遠藤健慎
3月3日(月) 3:00
映画『恋い焦れ歌へ』で1000人の候補者の中から抜擢され、以降、映画『こん、こん』で主演を務めるなど、映像を中心に活動してきた俳優、遠藤健慎が初の主演舞台『さえなければ』(3月5日より上演)に挑戦する。
『さえなければ』はヒラタオフィスとタカイアキフミが主宰を務めるソロプロデュースユニット TAAC(ターク)がタッグを組むヒラタオフィス+TAACの第2弾公演だ。2030年には生まれてくる人間よりも死ぬ人間のほうが多い「多死社会」が訪れると言われる現代。ある住宅街で、自治体による遺体ホテルの運営が始まった。運営開始前から今も、施設に反対する近隣住民からは抗議の声が上がっている中、1体の遺体の行方がわからなくなる―。
社会から目を背けられる場所に目を向け、誰もがいずれ直面する「死」について考える本作に、遠藤はどう向き合っているのだろうか。
お芝居をもっと突き詰めたいから、挑戦します――初めての舞台で主役の湯口省吾(ゆぐちしょうご)を演じられるということですが、今のお気持ちを教えてください。
今まで映像の世界でやってきたので、「主演? 失敗したらどうしよう」という思いが頭をよぎりました。緊張するだろうな、と…。でもやってみることにしたのは、ちょうど去年くらいから、自分が俳優としてやっていくことに対して「もっとやりたい! ちゃんと俳優という仕事に向きあいたい」と思うようになっていたからです。お芝居というものを突き詰めたいと思ったときに、舞台って生ものだから、アーティストさんのライブと同じで、そこでしか伝わらないものがある、やりがいのあるものなのかなって。そう思ったら、やってみよう、と腹をくくれたんです。それからはプレッシャーや緊張がなくなりました。
――お芝居をもっと突き詰めたい、と思うようになったのは、何かきっかけがあったんですか?
僕、事務所に入ってお仕事を始めて、もう17年になるんです。長く続けてきて、なんとなく具体的にゴールを逆算するようになって。まだ誰にも言っていないんですけど、自分の中で、たどり着きたい目標があるんです。それをあと3年以内くらいでかなえたいと思っていたとき、今回の舞台のお話をいただいたので、すごくいいタイミングなんだろうなと感じています。
――なるほど、緊張するしんどさよりも、チャレンジする気持ちのほうが勝ったんですね。
はい。それでいただいた台本を読んでみたら、僕は主演ではあるんですけど、主要な登場人物6人みんなに抱えているものがあって、全員の見せ場があったので、みんなでやる舞台なんだと思って、よりプレッシャーがなくなりました。
――台本を読ませていただいたのですが、たしかに遠藤さんはもちろん、主要人物の台詞量がどの方も多いですね!
そうですね! 覚えられるのかな?って心配だったんですけど、共演の先輩俳優さんたちが「大丈夫だよ、稽古をやってるうちに覚えるよ」って言ってくれました。ただ、感じているのは映像でやっているようなお芝居をすると、客席の奥のほうまで伝わらないから、嘘にならない範囲で動きを大きくしたり、話し方も映像よりももう1枚何かを載せないとならないなと感じて。そこは難しいなと痛感しています。
――映像と舞台での演技は確かに違いますよね。
今わかっているのは、動きを大きくしようとして大げさな演技をすると、客席のお客さんから観ても大げさに見えるんだなということです。先輩の永嶋(柊吾)さんもおっしゃっていたのですが、発声に関しても自分の無理したところで声を出そうとするといっきに変になるから、発声練習をしないといけないねと。ナチュラルに通る声を出せるようになることも今の課題です。
この作品の中で、生きることや死と向き合ってもらえたら――今回の舞台のテーマは「死」。なかなかに重たいテーマですが、誰もが直面することでもあります。ストーリーについては今どんなふうに受け止められていますか?
