定年後に“引きこもり”になると認知症リスク大!?高齢者に必要な「脳を老けさせないための習慣」

定年後に“引きこもり”になると認知症リスク大!?高齢者に必要な「脳を老けさせないための習慣」

3月5日(水) 6:48

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「引きこもり」と聞くと、若年層をイメージする人も多いだろうが、2019年に内閣府が行った調査によると、世代的に最も多いのは意外にも40~64歳の男性。

その人数は、なんと約61万人にも達するという。 最近あまり外に出ていない……といった人は要注意かもしれない。

「この『引きこもり状態』には、脳の老化を早めてしまう危険性があります」と警鐘を鳴らすのは、東北大学教授で、『脳を鍛える! 人生は65歳からが面白い』の著者である川島隆太氏。 なぜ、引きこもりで脳の老化が進んでしまうのか?その原因と対処法を川島氏に教えてもらった。

(本記事は、『脳を鍛える! 人生は65歳からが面白い』より一部を抜粋し、再編集しています)

定年退職し、いままでの生活が激変する中高年男性は要注意

中高年男性に引きこもりが多いのは、仕事をリタイアし急に目標とするものがなくなったり、長年の習慣が崩れたりすることで、生活が乱れたり、社会との接点が薄くなったりすることが原因だと川島氏は言う。 実は、この引きこもり状態は、認知症のリスクを高める重要な要因となる。

「引きこもりになると、人生そのものに対するやる気が大幅に目減りしてしまいます。脳を使ったり運動したりできないのはもちろんのこと、食事がおざなりになり、栄養が不足してしまうからです。

すると頭の回転が悪くなり、外へ出ようとする意欲が湧いてこず、ますます脳の働きが悪くなり……と、負のスパイラルに陥ってしまいます」(以下、すべて川島先生)

では、引きこもり状態にならず、認知症のリスクを減らすにはどうすればよいのだろうか?

朝は脳の「ゴールデンタイム」。散歩で「幸せホルモン」が分泌される!

まず、川島氏が推奨しているのが、「朝の時間を散歩に充てる」ことだ。

「人間の身体には年齢に関係なく平均で24.2時間の体内時計が備わっています。放っておくと少しずつ、地球の周期に対し体内時計が遅れていくので生活時間とずれが生じます。

ですが、朝に太陽の光を浴びると、この体内時計がリセットされます。太陽光には『セロトニン』という神経伝達物質の分泌を促す力があり、日光を浴びてセロトニンが分泌されることで身体はシャキッと目覚めた状態になります」

「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」。 朝の散歩は、このセロトニンの分泌をより効果的に促すことができる。

朝、ゆっくり散歩ができないという人は、ひと駅分多く歩いてみる、いつもより少しだけ遠回りしてみるなど、工夫をしてみるのもいいかもしれない。 これは、年齢を重ねている人にこそ、おすすめの習慣。

「幸せホルモン」セロトニンは年齢とともに分泌量が減る

なぜなら、セロトニンは年齢を重ねると分泌量が減ってしまうからだ。 実は、減るのはセロトニンだけではない。眠りを促す神経物質である「メラトニン」も年齢を重ねると分泌量が減ってしまうのだという。

「残念なことにセロトニンは加齢によって分泌量が減っていきます。同時にメラトニンも減ってしまうので、ベッドに入ってもなかなか眠れない、目は早く覚めるけれどシャッキリしないという日が増えていきます。

起床後にカーテンを開けるだけでも太陽の光を浴びることはできますが、光を浴びる時間が多ければ多いほど、セロトニンの分泌量が増えることがわかっています。積極的に散歩に出かけることで、太陽光を浴びる時間を増やしてみてはどうでしょうか?」

いつもと違う道を歩くだけでも違う!「予期せぬ出会い」によって脳を活性化

また、川島氏によると、脳の活性化には、「予期せぬ出会い」も効果的だという。

「脳は新しい経験や知識を入れると刺激されます。見たことのない景色や思いがけない人やモノと遭遇し、うれしい驚きや喜びがあると脳機能が向上するのです。 よく知っている生活圏内でも、1本違う路地に入ってみるとそこは新しい世界です。

いつもは電車に乗ってしまう区間を歩いてみるだけでも、『こっちでいいのかな?』『こんな家があるのか』と未知との遭遇の連続です。朝の散歩は脳にとっての思いがけない幸運(セレンディピティ)をもたらしてくれるかもしれません」

ほかにも、普段は行かないスーパーに足を運んでみる。コーヒーショップ巡りをしてみる。時間に少し余裕があれば、新しい趣味に挑戦する、といった方法もおすすめだ。 些細な変化を積み重ねることで、脳の活性化をより促すことができる。 始まりは、まず一歩外へ踏み出すことだ!

