3歳牡馬ランキング(前編)
激戦の牝馬戦線とは対照的に、今年の3歳牡馬クラシック戦線は「1強」状態にある。
「1強」はもちろん、クロワデュノール(牡3歳/父キタサンブラック)だ。GII東京スポーツ杯2歳S(11月16日/東京・芝1800m)を勝ったあと、2歳GIのホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)を断然人気で圧勝。無傷の3連勝で戴冠を遂げて、2歳王者に輝いた。もうひとつの2歳GI、朝日杯フューチュリティS(12月15日/京都・芝1600m)を制したアドマイヤズーム(牡3歳/父モーリス)がこの春、マイル路線に向かうことを早々に明言したこともあって、今春のクラシックでは同馬が不動の本命馬と目されている。
クラシックの登竜門、GIII共同通信杯を快勝したマスカレードボールphoto by Kyodo News
そうしたなか、「1強」を脅かす新星の登場が期待された年明けの重賞では、リラエンブレム(牡3歳/父キズナ)がGIIIシンザン記念(1月13日/中京・芝1600m)を、ニシノエージェント(牡3歳/父イスラボニータ)がGIII京成杯(1月19日/中山・芝2000m)を、サトノシャイニング(牡3歳/父キズナ)がGIIIきさらぎ賞(2月9日/京都・芝1800m)を、マスカレードボール(牡3歳/父ドゥラメンテ)がGIII共同通信杯(2月16日/東京・芝1800m)を制覇した。
新星登場どころか、過去にクロワデュノールの後塵を拝しているサトノシャイニング、マスカレードボールが主要重賞の勝ち馬に名を連ねたことで、クロワデュノール「1強」ムードが一段と強まっている。
ともあれ、今週から3歳牡馬クラシック、GI皐月賞(4月20日/中山・芝2000m)、GI日本ダービー(6月1日/東京・芝2400m)へとつながる前哨戦が相次いで行なわれる。そこで、「打倒クロワデュノール」の評価を受ける新勢力が名乗りを上げるのか、関心が寄せられている。
今回は、それら注目のステップレースを前にして、現時点での3歳牡馬の『Sportiva オリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、今春のクラシックを目指す3歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。
クロワデュノールの評価ばかりが高まるなか、2位以下の票は割れて、5位にはなんと4頭がランクインした。
ミュージアムマイル
(牡3歳/父リオンディーズ)、
ジュタ
(牡3歳/父ドゥラメンテ)、
エネルジコ
(牡3歳/父ドゥラメンテ)、
ナグルファル
(牡3歳/父エピファネイア)である。

土屋真光氏(フリーライター)
「朝日杯FS2着のミュージアムマイル。リオンディーズ産駒はマイル戦での軽快なスピード勝負よりも、2000m前後の距離で泥臭く立ち回るタイプが多く、朝日杯FSではむしろ『よく2着に来たな』という印象。勝ったアドマイヤズームとは、距離適性の差が出たと思います。
1勝クラスの黄菊賞(11月10日/京都・芝2000m)の勝ちタイム(2分00秒0)は、翌々週にエリキング(牡3歳/父キズナ)が快勝したGIII京都2歳S(11月23日/京都・芝2000m)の勝ちタイム(2分00秒9)より速いタイムでした。その点からも、クラシックでも好勝負できると見ています」
吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「ホープフルSでは4着に終わったジュタ。同レースでは外枠発走ということもあって、好位の外を回る形。3着馬ファウストラーゼン(牡3歳/父モズアスコット)のマクりをやりすごして、勝負どころからは勝ち馬クロワデュノールに追従するように進出していきました。そして、ラストまでしぶとく脚を伸ばしての4着は、2戦目というキャリアと完成度を考慮すれば合格点でしょう。
3戦目のリステッド競走・若駒S(1月25日/中京・芝2000m)では、外枠発走から中団を追走。勝負どころでうまく内に潜り込んで進出すると、馬群をさばいて抜け出す芸当を披露しました。思ったほど長く脚を使えず、最後は後続に詰められましたが、これはあまり得意ではない緩急のつく流れになったことの影響もあるでしょう。
何はともあれ、不得手な流れのなかでも勝てた、ということが大きいです。前で主導権を握るような競馬ができれば、パフォーマンスはもっと上がっていきそうな気がします」
本誌競馬班
「エネルジコは、デビュー2連勝で1勝クラスのセントポーリア賞を快勝。直線、内で前が壁になるなか、瞬時に外に出して差しきった勝ちっぷりが豪快でした。既成勢力の逆転候補に挙げたいです」
木南友輔氏(日刊スポーツ)
「新馬(10月12日/京都・芝2000m)、1勝クラスのエリカ賞(12月7日/京都・芝2000m)とデビュー2連勝中のナグルファル。同馬もまた、いったいクラシックに何頭出してくるのか、というほど有力馬をそろえる杉山晴紀厩舎の管理馬。ジョバンニ(牡3歳/父エピファネイア)、サトノシャイニングはすでに賞金を加算し、本番へ向かいます。
ただポテンシャル的には、最もクラシックに向いているのは、この馬なのではないかと思います。母のランドオーバーシーは現役時、GI勝ちこそないものの、GIケンタッキーオークス(チャーチルダウンズ・ダート1800m)2着をはじめ、大レースで何度も好走。その血を引いている点も魅力です」
4位には、共同通信杯を勝った
マスカレードボール
が入った。ホープフルSでは11着と惨敗したが、クラシックでのさらなる反撃はあるのか、注目される。
伊吹雅也氏(競馬評論家)
「2月16日終了時点の本賞金は6520万円で、JRAに所属する現3歳世代の馬としては単独4位。ちなみに、現3歳で1800mより長い距離のオープン以上のレースを複数回勝っているのは、エリキング、クロワデュノールとこの馬だけです。
2021年以降のJRA3歳春のクラシック競走(桜花賞、皐月賞、オークス、日本ダービー)における、共同通信杯で5着以内となった経験がある馬の成績は、計24戦して3着以内12回、3着内率50.0%。近年の3歳牡馬クラシックは、この共同通信杯や東スポ杯2歳Sといった、東京・芝1800mの重賞で善戦した実績のある馬が優秀な成績を収めています。
そんな共同通信杯を制したマスカレードボール。ホープフルSで大敗を喫してしまったとはいえ、仮に皐月賞に出走してきたら、相応に高く評価するべきでしょう」
(つづく)
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