重いし、考え始めるとしんどいテーマですよね。でもおっしゃられたように、ゆくゆくは生きている人全員が等しく直面するものでもある。そこに今、どう向き合うかというのは演じている僕らと、観てくださる方々がこの作品を通してそれぞれの答えを見つけられる作品になるのかなと思っています。
特になにもせず、ぼんやりと過ごしてしまう日ってあるじゃないですか?
――ありますね。何もしたくないとか、する気が起きない日。
それがダメというわけではないんですけど、ぼんやりと毎日を生きてしまうよりは、せっかくなら、これがやりたいとか、これが楽しいとか、生きていることのポジティブな側面を捉えられるようになれたら、人生がもっと豊かになるんじゃないのかな。
――良いことをおっしゃいますね!
というのを(役の)省吾くんから受け取りました(笑)。劇中で「死」について考え、いろいろな行動を取るシーンがあるんですけど、でもそれって生きているからこそできることなんじゃないかな?って思ったんです。
――ふつうに生きているうちから、生と向き合って生きようということですね。普段忘れてしまいがちだけど、大事なことですね。演出のタカイさんとはどんなお話をされていますか?
今の段階(取材日は2月中旬)では演出も言語化されている部分とふわっとこちらに投げられている部分があって。これがみんなで作り上げるっていうことなんだろうなって実感しています。ドラマとかだと、はっきりこう、というのが決まっていることが多いので、これが舞台の面白さなんだなと。
――ご自身で考えることが多い?
そうですね。自分なりの答えや味を出さないとならない。その面白さが舞台にはあるんだと感じ始めています。
明日死ぬとしたら何をする?――少しパーソナルな質問もさせてください。明日死ぬとしたら、遠藤さんなら何をしますか?
うわーーー。なんだろう。平凡には終わりたくないかも。革命を起こしたいです!
――革命!
冗談です(笑)親しい人への挨拶まわりかな。たくさん友人がいるわけではないので、数えられる人数の友人たちに会って、でも明日死ぬよって伝えるのではなくて、なんでもない話がしたいですね。それでごはんを食べて、ヒーリングミュージックとか聴きながら、静かに最期を迎えたいです。
――毎日を大切に生きるために心がけていることはありますか?
コールドシャワーを浴びることです! 引くでしょう?(笑)
――コールドシャワーとは?
文字通り、冷水を浴びることです。まず46度くらいの熱めのお湯を浴びて、そのあと8度くらいの冷水を浴びるというやりかたです。去年、もやもやと悩んだりしていた時期に、生活習慣を整えてみようと思って始めたんですけど、心身がすっきりします。あと、日光を浴びるようにしました。それでかなり精神状態が安定しました。
――では最後に、前回取材させていただいたのが2023年の9月でした。あれから成長されたことを教えてください。
自分が「かまちょ」なんだと認めたことです!(笑)俺、ひとりで平気だし!って思いながら肩で風切って歩いていた時期もあったんですけど、今は渋谷の街もひとりで歩きたくないです(笑)俺は人にかまってほしいんだ、かまちょなんだって素直に思えてから、すごく心が軽くなりました。人に優しくされたいです。だからというわけではないけど、人にももちろん優しくします!
取材・文:藤坂美樹撮影:遥南 碧
<公演情報>
ヒラタオフィス+TAAC『さえなければ』
作・演出:タカイアキフミ
出演:遠藤健慎、福崎那由他、伊藤歌歩、古澤メイ、高畑裕太、永嶋柊吾
2025年3月5日(水) 〜12日(水)
会場:東京・サンモールスタジオ
※毎ステージ、終演後15分程度のアフターイベントを予定
【イントロダクション】
ある住宅街で、自治体による遺体ホテルの運営が始まった。現在もなお、職員と施設に反対する近隣住民の間で、侃侃諤諤の論争が繰り広げられている。そんなある日、1体の遺体の行方がわからなくなって…。
公式サイト:
https://www.taac.co/sae