ダメダメでちょっと内気な“ミッキー”に、世界中が熱狂!?ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』はどんな映画?

ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』を徹底ガイド!/[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

ダメダメでちょっと内気な“ミッキー”に、世界中が熱狂!?ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』はどんな映画?

3月5日(水) 8:30

『パラサイト 半地下の家族』(19)のポン・ジュノ監督の待望の最新作にして、集大成と呼ぶべき『ミッキー17』が3月28日(金)より日本公開となる。監督の母国であり世界で最も早く公開を迎えた韓国では、2025年公開作でダントツNo.1のオープニング成績を記録!ブラック企業の“使い捨てワーカー”になってしまった主人公ミッキーが権力者たちに逆襲を仕掛けるエンタテインメント大作…ということだが、いったいどんな映画に仕上がっているのか?本作をより楽しむためのポイントを、レビューや海外での反応を交えてたっぷり紹介していこう!
【写真を見る】超絶ブラックなお仕事でミッキー死す!でも特殊な機械で何度も生き返らされちゃう…

■映画史を塗り替えたポン・ジュノ監督の最新作がついにやってくる!

半地下に暮らす失業中の一家がエリート社長一家に“パラサイト(寄生)”する姿を通して格差社会の実態を鮮やかに描いた『パラサイト 半地下の家族』は、韓国映画史上初めてカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。韓国だけでなく日本や欧米圏でも大ヒットとなり、第92回アカデミー賞では「非英語作品として初の作品賞」、「アジア出身監督として2人目の監督賞」、「非英語作品17年ぶりの脚本賞」に、「韓国映画初の国際長編映画賞」と、4つの歴史的快挙を達成。韓国映画の歴史を塗り替え、一躍世界にその名を轟かせることとなった。

『パラサイト 半地下の家族』以来、久々の新作がついに完成!すでにお披露目された海外での評価は?

そして2025年。『パラサイト 半地下の家族』以来となる待望の長編最新作『ミッキー17』でポン・ジュノ監督が満を持してスクリーンに戻ってきた。本作で描かれるのは、ブラック企業でトップにこき使われるどん底の労働者という、我々日本人にとっても他人事とは思えないシチュエーションだ。現地時間2月13日にイギリスのロンドンで行われたワールドプレミアでは、いち早く鑑賞した観客から「ポン・ジュノ監督の歴代最高の英語映画」「私の人生で見た映画のなかで最も先の読めない映画の一つ」「斬新で唯一無二なストーリーテリングが現代社会にも鋭く切り込んでいる」「どの瞬間も愛おしい」「あと8回は観たい!」「真のブロックバスター」など絶賛の声が鳴り止まない。
第75回ベルリン国際映画祭は大熱狂!


また、世界三大映画祭の一つである第75回ベルリン国際映画祭では、世界を代表する人気監督の新作や映画祭を盛り上げる華やかなタイトルがそろった「ベルリン・スペシャル・ガラ部門」で上映され大熱狂を獲得。本作が絶賛される理由は、使い捨てワーカー、ミッキーのダメダメでちょっと内気な愛されキャラも相まって、彼の抱える仕事の悩みに誰もが共感することで、繰り広げられる怒涛の下剋上に思わずスカッとする、“逆襲エンタテインメント”に仕上がっているからだ。

■何度も生まれ変われる“夢の仕事”?大ピンチのミッキーがブラック企業に逆襲!

『ミッキー17』は、友人と立ち上げた事業もうまくいかず、借金取りに目をつけられてしまったミッキーが、失敗だらけの人生からの一発逆転をかけてある仕事に申し込むところからすべてが始まる。その仕事は、何度でも生まれ変われるという“夢の仕事”。

人生どん底のミッキーは、一発逆転をかけて“夢の仕事”へ

細かい部分までよく読まずに“夢の仕事”の契約書にサインしてしまうミッキーだったが、その実態は身勝手な権力者たちから命じられる超絶ブラックな任務で命を落とし、そのたびに特殊な機械で生き返らされる究極の“死にゲー”だったのだ!

死んでは生まれ変わり、過酷な労働で搾取されてはまた死んで…。そんな日々を繰り返し、17人目のミッキーこと“ミッキー17”は、ある日の労働の最中に生死の境をさまよう事態に遭遇し、命からがら帰還を果たす。ところが自分の部屋には、手違いによって生まれ変わったもう一人のミッキーが…。

まさかのミッキーが2人…!?

