司馬江漢《皮工図》府中市美術館(前期)
3月4日(火) 2:30
2025年3月15日(土)より、府中市美術館では、『司馬江漢と亜欧堂田善かっこいい油絵』展が開催される。江戸時代後期に油絵や銅版画を制作したふたりの画家、司馬江漢(しば こうかん/1747−1818)と亜欧堂田善(あおうどう でんぜん/1748−1822)を紹介する展覧会だ。
江戸の四谷に生まれた司馬江漢は、19歳の頃に鈴木春信に入門して浮世絵師となり、宋紫石の南蘋派を学んで中国風絵画にも挑戦。その後、平賀源内などの影響で洋風画を描くようになり、さらには日本で初めて腐食銅版画を制作した。自然科学にも関心が深く、『輿地全図』などの世界地図や天文に関する書物も刊行し、随筆家としても活躍した。
一方、現在の福島県那須川市に生まれた亜欧堂田善は遅咲きの人だ。47歳の時に「寛政の改革」で有名な白河藩主松平定信の命を受け、腐食銅版画の技法を習得。日本初の銅版画による解剖図『医範提鋼内象銅版図』や、幕府公刊の初の世界地図『新訂万国全図』などを手掛け、油絵では、両国の風景を濃密な色彩で表した代表作《両国図》などを残している。
亜欧堂田善《新訂万国全図》(部分)府中市美術館(前期・後期)
荏胡麻油などで自ら調合した絵具を使い、日本古来の絵絹に描かれた彼らの油絵は、西洋風とも日本風とも言えない不思議な魅力が漂っているが、それらは近代以降、「稚拙な段階の西洋画」と不名誉なレッテルを貼られてきた。しかし過去同館で紹介してきたふたりの絵画には、意外にも「かっこいい」という感想が多数寄せられたという。遠近法への素直な驚きから生まれた彼らの造形は、従来の西洋画を見知った現代人には、かえって新鮮に感じるのかもしれない。
そこで同展では、彼らの油絵はもちろん、銅版画や従来の墨や絵具を使って描いた伝統的な作品を紹介。さらにふたりの生い立ち、画家としてのそれぞれの立場や環境、目指したものなども考えつつ、その「かっこよさ」の本質を探る。江戸絵画ブームが言われて久しい昨今だが、江漢と田善にフォーカスした展覧会は極めて少なく、同展が貴重な機会になることは間違いない。
司馬江漢《円窓唐美人図》府中市美術館(前期・後期)
<開催概要>
『春の江戸絵画まつり 司馬江漢と亜欧堂田善かっこいい油絵』
会期:2025年3月15日(土)〜5月11日(日)※会期中展示替えあり
会場:府中市美術館
時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜(5月5日は開館)
料金:一般800円、大高400円、中小200円
公式サイト:
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakutenkaisai/2024_shiba_aoudou.html