3月7日(金) 23:50
2021年4月1日から、一部改正された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」が施行されました。
主な改正内容として、定年が65歳未満である企業に対し「65歳まで定年年齢を引き上げ」「希望者全員を対象とする、65歳までの継続雇用制度を導入」「定年制の廃止」のいずれかの措置を実施することが義務づけられました。
継続雇用制度とは、本人の希望があれば定年後も引き続き雇用する制度で、定年でいったん退職として新たに雇用契約を結ぶ「再雇用制度」と、定年で退職とせず引き続き雇用する「勤務延長制度」が該当します。
しかし、体力低下などの理由から、賃金を定年退職直前と比べて50~70%に設定している企業が多いのが現状です。そこで、賃金の差を補うために「高年齢雇用継続給付金」が受け取れるというわけです。
高年齢雇用継続給付の支給要件は、「定年後」というだけでなく、4つの要件を満たす必要があります。まず、雇用保険の被保険者期間は「5年以上」であることが必要です。過去に雇用保険に加入していた期間も通算して5年以上が必要になります。
次に、60歳到達時と比べて、賃金が75%未満に低下している必要があります。この「賃金」には、基本給だけでなく、賞与や各種手当なども含まれます。そして、年齢は60歳以上65歳未満と定められており、給付を受けられるのは60歳から65歳になるまでの期間です。
最後に、失業手当など他の雇用保険の給付を受けている場合は、高年齢雇用継続給付は利用できません。つまり、定年後も同じ会社で働き続ける場合だけでなく、転職して働き続ける場合でも、上記の要件を満たせば給付の対象となります。
支給額は、低下した賃金の割合に応じて計算されます。例えば、賃金が61%以下に低下した場合には最大15%が支給され、低下率が61%~75%の場合には、15%から徐々に支給率が下がるように設定されています。低下率に対する支給率は表1の通りです。
表1
高年齢雇用継続給付は、60歳到達日の属する月から65歳に到達する日の属する月までが支給期間になります。つまり、支給期間は最大でも5年間です。ただし、賃金が75%以上に回復するなど、支給要件を満たさなくなった場合は給付停止となります。
また、60歳到達日で雇用保険に加入していた期間が5年未満の場合、支給対象期間の開始は5年を満たす月からとなり、その月から65歳の到達日となる月までの間が支給期間となります。
なお、この「到達日」とは「誕生日の前日」です。3月3日が誕生日の場合、「3月2日」が到達日となります。
2025年4月1日から「高年齢雇用継続給付」の支給率が変わります。対象者は、2025年4月1日以降に60歳に達した人(または被保険者期間が5年以下の場合、5年を満たすこととなった人) です。
先述通り、従来は再就職後の賃金が低下した場合に、前職の賃金に対して最大15% の支給を受けることができましたが、2025年4月以降は最大10%に引き下げられます。全ての支給率が変更となるため、これから定年を迎える方は注意してください。
高年齢雇用継続給付の支給要件や金額、期間について解説しました。60歳以降も働き続けることを希望する方にとって、高年齢雇用継続給付は収入を支える重要な制度です。ご自身が支給要件を満たすかどうかが確認できたら、勤務先に相談してみましょう。
日本年金機構 年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整
厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
厚生労働省 65歳までの「高年齢者雇用確保措置」
厚生労働省 支給率早見表、支給額早見表(令和6年8月1日現在)
厚生労働省 令和6年8月1日から支給限度額が変更になります。
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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