2人同時に存在していることがバレたらどちらも消されてしまう。絶体絶命のピンチに、ミッキーは権力者たちへの逆襲を誓うのだが、もう一人のミッキー、“ミッキー18”はよりによって正反対の攻撃的な性格の持ち主だった。

一人二役どころじゃない?何度も生まれ変わるミッキーを演じるのは、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(05)、『THE BATMAN―ザ・バットマン―』(21)など、悩みが尽きない主人公を演じさせたら右に出る者はいないロバート・パティンソン。そんな彼が挑むのは、マーベル・シネマティック・ユニバース作品のハルク役でおなじみのマーク・ラファロ演じるブラック企業のトップのマーシャルに、『ヘレディタリー 継承』(19)の怪演で話題をさらったトニ・コレット演じるイルファと、見るからに身勝手で手強そうな権力者たち。はたしてミッキーの逆襲は成功するのか!?

■タイプの異なるミッキーに感情移入!?最後の1秒まで楽しめるノンストップなエンタメ感

ここまでは『ミッキー17』を楽しむためのポイントを紹介してきたが、以降は本作をいち早く鑑賞したMOVIE WALKER PRESS編集部員によるレビューで、さらなる魅力と見どころに迫っていきたい。



原作はSF小説で、「記憶をそのままに再生」「舞台は氷の惑星」という設定に、どうやら硬派なSF映画なのか…と思いきや、いままでのポン・ジュノ監督のすべてが詰まったまさに集大成!近未来を舞台にしているが、映しだされるのは現実世界と地続きで、ブラックユーモアも満載。宮崎駿監督にインスパイアを受けている(本作で強く感じるのは『風の谷のナウシカ』)という発言にも頷ける、エンタメ感にもあふれたとにかくノンストップな展開に、137分があっという間に感じるはず。
原作はエドワード・アシュトンの傑作「ミッキー7」…10人増えてる!


壮大なミッションに挑んでいるのに、妙に覇気がないミッキー。それもそのはず、任務の内容は誰がどう聞いても「それは無理だろ…」という内容ばかり。“何分で死ぬのか試したい”と半笑いで命じ、ミッキーをゴミのように扱っている姿には滑稽でもあり悲しく見えるのだが、なんとも小気味よいリズムでコミカルに描かれるので、思わず笑ってしまう場面もあるから不思議だ。
正反対の性格の2人のミッキーが、周囲の人々とどのように接するのか…


次々に生まれ変わるミッキーたちが、見た目はまったく同じだが微妙に性格が違うという、パティンソンの演技分けにも驚くはず。数多く登場するミッキーのなかで、本作でメインに描かれるのは、“ミッキー17”と“ミッキー18”の2人。ミッキー17は、やばすぎる命令に耐え、もはや任務とはまったく関係ない超絶ハラスメントにも耐え…。なんでもやりすぎだろと思わず突っ込みたくなる。一方のミッキー18は、17とまったく正反対の性格。これが“建前と本音”のような関係になっていて、誰しもが持つこの二面性をミッキーに当てはめることで、2人が異なる行動を起こす場面でも、誰もが両者に感情移入できる構造になっているのが見事に感じられた。

そんな2人が逆襲をかけるのは、身勝手な権力者のマーシャル&イルファ。オーバーアクトも自然に感じるぐらいの強烈さに、同情の余地が1mmもない傍若無人ぶりが鑑賞後も頭から離れない。上下構造の格差を描くにあたって、この権力者たちが命じる無茶振りの数々は、突然方針が変わったり謎のイベントを強行したりと、仕事で絶対やられたくない“あるある”もしっかりおさえている。そして、最初から最後までずっと悪役でい続けてくれるからこそ、迎える結末には格別の爽快さを得られる。

マーク・ラファロとトニ・コレット、悪役2人の演技が強烈

これまたポン・ジュノ監督作らしい、魅力的なサブキャラクターたちが登場するのもポイント。詳細はぜひ本編で確認してほしいが、ミッキー視点での“逆襲エンタテインメント”として楽しみつつ、別視点で観ることでさらに本作の深みを感じられる。また個人的には、エンドクレジットでのある仕掛けにもグッと来るものがあり、最後の1秒まで余すことなく楽しめた。筆者と同様に、きっと鑑賞後にはもう一回観たくなっているはず!

■ポン・ジュノ監督来日も決定!日本公開が待ち切れない

韓国では公開後4日間で動員100万人を超え、この動員100万人突破のペースは『オッペンハイマー』よりも早いなど、今後の興行収入記録樹立に期待が高まっている。そして、ロンドン、ベルリン、パリ、ソウルとワールドツアーを続けてきたポン・ジュノ監督が約5年ぶりに来日!ジャパンプレミアが開催されることも決定している。
ポン・ジュノ監督来日も決定した『ミッキー17』


すでに世界中の映画ファンや批評家たちを魅了し、北米をはじめとした世界30を超える国と地域では3月7日(金)に公開を迎える『ミッキー17』。IMAXに加え4D、Dolby Cinema、ScreenXとラージフォーマットでの上映も決定し、もう3月28日(金)の日本上陸が待ち切れないはず…!ポン・ジュノ監督の最新作を、劇場で体感しよう!

構成/MOVIE WALKER PRESS編集部 文/久保田和馬

※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記


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