脳の若返りには、常に「目標を立てること」が大事

さらに、脳を老けさせないためには「目標を立てること」も重要だと川島氏は言います。

「目標を設定し、それを実現するために、作戦を立てて実行する。うまくいかないときは作戦を修正し、再チャレンジをする。ビジネスや日常生活でも必要とされることです。この一連の作業を行う能力のことを、認知科学や心理学では『実行機能』と呼んでいます」

この「実行機能」は、前頭前野の中核となる機能で、さまざまな心の働き(認知機能)を支えていることがわかっている。 しかし、普通に暮らしていると加齢に伴い自然に低下していってしまうのだという。そんなとき、重要なのが「目標を立てる」ということだ。

「仕事や生活のさまざまな局面で、目標を設定すること自体が、脳トレにつながり、生活の質の向上に役立つのです。目標に向けて行動することで、生活にもメリハリが出て外出の意欲も湧いてくることでしょう」

失敗を恐れてはダメ! 「小さな成功体験」が脳も心も元気にする!

常に目標を立てて行動するといっても、高すぎる目標を立てると達成までの道のりも険しく、途中で挫折してしまうことも……。

しかし、国立精神・神経医療研究センターの発表(文献/Hosodaら Communications Biology 2020 ★★)によると、大きな目標を達成するには最終的な目標だけでなく、途中の過程に「サブゴール」を設定するのが効果的なのだという。 その効果は研究で実証済みだ。

「研究では被験者にパズルを用意して、最後まで完成させることを目標にしてもらいました。 そのなかでやり抜くことが難しそうな人にも、目標を細分化して「サブゴール」を複数設定し、途中で達成感を得られるような仕組みにしたところ、最後までやり抜くことができたのです。

そして、目標を達成した人たちの脳は、将来を見越して自分がすべきことを考える働きがある『前頭極』の構造に明らかな変化が見られました。 灰白質(神経細胞層)の体積が増え、神経線維にもより情報伝達が確実になるような変化が生じていました。

例えば1か月後の仕事の会議用に100枚のスライドが必要だとします。 いきなり100枚を用意するとなると、気持ちがついていかないかもしれません。 しかし、『今日は全体のテーマ決めをする』『その後3日後は資料を探す』という具合に目標を細切れにして、少しずつ達成できるようにしましょう。

何度も『達成できた』という成功体験を積み重ねるうちに、前頭極が変化します。脳の報酬系の神経回路も強化されていくことでしょう」

「新しい刺激」と「小さな目標」を心掛ければ認知症リスクは減らせる

確かに、大きな目標は一見すると巨大な「壁」のように感じられるもの。 しかし、一歩ずつ、少しずつ進むことで、その高さは驚くほど低くなっていく。

さらに、「今日はここまで」と目標を細分化し、達成ごとに小さな成功体験を積み重ねることで、前向きな気持ちと自信を育むことができる。 目標をクリアにする心地よさが、脳も心も元気するのだ。

外に出て新しい刺激を取り入れること。 そして、小さくても具体的な目標を立てること。この2つを心がけるだけで、脳は活性化し、認知症リスクを大きく減らす力となるはずだ!

<文/日刊SPA!編集部>

【川島隆太(かわしま りゅうた)】
1959年千葉県生まれ。医学博士。東北大学医学部卒業、同大学院医学研究科修了。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学加齢医学研究所助手、講師、所長を経て、現在は同研究所の教授を務める。脳活動のしくみを研究する「脳機能イメージング」のパイオニアであり、脳機能研究の第一人者。ニンテンドーDS用ゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」シリーズを監修。『川島隆太教授の脳活計算120日』(Gakken)、『本を読むだけで脳は若返る』(PHP研究所)、『脳科学研究がつきとめた「頭のよい子」を育てるすごい習慣』(プレジデント社)、『とっさに言葉が出てこない人のための脳に効く早口ことば』(サンマーク出版)など、著書、監修書多数。認知症高齢者や健常者の認知機能を向上させるシステムの開発や、「脳を鍛える」をコンセプトとする産学連携活動に尽力している。2024年より宮城県蔵王町観光大使に就任。

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