笑福亭鶴瓶&原田知世が今やりたいこと「何歳からでも遅くないと思っています」

左から)原田知世、笑福亭鶴瓶

笑福亭鶴瓶&原田知世が今やりたいこと「何歳からでも遅くないと思っています」

3月6日(木) 3:00

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「日本語を読み書きができない」自分を想像したことはあるだろうか。

映画『35年目のラブレター』で描かれる西畑保は、過酷な幼少期を過ごしてきたがゆえに、読み書きができないまま大人になってしまった男性だ。彼を支える妻・皎子(きょうこ)とふたりで「読み書きができないこと」を乗り越えていく実話を元にした作品だ。

保を演じる笑福亭鶴瓶と皎子を演じる原田知世に、この春一番の感動作について話を訊いた。作品さながらの優しい空気が流れていたふたりはどんな関係性にあるのだろうか。

夫婦の真面目でピュアな部分が共鳴しあう物語

――まず、脚本を読まれてどういったところを大事にしたいと思われましたか。

笑福亭鶴瓶(以下、鶴瓶) 僕は結婚して50年なんですけどね。50年だろうが10年だろうが夫婦のあり方というのは全然変わらないんですけど、うまいこといい感じで脚本が書いてあるんですね。
それを原田さんがやるのがすごく良かったなと思うんですよ。
実際に演じていても、ずっと原田さんでほんまによかったなって思っていました。すごく想像もしやすいし、実際に居心地も良かったですから。初めて脚本を読んだときはまだ原田さんが演じるということはわかってなかったんですけど、うまいことしはるな、と思ってね。僕はもう原田さんしか考えられへん。

原田知世(以下、原田) ありがとうございます。

鶴瓶 撮影に行くのが楽しかったですね。

原田 皎子さんはすごく柔らかくて、でも芯はしっかりとある女性で、いつも母のような愛で保さんを見つめている姿が印象的でした。演じる上で、そこはすごく大切にしようと思っていました。保さん自身も情が深くて、懸命に人生を歩んできた人で、2人ともとてもピュアな心を持った人。お互いにとって、この人のために生きたいと心から思える人に出会えたことが大きな幸せだと思いますし、ふたりの巡り合わせが奇跡のようにも感じました。幸せの形っていろんなものがありますけど、このご夫婦の姿にとても尊い愛をみせてもらえた気がしています。

一期一会の現場を大切に

――本当に尊い瞬間がたくさんある作品だったと思うんですが、現場で一体感を感じたり、温かさを感じた瞬間があれば教えてください。

鶴瓶 全体の空気感が昔の映画の匂いがするんですよ。昭和の匂いがする映画です。
映像もそうなんですけど、そこがいま、みんなが忘れかけてるところだと思います。そんな派手なこともないけどすごく大事なことで。
一つ一つがどうというわけではなく、全体の空気感が昭和なんです。保さんたちが暮らしているあの家もうまいこと見つけてきよったしね。

原田 本当ですよね。

鶴瓶 あの家がもう根本ですよ。あの場所から出てくる雰囲気がよかったなと思います。

――人の距離感が近かったり、繋がりの深かった時代を感じるんですね。

鶴瓶 考えたら、皎子さんはタイプライターという先端なことをやっていて、保と結婚しないでもいいわけですよね。でも、お見合いをして関わった以上、この人を絶対に支えていく、この人のために生きる、という意思が見えますよね。
そんな派手な映画じゃないけど、大事ですよ、この映画。今の時代は物も多いねんけど、本当に捨てるものも多いじゃないですか。一つのものを大切にすることがすごく大事だと思うんですよね。そういう思いがぴったりな映画です。

原田 映画は関わる方も多いですし、みんなが同じ方向を向いて、同じ船に乗って一緒に行くような。毎回力をみんなで合わせて取り組むからこそ、完成したときに共に喜びを分かち合えるんですよね。作品の場合、大体一期一会。全員がまた同じように集まることはないので、その瞬間をすごく大事にしたいなっていつも思います。
今回の現場には、若い女性のアルバイト、かな。まだ見習い的な方がいて、彼女たちがイキイキと働いてくれているのを見るとすごく嬉しかったですし。最後に、「すごくいい経験できました」って言ってくれていて。

鶴瓶 そういう現場は少ないよね。

原田 私も初めてだったのですごくいいなと思ったんですよね。私がデビューした頃ってほぼスタッフの方は男性で、女性って記録さんとメイクさんぐらい。でも今は照明部さんにも音声部さんにも入ってきてるし、時代が変わってきているな、という気がしますね。

自然体の演技の中、印象的だったのは?

