ヤクルト塩見泰隆、完全復活へ決死の覚悟で挑む2025年「もうセンターは自分の定位置じゃない」

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ヤクルト塩見泰隆、完全復活へ決死の覚悟で挑む2025年「もうセンターは自分の定位置じゃない」

3月5日(水) 22:00

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ヤクルト・塩見泰隆は、3月4日のソフトバンクとのオープン戦に「1番・センター」で先発すると、第1打席でレフトフェンス直撃の二塁打。昨年5月11日の巨人戦で負った左ヒザ前十字靭帯と半月板損傷という大ケガを乗り越えての復活劇だった。

キャンプ中に笑顔を見せるヤクルト・塩見泰隆photo by Koike Yoshihiro

キャンプ中に笑顔を見せるヤクルト・塩見泰隆photo by Koike Yoshihiro





【チームの命運を左右する存在】塩見はヤクルトの命運を左右する存在と言っても過言ではない。フル稼働した2021、22年、チームはリーグ連覇。ケガで長期離脱した23、24年は5位に沈んでいる。

髙津臣吾監督は「それを言葉にすると、塩見が責任を感じてしまうかもしれないですけど......」と前置きし、こう続けた。

「勝っている時、彼がチームの中心にいたことは事実です。彼がいるといないとでは、味方にも敵にも大きな影響があったと思います。(山田)哲人だったり、ムネ(村上宗隆)だったり、中村悠平だったり、ウチでいう中心選手のひとりということに間違いないです」

そんな塩見は「チームを離れたことはめちゃくちゃ悔しくて、正直、なかなか試合を見ることができませんでした」と、当時を振り返った。

「そういうなかで、仲間からの励ましはありがたかったですし、連覇した時のチームの雰囲気を思い出しながら、『ああいうのをまたやりたいな』って。野球って本当に苦しいんですけど、21年や22年は苦しいなかに楽しさがありました。それは野球をしていくなかですごく大事なことで、みんなも楽しかったと思うので、またそれをやりたいなって」

ケガのあと手術を終えると、9月後半には二軍の戸田球場でリハビリをスタート。12月、1月はほかのリハビリ選手たちとチームを組んで練習に励んだ。キャッチボール、ロングティー、外野でのノック、ベースランニング......野球の動きが一つひとつと増えていった。

捕球してからのスローイングでは、「ステップが合わない、リズムが全然わかんない」という日もあれば、「内野ノックで低めに投げて、スローイングの修正をする」という日もあった。

「まだまだ詰めるところがたくさんあるなと。状況に応じて、強く投げたり、弱く投げたりがあるんですけど、まだ感覚がズレている。そこはキャンプや実戦に入っていくなかでやっていけたらと思っています。今はその動きに対して、ヒザがちゃんとついてきてくれるのかを確認しつつ、リズムを意識しながらやっています」

持ち前の天真爛漫さでリハビリチームに活気をもたらし、強く印象に残ったのはアップやランメニューなどでの意識の高さだった。動きのすべてが正確で緊張感があり、まったく隙がない。

「隙なし、死角なしです(笑)。やっぱりきれいに動いたほうが、ケガのリスクや筋肉への負担も少ないですから。ただそればかり追い求めて、自分のよさやスピードが落ちてしまったら元も子もないので、そこは意識しながらやっています」

戸田でのリハビリは「キャンプに入るまでの土台づくりとしては順調に進んだのかな」と、1月28日に打ち上げた。筋肉量は4キロ増えたという。

「再発防止のために筋質的なところなど、いろいろなことをやってきました。多くの動きや強度はまだそこまで上がってきていないので、キャンプで一気にギアが上がっていくと思います。野球の動きとしてはまだ怖さがあるので、7割から8割くらいですかね」

【外野はどこでも守れるように】2月、二軍の宮崎・西都キャンプではチーム練習に参加。午後の個別練習では、近い距離から緩いボールを打ち返す"ショートゲーム"で約120球、バットを振り込んだ。ボールを投げていたのは川端慎吾。助言を交えながら「いい練習になったでしょ」と、お互い充実した笑顔を見せた。

