レトロモビルは車だけではない。バイクの展示も見逃せない。その代表が、エリック・ドゥ・セイン(Eric de Seynes)氏のコレクションだ。
【画像】バイクはレトロモビルの「おまけ」ではない。時代を超えて愛される名車展示の充実ぶりに注目(写真17点)
ドゥ・セイン氏はヤマハのフランス輸入代理店でキャリアをスタートさせ、その後ヤマハ発動機ヨーロッパのCOO(最高執行責任者)を経て、2018年には社長兼CEOに就任。さらに2020年3月にはヤマハ発動機株式会社の上席執行役員に昇格し、2023年3月には国際モーターサイクリスト連盟(IMMA)の会長に選出され、2025年までの任期を務めている。
彼のバイクへの情熱は、レース活動にも表れている。1974年からレースを始め、1982年にはパリ・ダカール・ラリーに参戦し、ヤマハXT500で完走を果たした。その情熱はコレクションにも注がれ、今回のレトロモビルでは、彼が所有する20台以上の貴重なバイクが展示された。
展示されたバイクの中には、伝説のレーサーたちが乗ったマシンも含まれていた。
・クリスチャン・ラヴェル(Christian Ravel)の Kawasaki HR1(1971年)
・ヤルノ・サーリネン(Jarno Saarinen)が1974年のデイトナで勝利した Yamaha 350
・パトリック・ポンス(Patrick Pons)が1979年のモナコで勝利した Yamaha 750 TZ
・クリスチャン・サロン(Christian Sarron)が駆った 1989年 Yamaha YZR 500
そして、ドゥ・セイン氏自身がパリ・ダカール・ラリーで完走した ヤマハXT500 も展示され、多くのファンの注目を集めた。
耐久レースの名門・National Motos
現在、パリ近郊でホンダのディーラーを経営しながら耐久レースに参戦しているNational Motosも、過去のレース車両を展示した。
このチームは1979年のOW31から、2006年のル・マン24時間レースではホンダCBR1000RRを駆り総合優勝を果たすなど、耐久レース界に名を刻んできた。鈴鹿8時間耐久レースにも参戦しており、そのバイクはモビリティリゾートもてぎ内の博物館にも展示されている。
ヴィンセントを現代に蘇らせたゴデ
フランス・ノルマンディー地方のマロネー(Malaunay)に拠点を置くパトリック・ゴデ(Patrick Godet)も、ヴィンセント(Vincent)バイクの復元と再現で高い評価を受けている。
スイスのエンジニアフリッツ・エグリ(Fritz Egli)が設計した「エグリ-ヴィンセント(Egli-Vincent)」のフレームを再現する唯一の公認ビルダーであり、ヴィンセントバイクの遺産を現代に蘇らせる功績を残している。
復活した伝説・ブラフ・シューペリア
「バイクのロールス・ロイス」と称されるブラフ・シューペリア(Brough Superior)も、今回のレトロモビルで注目を集めた。
1919年にイギリスで創業されたこのブランドは、2013年にフランス・トゥールーズで復活し、現在もハンドメイドによる高級バイクの製造を続けている。チタン製フレームや高性能V型2気筒エンジンなど、最先端の技術と素材を採用し、1台1台が職人の手によって組み立てられている。今年のレトロモビルでは独自のブースを構え、多くのモデルを展示し大きな話題となった。
まとめ
こうして、今年のレトロモビルのバイク展示は、往年の名車から現代の革新的なモデルまで幅広く紹介され、大きな注目を集めた。バイクは決してレトロモビルの「おまけ」ではなく、その展示は、時代を超えて愛される名車たちの魅力を伝える貴重な場となっている。
今回のバイク展示の充実ぶりからも分かるように、レトロモビルは単なるクラシックカーのイベントではない。ここには、車と同様に、バイクというもうひとつの文化がしっかりと根付いているのだ。
そして、これで今年のレトロモビルに関する連載も一区切りとなる。クラシックカーとモーターサイクルの伝説が交差するこのイベントは、過去の遺産を未来へとつなぐ架け橋のような存在であり、毎年訪れるたびに新たな発見と感動を与えてくれる。
来年もまた、どんな名車たちに出会えるのか——今から楽しみだ。
写真・文:櫻井朋成Photography and Words: Tomonari SAKURAI
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