――おふたりの空気がすごく自然で穏やかだったんですが、撮影中に印象的だったやりとりはありますか?

鶴瓶 原田知世流の関西弁が聞けるのがすごく良かったです。よく東京の人とか、違う地域の人が関西弁を話したらおかしいと思うんですけど、原田さんも、皎子の若いころを演じる(上白石)萌音ちゃんもそうやけど、受け継がれた関西弁に全然違和感がない。若い萌音ちゃんから原田さんに移ったときの関西弁はなにか打ち合わせしてはるのかなと思うぐらい、いい関西弁です。イントネーションよりも、その人自身の関西弁がすごく良かったですよ。

原田 鶴瓶さんはすごく自然体で。撮影していたときに食卓にある物をとるシーンがあったんですけど、鶴瓶さんの肩越しにカメラマンの方が用意していて。鶴瓶さんもずっと動けないから、私も隣にいて喋っていたんですけど、たぶん、喉が乾いてらっしゃったのかな。繋がりとか気にせず、そこにあるお茶を飲み干されて。みんな驚くんだけど「いい、いい、大丈夫!」と監督がおっしゃってまたお茶をついだりとか。そういうおもしろいエピソードがいろいろ現場であって。でもそのひとつひとつが、みんなかわいいんですよね。スタッフも私も含め、全員がかわいい!って思うような、とても魅力的な部分がありました。

鶴瓶 子どもやな(笑)。

原田 それが人間味というか、みんなが和むような。

鶴瓶 忘れてた、よう覚えてますね。

原田 今日、こんなことがあった、って忘れないようにメモしてたんです(笑)。他にもそういうことがいっぱいあって楽しかったですね。

鶴瓶 みんなに甘やかされてるというか……。

原田 その自然さを持ったままお芝居にも入られるので、あまり境目がないというか。いつもその場の空気を感じて、その瞬間に起こったことにも反応されながらお芝居されるので、一緒にお芝居するのがすごく楽しかったですし、だから鶴瓶さんのお芝居はいつもリアルで自然なのだと思いました。鶴瓶さんご自身の魅力が役に溶け込んでる。

ふたりが「ラブレター」をしたためる相手

――映画の中では感謝の気持ちをラブレターにしたためていたと思うんですけど、感謝の気持ちだったり、ラブレターのような形でしたためたい相手はいらっしゃいますか。

鶴瓶 嫁ですね。(結婚してから)50年過ぎましたけど、ずっと変わりなく。
阪神淡路大震災のときのことなんですけど、僕は西宮にいて。どうしても仕事で東京に行かなあかんかったんですよ。
余震が多くて、あんな地震に遭うてるから、どうなるかわからないじゃないですか。僕は東京に行く、彼女は西宮におる、というときに手紙書きました。離れ離れになっている間に何かあったら、と思って。同じことを共有できてよかったな、っていう手紙を書きましたね。あとは、僕が大阪で修業したときも離れていたので、手紙を書いていました。

――もう今は書いていらっしゃらない?

鶴瓶 結婚記念日と誕生日は手紙を交換してますね。

原田 ステキですね。

鶴瓶 でも忙しいって言うたらあかんけど、僕より先にね、嫁が書いた手紙がテーブルに置いてあるわけですよ。僕も普通のノートに書いて渡せばええんやけど、そんな雑にやったらあかんから。嫁はそういうカードに書いてくれてるし。それで夜に買いに行こうとしたら、嫁が「どこ行くの」って。「ちょっと行くねん」「何しに行くの」「用事あんねん」「何買いに行くの」なんてね。いやいや、適当に書くんやったらいいねんけど、そうじゃなくちゃんとしたカードに、と思うんですよ。でも毎回、交換してますね。