キャンプ中のシートノックでは、レフトを守る日もあった。

「もうセンターのポジションは自分の定位置じゃないと思っているので......。一からのスタートとして、外野ならどこでもしっかり守れるように」

2月17日には、このキャンプ「3回目ですかね」というライブBP(実戦形式の打撃練習)を行なった。山本大貴、木澤尚文、佐藤琢磨相手に40球中14スイング。安打性の当たりは4本あり、うち2本は長打コースに飛んだ。

「そんなに出てないです(苦笑)。まだまだですね」

そう塩見は言ったが、表情から焦りは感じられない。

「打球の角度や『バシっ』とボールをつかまえる"打感"が薄いというか、ちょっと甘い。バットは量も振れているのでよしとしていますけど、ボールの見え方が思うようなものではなかった。実戦感覚でアジャストするのがまだまだなので、今は打席を重ねていきたいところです。体的にはいけるので、こっちは試合がないので早く一軍に呼んでほしいところです(笑)」

最終クールを前に、ここまでの状態について「野球の動きは、戸田で言った7割、8割のなかでも、また上がってきていると感じています」と話した。

「ヒザの状態というところでは、出力は上がっていますし、スライディングだったり、ケガをしたベースを踏む動作だったり、無理なくできています。ここからはどんどん強度を上げていくフェーズに入るので、キャンプが終わったら100パーセントでしたというイメージですね」

【個人的な目標は決めてない】塩見は「切磋琢磨」という言葉をよく使う。先輩、同級生、後輩たちに囲まれ楽しそうな姿を見ると、ほんとにチームスポーツが好きなんだなと思うことがある。

「個人の戦いも好きですけど、野球はチームスポーツなので、みんなで戦っていったほうがチームは強いです。みんなでつらい練習をしたなかでの勝利はすごく大きな喜びで、そのためにはチームの団結力が大事だと思うので"切磋琢磨"と言っています」

そう話す塩見だが、結果がついてこなかった若手時代は「焦っていて、チームスポーツというよりも個人スポーツでした」と言った。

「それがある程度レギュラーとして試合に出られるようになっていくと、次の日も試合に出られるという安心感が生まれました。でもこれから出てくる選手は、やっぱり個人との戦いじゃないですか。全員が個人で戦ってもダメなので、正しい言い方がどうかわからないですけど、気持ちに余裕のある選手がチームをつくっていけば、その子たちも『こういうチームなんだ』と、先輩たちを見て学べます。そういう"和"をつくることを、できるだけやりたいなと」

山崎晃大朗二軍外野守備走塁コーチは塩見とは同学年で、西都キャンプではコーチと選手という間柄で接することになった。

「僕がノックを打って、外野とは距離があるので若い選手に伝えきれない部分を、塩見が身振り手振りで伝えてくれた。直後にエラーしていたのは塩見らしくて相変わらずでしたけど(笑)。先輩に頼っていた塩見、自分本位でしか考えてなかった塩見から、後輩の面倒も見てくれるという3人目の塩見が出てきたと感じています。キャリアを積みながら、塩見という選手がどんどん大きくなっているのかなと......頼りにしています」

塩見に今シーズンの目指すところを聞くと、「個人的な目標は決めてないです」と答えた。

「1試合1試合をしっかり戦って、ケガをせずにずっと一軍にいられたらと思います。去年は143試合出場と言っていましたけど、開幕して十何試合かで腰を痛め、そのあとのケガがあってシーズンが終わってしまった。

さっきまで『チームワーク、チームワーク』と言ってきましたが、今年は若い頃に立ち返って、個人プレーになることがあるかもしれません。体のこともありますし、自分をしっかり見つめ直し、なおかつ優勝を目指していきたい。自分にとっては難しいシーズンになると思います。自分のことだけに貪欲といったら語弊がありますけど、まずは自分の結果を出して、チームも同じくらいに大事なので、その両方をしっかり求めてやっていきたいですね」

髙津監督は今シーズンの塩見について、「何番を打って、何本打って、何盗塁して、ポジションはどこでとか具体的なことはほとんど考えてないです」と言った。

「元気で戻ってくれさえすればいいので、要求することは特にないです。1本のヒットやひとつの守備、走塁で試合の流れやベンチの雰囲気を変えられる。そういう選手はなかなかいないですが、塩見はそんな選手です。どの選手も大事ですけど、やっぱり塩見にはグラウンドに立ってほしいですし、ベンチにいてほしいと思っています」

塩見の復活はチームに勇気にもたらし、相手チームにとっては大きな脅威となるに違いない。

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