2025年のアニー賞にて長編インディペンデント作品賞・脚本賞、ゴールデングローブ賞にてアニメ映画賞を受賞、アカデミー賞では長編アニメーション賞と国際長編映画賞の2部門にノミネートされている映画『Flow』より、日本版本予告が解禁。併せて、アニメーション映画監督の細田守ら著名人から寄せられたコメントも到着した。
【動画】アカデミー賞2部門ノミネート『Flow』日本版予告
本作は、監督・製作・編集・音楽を一人で手掛けた『Away』で、アヌシー国際アニメーション映画祭コントルシャン賞受賞など、世界を席巻し、鮮烈な長編デビューを飾ったラトビアのクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督の長編2作目。2024年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映を飾り、同年のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞、観客賞ほか4冠を受賞した。
さらに、2025年のゴールデングローブ賞にてアニメ映画賞を受賞、アニメ界のアカデミー賞と言われるアニー賞にて、長編インディペンデント作品賞と脚本賞を受賞。2025年のアカデミー賞では長編アニメーション賞と国際長編映画賞の2部門にノミネートされ、オスカーの行方を予測するゴールド・ダービー賞ではアニメーション映画賞を受賞。全世界興行収入2000万ドルという、宮崎駿監督作『君たちはどう生きるか』を除くと最も商業的に成功した、独立系アカデミー賞長編アニメーション賞ノミネート作品に躍り出た。
世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとする中、ある1匹の猫は居場所を捨て旅立つ事を決意する。流れて来たボートに乗り合わせた動物たちと、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。しかし彼らの中で少しずつ友情が芽生えはじめ、たくましくなっていく。彼らは運命を変えることが出来るのか?そして、この冒険の果てにあるものとは―?
Blenderというオープンソースソフトウェアで制作され、予算が約6億円という異例尽くしの本作。ウェス・アンダーソン監督は「まったくユニークで、夢中にさせられる」、日本でもヒット中の『ロボット・ドリームズ』を手掛けたパブロ・ベルヘル監督は「美しく、感動的で、奥深い」と感嘆を寄せている。そのほか『ホールド・オーバーズ 置いてけぼりのホリデイ』を手掛けたアレクサンダー・ペイン監督、『コーダ あいのうた』監督・脚本のシアン・ヘダー、『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督ら、オスカー受賞経験のある監督たちからの絶賛も集まり、アカデミー賞受賞にも期待が高まる。
この度、日本版本予告が解禁。主人公の猫と、旅を共にする動物たちが壮大な冒険に繰り出す姿が描かれている。荒波を共に乗り越え、絆が生まれていく動物たち。冒頭の猫との出会いから存在感たっぷりのカピバラ、愛嬌満点の犬、小首をかしげるヘビクイワシ(鳥)、コミカルな動きのキツネザルなど、それぞれの個性あふれる動きにも注目だ。
併せて、本作に寄せられた著名人コメントも一挙解禁。今回の予告にもコメントの一部が使用されている。アニメーション映画監督の細田守、『ルックバック』を手掛けたアニメーション監督の押山清高、漫画家の藤本タツキらに加え、俳優・映画監督の斎藤工、ジルバロディス監督が対面を熱望したゲームクリエイターの小島秀夫、画家のヒグチユウコ、監督とパネルディスカッションの経験のあるアニメーション映画監督の吉浦康裕(『アイの歌声を聴かせて』)、カンヌやLAで『Flow』と同時出品の『化け猫あんずちゃん』を手掛けたアニメーション作家・映画監督の久野遥子、漫画家の浅野いにお、監督と同世代のイラストレーター・アニメーション監督のloundrawなど、現代日本を代表するクリエイター陣らが作品を讃えている。
アニメーション映画『Flow』は、3月14日公開。
※著名人コメント全文は以下の通り。
<著名人コメント>
■細田守(アニメーション映画監督)
物言わぬ動物たちが危機に瀕して奮闘するスリリングな逞しい姿に、命のきらめきと尊厳を見る。その瞳に込められた音なき言葉を、息を殺して聴け。
■押山清高(アニメーション監督)