原田 私はあんまり手紙を書くほうではないんですけど、書くとしたら母と姉ですかね。東京に出てきてずっと一緒に支えてくれているふたりです。自分のことはもちろんですけど、妹、娘のことを考えてくれるふたりなので、昔はよく海外に仕事で行ったりすると手紙を書いていました。すぐに帰るんですけどエアメールで送ったり、FAXでこんなことあったよ、って。最近はお誕生日だとかそういうときに感謝の気持ちを伝えています。

今何か始めるために「まずはやろうと思うことが大事」

――原田さんが公式コメントで「大人になってから何かを初めて達成することができるのだと希望が持てるお話です」とおっしゃられていましたが、おふたりは大人になった今から始めたいこと、達成したいことはありますか。

鶴瓶 この世界でずっと生きてきて、振り返ると「あの辺を雑にしてたな」と思うことがあるんですよ。だから何か新しいものを始めるより、前にやっていたものをもう一遍、きっちりやる。ちゃんとやれてなかったやん、ということがいっぱいあるんですよ。
次の新しいものを持つのも大事やけども、昔やったことの大事なことをもういっぺん繰り返すっていうのはとても大事やと思います。

――もう一度、挑戦されていることというと?

鶴瓶 落語ですよね。やってたけど、ちゃんとやれてなかったんじゃないかなと思うからきっちりしよう、と。今でも遅くないと思うんですよ。70歳過ぎても遅くないと思えるっていうのはありがたいことです。

原田 私は50代になってゴルフを始めたんです。ゴルフってメンタル面も含めて、すごく大事で。時間もかかってるんですけど、振り返ると1年前よりちょっとだけど変化してるんです。年を重ねるとだんだんとできないことが増えていくのかな、と思っていたんですけど、ゴルフを始めてからいや、むしろできてきたな、って。そういう自分に対しての伸びしろに期待も持てるようになったんです。
他には、ここ数年やっているのがボイストレーニングです。いい先生に出会えたというのもあるんですけど、正しい喉の使い方や力まずに声を出す方法など学び直してみているんです。ゴルフをやるみたいな、ある意味、趣味みたいな形で楽しんで続けていけたらいいな、と思って。どちらも自分よりも年代の若い方がコーチだったり先生だったりするんですけど、いつも寄り添って教えて下さって。そういうプロの方たちにあらためて一から学ばせていただける喜びを感じています。

――以前と取り組み方って変わってきますか。

鶴瓶 僕はもう70超えてますから、あんまり言いたくないけど、やっぱり時間がない。とにかくやらないとあかん、という思いがすごく強くなってます。

――逆に今から始めて間に合うのか、と諦めてしまう人も多そうですよね。

鶴瓶 なんぼでも間に合います。原田さんもゴルフを楽しみながら成長していこうとやってはんねんけど、実際ゴルフも、ボイストレーニングも同じことなんですよね。

原田 まだ伸びしろがあるかもって期待感を持てたところがありますね。

――きっと、この映画を観られたら自分もできるかも知れないと思う人も多いかと。

鶴瓶 やっぱり自分でやろうって思わないと無理やね。

――そういう人に背中をちょっとポンと置くような一言を最後いただけたら。

鶴瓶 スタートすることってすごく大事です。一歩踏み出すことが大事やな、と思う。

原田 とりあえず、本当に始めてみて、それが続かなければ、また別のことを見つければいいから、あんまりこれを始めたらずっとやらなきゃいけない、とか。あまり目標を立てすぎると自分にプレッシャーをかけるので、楽しかったら、また明日も明日も、って気がついたら1年続いてたってことになるわけで。あんまり完璧を求めると厳しいですよね。気楽でいいと思います。

取材・文:ふくだりょうこ撮影:友野雄

<作品情報>
『35年目のラブレター』

2025年3月7日(金) 公開

出演:笑福亭鶴瓶 原田知世
重岡大毅 上白石萌音
徳永えり ぎぃ子 辻󠄀本祐樹 本多力
江口のりこ 瀬戸琴楓 白鳥晴都 くわばたりえ
笹野高史 安田顕
監督・脚本:塚本連平
配給:東映

公式サイト:
https://35th-loveletter.com/

公式Xアカウント:
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公式Instagram:
https://www.instagram.com/35th_loveletter/

(C)2025「35年目のラブレター」製作委員会

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