの暗号文が残されていたというもの。真実に迫ろうと暗号文を解読していくハーカーは、やがて自身の過去とロングレッグスの意外な接点に気が付くこととなる。
今回行われたPRESS HORROR独占試写会には、10代から50代までの幅広い年齢層の観客が多数来場。アンケートで本作のファーストインプレッションを訊ねてみると、全体の8割以上の観客が「怖かった」と回答する結果に。さらに「とても満足」や「満足」と答えた観客は9割以上と、非常に高い満足度を獲得。ホラーやスリラーのファンの期待を裏切らない体験になったことが窺える。
ではいったい、本作のどのような点が観客を惹きつけたのか。具体的なポイントを訊いてみると、「カメラの動き、効果音がとても効果的に恐怖を演出していた」(20代・男性)や「どのシーンも絵画のように映像が美しく、音楽と映像が完全にひとつになっていた」(30代・女性)といったように、映像と音で表現されるスタイリッシュな恐怖演出を評価する声が目立っている。
本作でメガホンをとったのは、『呪われし家に咲く一輪の花』(Netflixにて配信中)や、現在北米でヒットを記録しているスティーブン・キング原作のホラー『The Monkey』(25)を手掛けたオズグッド・パーキンス監督。俳優としてJ. J.エイブラムス監督の『スター・トレック』(09)やジョーダン・ピール監督の『NOPE/ノープ』(22)などに出演してきた彼は、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』(60)のノーマン・ベイツ役で知られるアンソニー・パーキンスを父に持つ、まさにスリラー映画界のサラブレッド。
「画面の枠の使い方が目を引いた」(20代・男性)
「映像のセンスが特に好きでした。画面として美しいシーンがあり大好きです」(40代・女性)
「ずっと不安になるような色味・写し方でおもしろかった」(10代・女性)
「95%以上が1ショットで撮られていて、閉塞感・孤独感を感じる構図がすごく興味深い」(20代・男性)
「音楽がほとんどないことによる窮屈さのなかにある効果音が、文字通り効果的でした」(20代・男性)
劇中の音楽は、パーキンス監督の弟であるエルヴィス・パーキンスが担当。さらに1970年代のUKロックを代表する人気バンドT・レックスの楽曲も複数使用されており、「マーク・ボランの歌声が耳にまとわりつく」(20代・男性)など、T・レックスとホラーの予想外のシンクロぶりについて、20代から40代まで、男性を中心に選曲センスに唸ったという声が多く上がっていた。
■ニコラス・ケイジが素顔を封印!アカデミー賞スターの新たな代表作に
本作の大きな見どころが、ロングレッグスに扮したニコラス・ケイジの怪演。来場者のなかには、「ケイジが出演しているからこの映画に興味を持った」と回答する人が多数見受けられるなど、人気の高さはいまも揺るがない。40年以上のキャリアを積むなかで、近年はコミカルな役柄を求められることも多かったが、『リービング・ラスベガス』(95)では第68回アカデミー賞で主演男優賞を獲得しているなど、そもそもは“演技派”として知名度を高めたケイジ。初のシリアルキラー役をどのように演じているのだろうか?
アンケートのなかで、ケイジの演技についてもっとも多く寄せられていたのは、
「最初ニコラス・ケイジだと気付かなかった」(30代・女性)
「ここまでニコラス・ケイジ味を隠せるのか」(40代・女性)
「ニコラス・ケイジだと言われないとわからない」(40代・男性)
「演技力が凄すぎた。いつものニコラス・ケイジを感じさせない演技力」(20代・男性)
と、その変貌ぶりに驚愕する声の数々。
それもそのはず、ロングレッグス役を演じるためにケイジは毎日2時間半も特殊メイクの施術を受け、誰もが知る風貌を完全に封印。1970年代から1980年代の劣悪な整形手術を繰り返したことで皮膚がボロボロになり腫れ上がったという設定のもと、醜く不気味な容姿を獲得していった。もちろん、ただ特殊メイクで変身するだけにとどまらない。ケイジの持ち前の演技力がフルに発揮されたことで、その不気味さが倍増している点は見逃せない。
「メイクもすごかったし、仕草や喋り方のインパクトがすごかった」(30代・女性)
「顔の作り物っぽさがむしろ説得力を持たせていたところ」(20代・男性)
「ニコラス・ケイジのハジけた演技が印象に残った」(50代・男性)
「ニコラス・ケイジにしかできない狂人っぷり」(20代・男性)
「ニック史上サイコーに気持ち悪く最高でした」(30代・男性)
褒め言葉としての「気持ち悪い」という感想が多数あがる一方、その分厚い特殊メイクでも隠しきれないつぶらな瞳や放たれるオーラに、いつもの“ニコラス・ケイジらしさ”を見つけだした観客もいたようだ。
「ちょっとかわいくも見えるホラー的キャラ」(10代・男性)
「ビジュアルの怖さのなかにある可愛らしさを感じた」(20代・男性)
「愛らしく、どこか憎めないところ」(40代・女性)
さすがはハリウッドを代表する“愛されスター”。どんなに気味の悪いメイクをしても魅力が衰えないのは、ケイジが唯一無二のスターであることのなによりの証拠であろう。
さらに劇中でケイジは歌声も披露。これには「あんなに歌が上手いとは思わなかった」(20代・女性)と驚く声が上がり、「狂気的に歌うニコラス・ケイジでしか満たせないものがある」(20代・男性)や「この人歌うまいなっていうのを感じました。それが不気味さを増していた」(30代・女性)と、さらにロングレッグスのインパクトを高めていたという声も。
そんなケイジの狂気の演技を堪能できるのは、映画中盤で主人公のリーとロングレッグスが対面を果たす取調室のシーン。正義の立場でありながらも苦悩を抱えた主人公と、それを翻弄する悪との対峙が“取調室”という特殊な空間で繰り広げられるこのシーンに、クリストファー・ノーラン監督の傑作『ダークナイト』(09)でのバットマンとジョーカーの対面シーンを思い出した人が続出。
「ダークナイトのジョーカーの取調室のニコラス・ケイジ版が見れる」(20代・男性)
「ダークナイトのジョーカーから気味の悪さだけを抽出した感じ」(20代・男性)
「取り調べでのニコラス・ケイジの怪演が印象的」(20代・男性)
“映画史に残る怪演”と言われたヒース・レジャーのジョーカーにも匹敵する、一度見たら忘れられない強烈な演技を披露したケイジに対して、「さすがはアカデミー賞俳優!新たな代表作になること間違いなし!」(30代・女性)という絶賛の声も。
「ニコラスファンなら必見」(20代・男性)、「見たことないニコラス・ケイジが見られる!」(30代・女性)とファンも太鼓判をおすほどの怪演ぶりを、どうぞお楽しみに。
■『羊たちの沈黙』『セブン』はもちろん、「ツイン・ピークス」や「X-ファイル」好きにもおすすめ!