映画は、観る人を乗せる小舟だ。猫に化けたギンツ監督の視点で、どこか人間社会を見ているような没入感がある。それが、愛らしい動物達の姿で描かれるから、人間は未熟でか弱く健気で、そして、大きな流れの中で色鮮やかに生かされている事に気づかされるのだ。
■藤本タツキ(漫画家)
多分クリエイターなら皆ずっとこういう作品を作りたかったと思います。少なくとも僕は思っていました。言葉が少なく、でもエモーショナルな物語はちゃんとあるものに憧れがありましたが『Flow』はその100点みたいな作品でした。見ている途中ずっとこれを作りたかったという気持ちと、猫達に早くゴハンを食べさせてあげて!と夢中で見ていました。
■斎藤工(俳優/映画監督)
孤独、孤立、分断、差別、飢餓、天災、我々人間界の様々な問題が、人間の居なくなった世界の、動物やあらゆる生命体のあり方がその答えをくれる。言語や国籍を超え、全ての人類に捧げられたギンツ監督からの美しく愛らしくも鋭利なラブレター。
■小島秀夫(ゲームクリエイター)
これがアニメとCG映画の流れ(FLOW)が辿り着く、ひとつの到達点だ。動物たちは擬人化されず、台詞もない。ところが、芸術的で、哲学的で、どこまでも社会派なのだ。ただの客寄せ動物映画と侮ってはいけない。本作は、21世紀に流され、漂流する我々人類のFlowchart(フローチャート)そのものだ。
■ヒグチユウコ(画家)
成猫になるまえの少し小柄な猫。彼の目に映る雄大な自然。そして天災。美しい不思議なこの映画は勧善懲悪でもなく共に方舟に乗って鑑賞している私をうっとりとした世界に導いてくれました。
■吉浦康裕(アニメーション監督)
美しく描き出されたポストアポカリプスな世界を旅するネコチャンたち……をひたすらカメラで追い続ける85分間。ただそれだけなのに、最後の最後まで目が離せない!映画『Flow』は、想像により描き出された世界やキャラクターが確かにそこに存在するという根源的な楽しさに満ちた快作です。
■久野遥子(アニメーション作家/映画監督)
なんて大きい世界なんだろう。猫の目を通せばウサギだって大きいくらいなのに、こんなに巨大で美しい世界が変貌を止めないことが恐ろしい。崩れゆく世界で人間なんかじゃ到底辿り着けないようなところまで連れ去られる。猫はそんなつもりはないよと言うかもしれないけど。
■浅野いにお(漫画家)
息を呑む美麗な水の表現に畏れを抱き、やがて波のように押し寄せてくる感情に圧倒される。言葉がないからこそ伝わるものがあり、私たちはそれを掬い取らなければならない。日常の中で忘れかけていた「生命」を感じる映画です。
■loundraw(イラストレーター/アニメーション監督)
私たちも、予期せぬ冒険の最中にいるのかもしれません。正しい方角もわからず、けれど常にどこかへと向かっている。そうしてやがて、自分が何者かを知っていきます。これは猫の物語ですが、大いなる流れの中にいる人間として、創作者として、この作品がくれた世界を大切にしたいと思います。
■アルトゥル(日本推しラトビア人)
映像の美しさ、動物たちのリアルな動きの再現にはもちろん、主人公の猫や他の動物たちの鳴き声、仕草、表情だけで個性や感情がリアルに伝わってくる、その表現力に驚かされました。恐怖や物欲等を抱えた主人公達が成長する姿を言葉を一切使わず伝えられる、素晴らしい作品です。
■ぬまがさワタリ(いきものクリエイター)
都合のよい擬人化を極限まで廃し、それでいて愛らしくユーモラスに、生命みなぎる動物たちの冒険を活写する。気候危機や絶滅といった恐るべき「現実(リアル)」が迫る今、本作のように現実の動物や自然への想像力を飛躍させる、新時代のファンタジーアニメが必要だ。
■伊藤さとり(映画パーソナリティ/映画評論家)
絵画のようで可愛らしい。アニメなのに本物の動きで、手に取るように感情が分かる摩訶不思議。観たら間違いなくもう一度体験したくなる世界への冒険だった。なんなのだろうこのトキメキは。言うなれば、アニメの枠からはみ出る芸術体験に、ずっと夢中という感覚かもしれない。
■関連記事
【写真】猫と旅する動物たちにも注目『Flow』フォトギャラリー
【写真】アリアナ・グランデ&セレーナ・ゴメスら、豪華に着飾ったセレブが登場<英国アカデミー賞>
米アカデミー賞ノミネート『あめだま』公開決定短編映画単独での劇場公開は東映アニメーション初!
アカデミー賞ノミネート『聖なるイチジクの種』監督、逮捕を恐れながらの撮影裏側を語る
【週末なに見る?】今週公開の最新映画情報