シリアルキラーの恐怖を描くホラー映画でありつつ、さまざまなジャンルの要素が織り交ぜられている点も、本作の魅力的なところ。「ミステリー好きな方におすすめ」(20代・男性)というコメントもあったように、マイカ・モンロー演じるリーがロングレッグスの暗号の謎に迫る映画前半部分にはミステリーとしての旨味がたっぷり。
ケイジ相手に一歩も引かず演じきったモンローにも称賛の声が上がっており、「か弱いなかにも意思の強さを感じさせる目が素敵。彼女と一緒に謎を解いていくように没入しました」(30代・女性)など、凛とした佇まいに同性からの支持が目立った。
主人公の視点に立って作品の世界に入り込みながらロングレッグスの恐怖と向き合うのも本作の楽しみ方の一つだろう。こうした謎解き要素からは、デヴィッド・フィンチャー監督の「『ゾディアック』を連想した」(40代・男性)という声も見受けられた。
また、北米公開時に「AWARDS RADAR」が「『羊たちの沈黙』以来、最高の連続殺人鬼映画」と絶賛のレビューを寄せているように、単なるホラー映画にとどまらずサイコスリラーとしての一面も備えていること。さらに、数多あるホラー映画の“恐怖”の種類をいくつも重ね合わせた卓越したストーリーテリング。そうした“ジャンルレス”な部分が本作の魅力を一層高めていることが窺える。アカデミー賞を席巻し、いまなお多くのファンが絶えない『羊たちの沈黙』(91)のように、本作も長きにわたって語り継がれる映画となることだろう。
「セリフのところどころに伏線があった」(20代・男性)
「シナリオの進み方やフラグの立て方が飽きさせなくてすごくおもしろい」(20代・女性)
「人間の狂気とオカルトを両方楽しみたい人におすすめです」(20代・男性)
「疑問な点がいくつか残った」(20代・男性)
「人の考察が見たいタイプの映画」(30代・女性)
「展開が想像つかず、オカルトからスリラーまでたっぷりあった」(20代・女性)
「Jホラーが好きな人に刺さりそう」(40代・女性)
「スリラーから悪魔ものが好きな方まで」(20代・女性)
アンケートで「どんな作品が好きな人に刺さると思うか?」と、具体的な作品名を訊いてみたところ、先述の『羊たちの沈黙』をはじめ、フィンチャー監督の『セブン』(95)や黒沢清監督の『CURE』(97)など、劇中で描かれる1990年代に公開されいまなお熱烈な支持を集めるスリラー映画を挙げる人が続出。
「『羊たちの沈黙』。女性捜査官が頑張るという点で、とても目頭が熱くなる」(20代・男性)
「サスペンス要素が強いなかで、恐怖を一気に与えてくれる感覚が『羊たちの沈黙』と似ている」(10代・男性)
「連続殺人と洗脳の関係など、黒沢清監督の『CURE』との共通点が多い」(10代・男性)
「犯人の造形が『CURE』と似ている」(20代・男性)
「全体の緊張感、不穏なところが『セブン』に近い」(40代・女性)
「『セブン』『ゾディアック』『マインドハンター』など、デヴィッド・フィンチャー監督の作品が好きなら間違いなくハマります!」(30代・女性)
ほかにもA24製作によるタイ・ウエスト監督の「X」シリーズ、『ヘレディタリー/継承』(18)などのアリ・アスター監督作品といった近年のホラー/スリラーファンを熱狂させた作品、意外なところではデイヴィッド・リンチ監督のカルト的人気ドラマ「ツイン・ピークス」、社会現象となったSFドラマ「X-ファイル」との近似性を感じたという声も複数見受けられた。
スタイリッシュな映像表現と“音”を活かした恐怖演出、名優ニコラス・ケイジの怪演に、往年のスリラー映画を彷彿とさせる空気感。恐怖だけではなく、さまざまなエンタメの旨味がぎっしりと凝縮された本作は、まさに「ミステリー・ホラー・サスペンス、恐怖の詰め合わせ!」(40代・女性)と表現するのがぴったり。
本記事ではネタバレ防止のため後半の展開への言及は避けたが、ラスト付近はまさに息つく暇もないほどの緊張感が続く。「観て損はない、予想できない結末。観終わった後も考察が捗る」(20代・女性)という声に象徴されるように、観終わったあとには誰かと解釈をぶつけ合いたくなること請け合いだ。事件の裏に秘められた、想像を超える“真実”とは。ぜひ物語の行く末を、劇場で目撃してほしい。
文/久保田 和馬
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